Symphonikerの音楽鑑賞日記

クラシック音楽を趣味とする早大生

【日本フィル】第237回芸劇シリーズ in 東京芸術劇場

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はじめに

 今回は、【日本フィル】第237回芸劇シリーズ。実は、私にとって日本フィルとは思い入れのあるエピソードがある。私が上京して初めて聴きに行ったオーケストラが、この日本フィルハーモニー交響楽団であった。指揮者も同じ、ピエタリ・インキネンだった。
 実に約5年ぶりとなる演奏に期待。2017年の時のブルックナー交響曲第5番非常に優しく壮大な音楽が展開されていたことを鮮明に記憶している。そして今回は、ベートーヴェン交響曲第6番へ長調『田園』ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調*1という超名曲2曲である。久しぶりに王道の作品を聴くことになり、とてもワクワクしていた。
 振り返ると、ベートーヴェンの作品を実際に聴いたことはあまり多くなかった。ブルックナーマーラーといった大編成の作品をよく行っていた。大編成だからこそ実際に聴きに行って味わえる壮大さ、迫力さを期待して足を運んでいたと思われる。とはいえ、毎年のように「第九」を聴きに行っているので全く行っていないわけでもない。もっとも、ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調はこれで3回目になる。1回目は、2017年11月16日に行われたウィーン交響楽団来日公演、2回目は2021年10月27日に行われたN響】第1941回 定期公演 Bプログラム in サントリーホール
law-symphoniker.hatenablog.com
 この時のブロムシュテットベートーヴェン交響曲第5番ハ短調は、大変凄まじい演奏であった。しかも、その演奏を鮮明に記憶しているので今回の演奏とどうしても比較してしまいがちである点が否めない。しかし、「インキネンと日本フィルのベートーヴェンを堪能することが第一である。
 一方、ベートーヴェン交響曲第6番へ長調『田園』実際に聴くのは初めてである。どんな田園風景が広がるのか。
 この「田園交響曲(敢えて通称を用いる)は他にもあり、ヴォーン・ウィリアムズ(「交響曲第3番」又は「田園交響曲」)、グラズノフ交響曲第7番)がある。不思議なことに、それぞれの田園交響曲があるのだ。北欧出身のピエタリ・インキネンのベートーヴェン交響曲第6番へ長調『田園』はどのような田園風景を表現するのだろうか。とても楽しみである。
 なお、この二つの作品については前に簡単な解説を記したため、下記より参照されたい。
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本日のプログラム

japanphil.or.jp

ベートーヴェン交響曲第6番へ長調『田園』

第1楽章:Allegro Ma Non Troppo

 冒頭、弦楽器の幻想的な美しさによって幕を開ける。その後流れるような弦楽器が滑らかに奏でられていく。インキネンの田園は朝露が残った輝かしい風景が目に浮かんだ。第1主題は非常に明るく、美しい弦楽器が冴え渡った。その後の第2主題も流れるようで美しく、やや重厚感あふれるチェロとヴィオラの音色が印象的だった。提示部の繰り返しあり
 展開部に入ると、弦楽器や木管楽器の軽快な下降音型が際立つ。作品の表面を撫でるような下降音型と共に、弦楽器の美しい音色が際立った。自然な田園というよりかは、幻想的な田園に近かった。おそらく、インキネンの北欧のイメージを取り込んだものといえよう。
 再現部に入ると、再び軽快な第1主題が戻ってくる。再現部ではff(フォルテッシモ)になっているため、提示部に比べてより一層明るく元気ある演奏が繰り広げた。第2主題も非常に美しく、神秘的な田園もまた美しかった。
 コーダに入ると、重厚感ある弦楽器のハーモニーが第1主題を奏でた。全体的に快速的なテンポによって第1楽章を閉じた

第2楽章:Andante Molto Mosso

 8分の12拍子のアンダンテ。冒頭のアンサンブルが大変素晴らしく、鳥肌がたった第1楽章に引き続き第1主題は神秘的な美しい旋律、ヴァイオリンの美しい音色とともに木管楽器が美しい。随所にヴァイオリンのトリオは鳥の囀りが素晴らしかった。第2主題も原則的で煌びやかなヴァイオリンが大きく主題を奏でていき、ファゴットの重低音とヴィオラとチェロの音色が美しく奏でた。
 展開部に入ると木管楽器が主な主役となる。今回のコンサートは木管楽器も幻想的な音色を響かせていた。透き通るような新鮮な水が、川の水が流れているような風景が目に浮かんだ。とても美しい田園風景である。
 再現部では、引き続き美しい音色が響き渡る。これほど美しい第2楽章を実際に聴くことはそうそうないだろう。インキネンの滑らかなタクトから生み出される音楽は神秘的で美しいものだった
 コーダに入り、いよいよ鳥の鳴き声の再現が始まる。私はその時目を瞑って聴いていた。フルート、オーボエクラリネットが見事なハーモニーであり、自然豊かな鳥の鳴き声を見事に再現していた

