Symphonikerの音楽鑑賞日記

クラシック音楽を趣味とする早大生

【日本フィル】第237回芸劇シリーズ in 東京芸術劇場

Introduction

 今回は、【日本フィル】第237回芸劇シリーズ。実は、私にとって日本フィルとは思い入れのあるエピソードがある。私が上京して初めて聴きに行ったオーケストラが、この日本フィルハーモニー交響楽団であった。指揮者も同じ、ピエタリ・インキネンだった。
 実に約5年ぶりとなる演奏に期待。2017年の時のブルックナー交響曲第5番非常に優しく壮大な音楽が展開されていたことを鮮明に記憶している。そして今回は、ベートーヴェン交響曲第6番へ長調『田園』ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調*1という超名曲2曲である。久しぶりに王道の作品を聴くことになり、とてもワクワクしていた。
 振り返ると、ベートーヴェンの作品を実際に聴いたことはあまり多くなかった。ブルックナーマーラーといった大編成の作品をよく行っていた。大編成だからこそ実際に聴きに行って味わえる壮大さ、迫力さを期待して足を運んでいたと思われる。とはいえ、毎年のように「第九」を聴きに行っているので全く行っていないわけでもない。もっとも、ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調はこれで3回目になる。1回目は、2017年11月16日に行われたウィーン交響楽団来日公演、2回目は2021年10月27日に行われたN響】第1941回 定期公演 Bプログラム in サントリーホール
law-symphoniker.hatenablog.com
 この時のブロムシュテットベートーヴェン交響曲第5番ハ短調は、大変凄まじい演奏であった。しかも、その演奏を鮮明に記憶しているので今回の演奏とどうしても比較してしまいがちである点が否めない。しかし、「インキネンと日本フィルのベートーヴェンを堪能することが第一である。
 一方、ベートーヴェン交響曲第6番へ長調『田園』実際に聴くのは初めてである。どんな田園風景が広がるのか。
 この「田園交響曲(敢えて通称を用いる)は他にもあり、ヴォーン・ウィリアムズ(「交響曲第3番」又は「田園交響曲」)、グラズノフ交響曲第7番)がある。不思議なことに、それぞれの田園交響曲があるのだ。北欧出身のピエタリ・インキネンのベートーヴェン交響曲第6番へ長調『田園』はどのような田園風景を表現するのだろうか。とても楽しみである。
 なお、この二つの作品については前に簡単な解説を記したため、下記より参照されたい。
law-symphoniker.hatenablog.com

本日のプログラム

japanphil.or.jp

ベートーヴェン交響曲第6番へ長調『田園』

第1楽章:Allegro Ma Non Troppo

 冒頭、弦楽器の幻想的な美しさによって幕を開ける。その後流れるような弦楽器が滑らかに奏でられていく。インキネンの田園は朝露が残った輝かしい風景が目に浮かんだ。第1主題は非常に明るく、美しい弦楽器が冴え渡った。その後の第2主題も流れるようで美しく、やや重厚感あふれるチェロとヴィオラの音色が印象的だった。提示部の繰り返しあり
 展開部に入ると、弦楽器や木管楽器の軽快な下降音型が際立つ。作品の表面を撫でるような下降音型と共に、弦楽器の美しい音色が際立った。自然な田園というよりかは、幻想的な田園に近かった。おそらく、インキネンの北欧のイメージを取り込んだものといえよう。
 再現部に入ると、再び軽快な第1主題が戻ってくる。再現部ではff(フォルテッシモ)になっているため、提示部に比べてより一層明るく元気ある演奏が繰り広げた。第2主題も非常に美しく、神秘的な田園もまた美しかった。
 コーダに入ると、重厚感ある弦楽器のハーモニーが第1主題を奏でた。全体的に快速的なテンポによって第1楽章を閉じた

第2楽章:Andante Molto Mosso

 8分の12拍子のアンダンテ。冒頭のアンサンブルが大変素晴らしく、鳥肌がたった第1楽章に引き続き第1主題は神秘的な美しい旋律、ヴァイオリンの美しい音色とともに木管楽器が美しい。随所にヴァイオリンのトリオは鳥の囀りが素晴らしかった。第2主題も原則的で煌びやかなヴァイオリンが大きく主題を奏でていき、ファゴットの重低音とヴィオラとチェロの音色が美しく奏でた。
 展開部に入ると木管楽器が主な主役となる。今回のコンサートは木管楽器も幻想的な音色を響かせていた。透き通るような新鮮な水が、川の水が流れているような風景が目に浮かんだ。とても美しい田園風景である。
 再現部では、引き続き美しい音色が響き渡る。これほど美しい第2楽章を実際に聴くことはそうそうないだろう。インキネンの滑らかなタクトから生み出される音楽は神秘的で美しいものだった
 コーダに入り、いよいよ鳥の鳴き声の再現が始まる。私はその時目を瞑って聴いていた。フルート、オーボエクラリネットが見事なハーモニーであり、自然豊かな鳥の鳴き声を見事に再現していた

