鵺翠の音楽の世界と読書の記録

クラシック音楽を趣味とする早大OB

ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調を聴く(その3)

ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調

クルト・マズアロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

評価:7 演奏時間:約35分

第1楽章:Allegro Con Brio

 迫力ある出だしであるが、溜めずにどんどん突き進む。第2主題も大きな変化もなく、自然の流れで滑らかに奏でられている。自然な音楽ながらも丁寧で繊細な音楽作りが伺える。提示部繰り返しあり
 展開部。一音一音丁寧な弦楽器の音色と木管楽器が見事に調和されている。尤も、迫力あるところは重厚でパワフルな音圧を感じられる。再現部前の弦楽器と木管楽器の追いかけはレガートを用いており引き摺った印象があるが、これも私にとって新たな解釈であり、素晴らしいと思った。
 再現部。大迫力な第1主題であるが、あっという間に過ぎ去った。あえてテンポを遅くすることなく一気に駆け抜ける再現部第1主題も悪くはない。オーボエ・ソロはじっくりと哀愁漂う音色を響かせた。そして、陰鬱な提示部と異なり、一気に光が差し込むような明るい第2主題は何か希望をもたらすようである。再現部第2主題に入った時、何かとてつもない感動を憶えた
 コーダも快速的テンポで一気に終わる。

第2楽章:Andante Con Moto

 A-B-A'-B-A"-B'-A'"-A""-codaから成る緩徐楽章かつ、変奏曲である。
 特筆する必要もない美しい弦楽器と木管楽器の音色が響き渡る。緊迫した第1楽章の緊張をほぐすような第2楽章である。第2主題の部分は、トランペットの伸びやかな音色が非常に素晴らしい。ついうっとりしてしまうようだ。その後の流れるような弦楽器の箇所も、非常に流れるようで美しい。
 2回目の第2主題は、1回目と同様に伸びやかなトランペットの音色が非常に素晴らしい。そして、弦楽器が32分音符になっている影響で快速的で勇ましい印象を受けた。その後の弦楽器が滑らかに奏でる箇所は、快速的テンポで一直線に流れるように駆け抜ける。結構な速さであった
 緊張した第1楽章からの呪縛を解くような流れるような美しい第2楽章であるが、時には快速的テンポで演奏される第2楽章は聴いていて斬新であった。

第3楽章:Allegro

 自然で雄大なホルンの音色の後に、弦楽器が力強く第1楽章第1主題動機を奏でる。非常に活発的なスケルツォである。
 トリオに入るとハ長調に転じ、コントラバス等の低弦楽器が重厚な音色を響かせるが、一音一音丁寧に演奏されている。非常に丁寧なスケルツォ

第4楽章:Allegro

 「ドー・ミー・ソー」と壮大に力強く第1主題を奏でるロンドン・フィルの壮大であり、かつ自然な音色はよりドイツを感じさせる。その後のホルンの勇壮に奏でる箇所は、あまり誇張せず、自然なホルンの音色が勇壮に奏でられている。提示部繰り返あり
 第2主題がメインとなる展開部へ。自然体を貫いた音楽は非常に心地よく、大迫力の第4楽章であっても物足りないということにはならない。要するに、耳が痛くならない金管楽器の音である。
 再現部に入ると、「ドー・ミー・ソー」と再び堂々たる幕開けであるが、提示部と同様に自然な音色である
 コーダに入れば、少し熱を帯びたような印象があるが、決して自然体が崩れたわけではない。活気あふれる高らかなヴァイオリン、重厚感あふれる弦楽器の音色が美しく印象的だ。そして、最後のフィナーレでは非常に上品で迫力ある音色で締めくくる。

 最後まで自然で弛緩のないテンポに奏でられるベートーヴェン交響曲第5番ハ短調を聴くことに幸福を感じる。

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