第3楽章:Allegro

 金管楽器も加わって華々しくなる。今回の日本フィルの音色はホルンの音色も冴え渡った。雄大で迫力のある音色、そして爆音とまでは言わない自然な音色が田園風景をより一層自然に彩る。神秘的ながらも軽快な音楽が繰り広げられた。そして、トリオ、In tempo d' Allegroは、あまり速くなく、先鋭的な演奏が奏でられていたが、伝統的なスタイルも魅せた繰り返しあり
 そして、短い再現部を経て第4楽章へ。

第4楽章:Allegro

 不穏な雰囲気ながらも幻想的で美しい弦楽器が奏でられていた。迫力ある音色と思いきや、柔らかい音色が押し寄せた。嵐が来たのだ!インキネンの嵐は数々の立木が倒されるような激しいものではなく、雨よりも風が強いような嵐であった。ティンパニの力強いアクセントは、激しい雷を表していた
 そして頂点部のピッコロは少々抑えめ。そして少し落ち着いてくる。
 幻想的に木管楽器とヴァイオリンがハ長調を奏で流。しかし、テンポは多少速めでさっぱりとしておりあっという間に嵐が去ってしまったようだ

第5楽章:Allegretto

 甘美なクラリネットのソロによって、第5楽章を幕を開ける。提示部、その後のホルンの音色も実に雄大で美しかった。第1ヴァイオリン→第2ヴァイオリン→ホルンと第1主題を奏でていくのだが、第1楽章から引き続き、幻想的な弦楽器の音色と自然豊かで雄大なホルンによって奏でられていた。その後の経過句のチェロとヴァイオリンの音色も非常に神秘的で美しかった。
 展開部は、第1主題が断片的に中断される。展開部も一直線のように美しい音楽が奏でられた。金管楽器も鋭い音色を響かせず、他の楽器と調和され一体となって柔らかな音楽が形成されていった
 再現部は、第1主題が変形されて演奏される。第1ヴァイオリン→第2ヴァイオリンと続いていくが、最初の第1ヴァイオリンが幻想的で美しい音色を響かせる。第2ヴァイオリンの後は、ホルンではなく、ヴィオラとチェロが低音で第1主題の変形を奏でる。やはり、その他の楽器の方が大きくヴィオラとチェロの音色はほぼかき消されてしまった。。経過句は提示部と同様に幻想的で美しい音色が続いた。
 長いコーダは、断片的に第5楽章の今までの部分を再現する。壮大に演奏する箇所もあれば、静かに演奏する箇所もある。美音が湧き出るような美しい音色が響き渡った
 最後まで神秘的な音楽が奏でられていた。しかし、指揮棒が降ろされる前に拍手があったことは残念だった。

ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調

第1楽章:Allegro Con Brio

 拍手の後直ちに演奏が開始されたブロムシュテットN響時は音が出るまで間があり、ものすごい緊張感と緊迫感に包まれた。それがなかったのは驚きであった。
 冒頭の運命の動機は、前者の方は滑らかに、後者は切れ味鋭くという新鮮な幕開けとなった。第1主題の弦楽器は第6番と同様に神秘的な音色が奏でられていた。しかし、第5番は第6番と違う雰囲気の作品であるから、神秘的で美しい弦楽器の音色は似合わない。この部分は大きな疑問であった。また、それに伴って強烈な金管楽器も当然ながら今回は登場しない。正直にいうと、全く緊張感・緊迫感のない第1主題であった。第2主題は多少穏やかになるため、神秘的な音色であってもよかもしれない、しかし、打点が弱かった不満はあるも、第2主題の音色は良かった提示部繰り返しあり
 ホルンが雄大に第1主題動機を奏でる展開部に入る。第1主題が主となるが、上記の通り穏やかすぎて頭に入ってこないやはり第1主題には多少の迫力、緊張感がないとダメである
 その後、大迫力の再現部第1主題!と思ったが、なんだあのナヨナヨとした動機は!!あっけなく過ぎ去ってしまった。そこは強烈な金管楽器を叫ぶような演奏を期待していた。その後のオーボエ・ソロはテンポを遅くして美しく歌い上げた。そして、第2主題については記憶にない。私が第1楽章の中で最も好きな箇所であるが、記憶にないということは印象に残らなかったのであろう。緊迫感に包まれるはずの第1楽章がここまでナヨナヨした演奏だとは思いもよらなかった。
 コーダの動機もフワッとした演奏であった。しかし、第1楽章全体を通すと強い推進力で奏でられていた。