第3楽章:Allegro

 金管楽器も加わって華々しくなる。今回の日本フィルの音色はホルンの音色も冴え渡った。雄大で迫力のある音色、そして爆音とまでは言わない自然な音色が田園風景をより一層自然に彩る。神秘的ながらも軽快な音楽が繰り広げられた。そして、トリオ、In tempo d' Allegroは、あまり速くなく、先鋭的な演奏が奏でられていたが、伝統的なスタイルも魅せた繰り返しあり
 そして、短い再現部を経て第4楽章へ。

第4楽章:Allegro

 不穏な雰囲気ながらも幻想的で美しい弦楽器が奏でられていた。迫力ある音色と思いきや、柔らかい音色が押し寄せた。嵐が来たのだ!インキネンの嵐は数々の立木が倒されるような激しいものではなく、雨よりも風が強いような嵐であった。ティンパニの力強いアクセントは、激しい雷を表していた
 そして頂点部のピッコロは少々抑えめ。そして少し落ち着いてくる。
 幻想的に木管楽器とヴァイオリンがハ長調を奏で流。しかし、テンポは多少速めでさっぱりとしておりあっという間に嵐が去ってしまったようだ

第5楽章:Allegretto

 甘美なクラリネットのソロによって、第5楽章を幕を開ける。提示部、その後のホルンの音色も実に雄大で美しかった。第1ヴァイオリン→第2ヴァイオリン→ホルンと第1主題を奏でていくのだが、第1楽章から引き続き、幻想的な弦楽器の音色と自然豊かで雄大なホルンによって奏でられていた。その後の経過句のチェロとヴァイオリンの音色も非常に神秘的で美しかった。
 展開部は、第1主題が断片的に中断される。展開部も一直線のように美しい音楽が奏でられた。金管楽器も鋭い音色を響かせず、他の楽器と調和され一体となって柔らかな音楽が形成されていった
 再現部は、第1主題が変形されて演奏される。第1ヴァイオリン→第2ヴァイオリンと続いていくが、最初の第1ヴァイオリンが幻想的で美しい音色を響かせる。第2ヴァイオリンの後は、ホルンではなく、ヴィオラとチェロが低音で第1主題の変形を奏でる。やはり、その他の楽器の方が大きくヴィオラとチェロの音色はほぼかき消されてしまった。。経過句は提示部と同様に幻想的で美しい音色が続いた。
 長いコーダは、断片的に第5楽章の今までの部分を再現する。壮大に演奏する箇所もあれば、静かに演奏する箇所もある。美音が湧き出るような美しい音色が響き渡った
 最後まで神秘的な音楽が奏でられていた。しかし、指揮棒が降ろされる前に拍手があったことは残念だった。

ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調

第1楽章:Allegro Con Brio

 拍手の後直ちに演奏が開始されたブロムシュテットN響時は音が出るまで間があり、ものすごい緊張感と緊迫感に包まれた。それがなかったのは驚きであった。
 冒頭の運命の動機は、前者の方は滑らかに、後者は切れ味鋭くという新鮮な幕開けとなった。第1主題の弦楽器は第6番と同様に神秘的な音色が奏でられていた。しかし、第5番は第6番と違う雰囲気の作品であるから、神秘的で美しい弦楽器の音色は似合わない。この部分は大きな疑問であった。また、それに伴って強烈な金管楽器も当然ながら今回は登場しない。正直にいうと、全く緊張感・緊迫感のない第1主題であった。第2主題は多少穏やかになるため、神秘的な音色であってもよかもしれない、しかし、打点が弱かった不満はあるも、第2主題の音色は良かった提示部繰り返しあり
 ホルンが雄大に第1主題動機を奏でる展開部に入る。第1主題が主となるが、上記の通り穏やかすぎて頭に入ってこないやはり第1主題には多少の迫力、緊張感がないとダメである
 その後、大迫力の再現部第1主題!と思ったが、なんだあのナヨナヨとした動機は!!あっけなく過ぎ去ってしまった。そこは強烈な金管楽器を叫ぶような演奏を期待していた。その後のオーボエ・ソロはテンポを遅くして美しく歌い上げた。そして、第2主題については記憶にない。私が第1楽章の中で最も好きな箇所であるが、記憶にないということは印象に残らなかったのであろう。緊迫感に包まれるはずの第1楽章がここまでナヨナヨした演奏だとは思いもよらなかった。
 コーダの動機もフワッとした演奏であった。しかし、第1楽章全体を通すと強い推進力で奏でられていた。