第2楽章:Andante Con Moto

 A-B-A'-B-A"-B'-A'"-A""-codaから成る緩徐楽章かつ、変奏曲である。
 緩徐楽章であるため、穏やかで美しい音色の方が良い。それはその通りであって、今回の日本フィルの弦楽器の音色は第1主題が柔らかい音色に加えて厳格な雰囲気が感じられた。第2主題の部分は、柔らかいトランペットの音色が響き渡った。私は3階席で聴いていたが、トランペット真正面の座席に座っていたら違ったのだろう。
 2回目の第2主題は、1回目と同様に柔らかいトランペットの音色が響き渡った。その後の弦楽器が滑らかに奏でる箇所は、滑らかに奏でられており一直線に進んでいった。
 神秘的で幻想的な演奏が繰り広げられていたが、この第2楽章の緩徐楽章は素晴らしかった

第3楽章:Allegro

 スケルツォ部分では、ホルンが自然な音色で雄大に、第1楽章第1主題動機を奏でる。しかし、弦楽器は相変わらず迫力ない音色であってどうも薄い。インキネンの解釈なのか、日本フィルの音なのか変わらないが、ちょっと残念。
 トリオに入るとハ長調に転じ、コントラバス等の低弦楽器が重厚な音色を響かせる。トリオは快速的テンポであって強い推進力があって素晴らしかった。相変わらず柔らかい音色であったが、重厚感あふれる力強いチェロとコントラバスの音色は迫力があった。
 再現部を終えて第4楽章に向けて静寂に包まれる。そして、第4楽章へ。

第4楽章:Allegro

 「ドー・ミー・ソー」と一気に太陽の光が差し込むような明るさだった。その後、日本フィルが燃え盛る。テンポは多少速めであって強い推進力によって奏でられていく。その後のホルンの勇壮に奏でる箇所は、これは期待通りの音色であって雄大な音色が響き渡った。トランペットも伸びやかな音色で3階席でも響き渡った。第2主題も快速的テンポで進められており、シャープな音色も相まって若々しい弦楽器が冴え渡った。提示部繰り返しあり
 第2主題がメインとなる展開部へ。全ての楽器が柔らかい音色を響かせており、張り詰めた強烈な金管楽器もなく芸劇を柔らかく包み込んだ
 再現部に入ると、「ドー・ミー・ソー」と再び堂々たる幕開けである。その後のホルンの雄大に奏でるはずの箇所は、提示部と同様。再現部に入ると怒号の数が増えてくる。
 コーダに入れば、ピッコロも加わって華やかさを増していく。そして、徐々に熱気を帯びていきテンポも快速的となった。かなりの熱気であり、3階席であってもその迫力さは十分に伝わってきたフルトヴェングラーティーレマンほどではないが、それに相応するような白熱さであった。

総括

 約5年ぶりとなったインキネンと日本フィルのコンサートであった。インキネンのベートーヴェンはやはり神秘的で穏やかなものとなった。
 まずは交響曲第6番からいこう。自然豊かな田園風景を描く作品であり、インキネンの音楽と合致すると予想しており、美しく穏やかな音楽が展開されていた。また、フィンランド出身ということもあってか、神秘的な側面も感じ取ることができシベリウスのような雰囲気も垣間見えた。
 一方交響曲第5番は第4楽章だけ素晴らしかった。「終わりよければすべてよし」という言葉があるが今回はその言葉で済まされるようなものではない。やはり、緊迫感のある第1楽章はとても重要である。上にも述べたが、この穏やかな第6番と第5番では曲の雰囲気が全く異なるのである。それにも関わらず、第6番と同じような演奏で第5番を演奏されると緊迫感が欠けてしまい、ものすごい消化不良を起こした。これだったら、どちらかに第7番を持ってきた方が良かったのではないかな…?
 しかし、第4楽章は熱気のこもった素晴らしい演奏であったから良かったとしよう。
 そして、今回は、私一人ではなく、同じ早大の友人と一緒に行った。初めての本格的なコンサートであったが、非常に喜んでくれていたのでホッとした。次は9月25日の私の誕生日に付き合ってくれるようで(笑)
 その時は、迫力ある演奏が繰り広げられることを望む。

前回のプログラム

law-symphoniker.hatenablog.com

*1:この作品に「運命」という題名が付けられることが多いが、通称であってベートーヴェン自身による正式な命名ではない。その理由で、本稿では「運命」という題名を付さないで記す。

ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調を聴く(その2)

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はじめに

 今回は、ヘルマン・シェルヘン指揮、ルガノ放送交響楽団(現在スイス・イタリアーナ管弦楽団の演奏を取り上げよう。 
 このヘルマン・シェルヘンは、極めて個性的な指揮をする指揮者である。個性的指揮者といえば、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーオットー・クレンペラーゲンナジー・ロジェストヴェンスキーが挙げられようか。日本人指揮者で言えば、山田一雄先生は外せないだろう。
 近年、このような個性的指揮者が乏しくなってきた。ベートーヴェンのような超王道な交響曲であっても、個性的指揮者が演奏することによって新たな発見、解釈があるのもまた醍醐味の一つである。
 特に、このベートーヴェン交響曲第5番は第1楽章冒頭の「ダダダダーン」が指揮者によって全く異なることがあるため、開始早々から解釈の異動が窺えるのである。
 また、このベートーヴェン交響曲第5番を取り上げた理由として、2022年4月17日に行われる【日本フィル】第237回芸劇シリーズの予習である。
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 ピエタリ・インキネンが個性的指揮者ではないことは知っており、独特な演奏が展開されることは期待していない。むしろ、自然豊かな演奏が展開されると予想している
 本稿は、2022年4月17日以前に投稿するため、上記日本フィルの演奏については別途の記事を参照されたい。
 なお、本作品の非詳細な解説は以下の記事を参照されたい。
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ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調

ヘルマン・シェルヘン:ルガノ放送交響楽団

評価:6 演奏時間:約34分
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第1楽章:Allegro Con Brio

 堂々たる出だし。しかし、冒頭部からしばらくして第1主題が奏でられるフルトヴェングラー、いやそれ以上の溜めがあるかもしれない。オケはベルリン・フィル等に比べて劣るが張り詰めた弦楽器が鳴り響く。第2主題に至ってはやや落ち着いて安らかな演奏が展開される。ピッチは多少高めであるが1965年付近の演奏であるため、録音技術は目を瞑るべき。提示部繰り返しあり
 ホルンが雄大に第1主題動機を奏でる展開部に入る。弦楽器の音色がかなり張りのある音色が繰り広げられる。微妙にヘルシェンの鬼演が垣間見える。フルトヴェングラーとは違った気迫がひしひしと近づいている。
 タメの入った迫力ある第1主題動機が奏でられるオーボエ・ソロは流れるようにサッパリと過ぎ去っていく。そして、第2主題は明るい木管楽器と爽やかな弦楽器が奏でられ、標準的なテンポながらも力強いリズムを刻む。たまに、シェルヘンの唸り声が聴こえる。張り詰めた弦楽器が当時の演奏を物語る。
 コーダも力強い演奏のまま集結する。

第2楽章:Andante Con Moto

 A-B-A'-B-A"-B'-A'"-A""-codaから成る緩徐楽章かつ、変奏曲である。
 第1楽章に比べて落ち着いた印象であるが、弦楽器の音色がやや微妙。オケのレベルが表れるのは仕方のないこと。第2主題の部分は、相当の迫力であり、行進曲のような力強い足取りである。トランペットの音色がよく響いている。その後の流れるような弦楽器の箇所も、やや微妙な印象を受ける。テンポは至って標準的。
 2回目の第2主題は、シェルヘンが吠えまくっている。そして、弦楽器が32部音符でより細かく演奏されることが要因かわからないが、1回目の第2主題よりテンポが快速的である。その後の弦楽器が滑らかに奏でる箇所は、なんと一つのクレッシェンドになっており、だんだんと大きくなっている。これはなかなか面白い解釈である。もっとも、低弦楽器の音色はあまり変わらず、刻んでいく木管楽器等が徐々に大きくなっていく辺りがやや謎。良い意味で言えば、個性的というべきか。
 緩徐楽章と位置付けられる第2楽章であるが、シェルヘンがかなり叫んでいる。何故か、珍しいものだ。躍動感の大きい第2楽章であった。