第2楽章:Andante Con Moto

 A-B-A'-B-A"-B'-A'"-A""-codaから成る緩徐楽章かつ、変奏曲である。
 緩徐楽章であるため、穏やかで美しい音色の方が良い。それはその通りであって、今回の日本フィルの弦楽器の音色は第1主題が柔らかい音色に加えて厳格な雰囲気が感じられた。第2主題の部分は、柔らかいトランペットの音色が響き渡った。私は3階席で聴いていたが、トランペット真正面の座席に座っていたら違ったのだろう。
 2回目の第2主題は、1回目と同様に柔らかいトランペットの音色が響き渡った。その後の弦楽器が滑らかに奏でる箇所は、滑らかに奏でられており一直線に進んでいった。
 神秘的で幻想的な演奏が繰り広げられていたが、この第2楽章の緩徐楽章は素晴らしかった

第3楽章:Allegro

 スケルツォ部分では、ホルンが自然な音色で雄大に、第1楽章第1主題動機を奏でる。しかし、弦楽器は相変わらず迫力ない音色であってどうも薄い。インキネンの解釈なのか、日本フィルの音なのか変わらないが、ちょっと残念。
 トリオに入るとハ長調に転じ、コントラバス等の低弦楽器が重厚な音色を響かせる。トリオは快速的テンポであって強い推進力があって素晴らしかった。相変わらず柔らかい音色であったが、重厚感あふれる力強いチェロとコントラバスの音色は迫力があった。
 再現部を終えて第4楽章に向けて静寂に包まれる。そして、第4楽章へ。

第4楽章:Allegro

 「ドー・ミー・ソー」と一気に太陽の光が差し込むような明るさだった。その後、日本フィルが燃え盛る。テンポは多少速めであって強い推進力によって奏でられていく。その後のホルンの勇壮に奏でる箇所は、これは期待通りの音色であって雄大な音色が響き渡った。トランペットも伸びやかな音色で3階席でも響き渡った。第2主題も快速的テンポで進められており、シャープな音色も相まって若々しい弦楽器が冴え渡った。提示部繰り返しあり
 第2主題がメインとなる展開部へ。全ての楽器が柔らかい音色を響かせており、張り詰めた強烈な金管楽器もなく芸劇を柔らかく包み込んだ
 再現部に入ると、「ドー・ミー・ソー」と再び堂々たる幕開けである。その後のホルンの雄大に奏でるはずの箇所は、提示部と同様。再現部に入ると怒号の数が増えてくる。
 コーダに入れば、ピッコロも加わって華やかさを増していく。そして、徐々に熱気を帯びていきテンポも快速的となった。かなりの熱気であり、3階席であってもその迫力さは十分に伝わってきたフルトヴェングラーティーレマンほどではないが、それに相応するような白熱さであった。

総括

 約5年ぶりとなったインキネンと日本フィルのコンサートであった。インキネンのベートーヴェンはやはり神秘的で穏やかなものとなった。
 まずは交響曲第6番からいこう。自然豊かな田園風景を描く作品であり、インキネンの音楽と合致すると予想しており、美しく穏やかな音楽が展開されていた。また、フィンランド出身ということもあってか、神秘的な側面も感じ取ることができシベリウスのような雰囲気も垣間見えた。
 一方交響曲第5番は第4楽章だけ素晴らしかった。「終わりよければすべてよし」という言葉があるが今回はその言葉で済まされるようなものではない。やはり、緊迫感のある第1楽章はとても重要である。上にも述べたが、この穏やかな第6番と第5番では曲の雰囲気が全く異なるのである。それにも関わらず、第6番と同じような演奏で第5番を演奏されると緊迫感が欠けてしまい、ものすごい消化不良を起こした。これだったら、どちらかに第7番を持ってきた方が良かったのではないかな…?
 しかし、第4楽章は熱気のこもった素晴らしい演奏であったから良かったとしよう。
 そして、今回は、私一人ではなく、同じ早大の友人と一緒に行った。初めての本格的なコンサートであったが、非常に喜んでくれていたのでホッとした。次は9月25日の私の誕生日に付き合ってくれるようで(笑)
 その時は、迫力ある演奏が繰り広げられることを望む。

前回のプログラム

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*1:この作品に「運命」という題名が付けられることが多いが、通称であってベートーヴェン自身による正式な命名ではない。その理由で、本稿では「運命」という題名を付さないで記す。