第3楽章:Allegro

 スケルツォ部分では、ホルンが力強く、第1楽章第1主題動機を奏でる。ホルンの音色は雄大な音色を響かせる。しかし、弦楽器はスタッカートではなく、レガートっぽく途切れずに演奏されている。個人的に切れ味のある第1楽章第1主題動機が好きであるため、このように続けて演奏されてしまうとどうもだらけてしまう印象である。ちょっと残念。
 トリオに入るとハ長調に転じ、コントラバス等の低弦楽器が重厚な音色を響かせる。このハ長調は、第4楽章の明るさを予兆させる。随所アンサンブルが乱れている箇所がある。
 再現部を終えて第4楽章に向けて静寂に包まれる。そして、シェルヘンの大きな怒号と合わせて第4楽章へ。

第4楽章:Allegro

 「ドー・ミー・ソー」とトランペットが張りのある音色を力強く第1主題を奏でる。テンポはあまり速くなく、力強さが伝わる。その後のホルンの勇壮に奏でる箇所は、なんとホルンの音色はあまり聴こえず、寧ろ木管楽器(特にオーボエ)がはっきりと聴こえてくる。ホルンはどこへ行った?第2主題はしっかりとしたテンポで進められていく。提示部繰り返しなし
 第2主題がメインとなる展開部へ。ちょっとよろよろしているが、緊迫感は十分に伝わり、随所にシェルヘンの怒号が飛びかう。そして、静寂な第3楽章の再現。
 再現部に入ると、「ドー・ミー・ソー」と再び堂々たる幕開けである。その後のホルンの雄大に奏でるはずの箇所は、提示部と同様に木管楽器が主となって奏でられている。再現部に入ると怒号の数が増えてくる。
 コーダに入れば、ピッコロも加わるも途中で裏返ったりしている。その後低弦楽器が唸り、高音楽器が高らかに鳴り響く。
 シェルヘンの叫び声も相まって加速していき、最後は堂々と締めくくる。

 ハッキリ言って、世界の主要なオーケストラに比べて演奏技術ははるかに劣っている。従って、上手な演奏を期待してはいけない。しかし、このシェルヘンの極めて独特な解釈とルガノ放送交響楽団の演奏によって生み出される音楽は極めて独特なものであり、緊迫感が生じる
 このような個性的な演奏を聴くのもたまには悪くはない。

ベートーヴェン:交響曲第6番へ長調『田園』を聴く(その1)

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はじめに

 今回取り上げるのは、ベートーヴェン交響曲第6番へ長調『田園』ベートーヴェンの中でも代表的な作品の一つでもある。
 この曲を取り上げた理由として、2022年4月17日の日本フィルの定期演奏会でこの作品を取り上げることにある。いつも「予習」として、どんなに知っているよく、何回聴いたかわからない程聴いた曲でも予め聴いてからコンサートに行くことにしている。自分が聴いた演奏と、実際の演奏でどのような差異があるのか、これが楽しみであるし、「指揮者の数だけ音楽がある」という私自身の信念に基づくものでもある。
 さて、このベートーヴェン交響曲第6番へ長調『田園』であるが、ベートーヴェンの9つある交響曲の中でもやや特徴的な構成になっている。それは、第3楽章〜第5楽章までアタッカ(休みなし)で続けて演奏されることである。一つ前の作品、交響曲第5番でも第3楽章〜第4楽章は続けて演奏されるが、3つの楽章を続けて演奏する作品はベートーヴェンの中ではこの第6番しかない。
 そして下記にもある通り、各楽章に副題が付されている。

  • 第1楽章:「田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め」
  • 第2楽章:「小川のほとりの情景」
  • 第3楽章:「田舎の人々の楽しい集い」
  • 第4楽章:「雷雨、嵐」
  • 第4楽章:「牧歌 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち」

 この交響曲第6番が優れている点は、この副題と曲の内容が見事に合致していることだ。
 確かに第1楽章の弾むようで楽しげな音楽は、「田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め」といえよう。指揮者によって速いテンポで演奏されることもあれば、遅いテンポで演奏されることもある。テンポによって「愉快の感情」いかなる内容かは指揮者の解釈次第となろう。これも聴きどころの一つだ。なお、冒頭のフェルマータの部分は、気分の良いとこ(田園)にパッと出てきたので、そこに立ち止まって辺りを眺めるという解釈もある*1
 何より、第2楽章のandanteが美しい内容であることも外せない。流れるように美しい弦楽器はまさに「小川のほとりの情景」であり、小川の清らかなせせらぎが目に浮かぶ。最後の木管楽器鳥の鳴き声を再現している点も素晴らしい。

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フルート:ナイチンゲールオーボエ:ウズラ。クラリネットカッコウ

 そして、第3楽章の楽しげな「田舎の人々の楽しい集い」、第4楽章の激しい「雷雨、嵐」、第5楽章の「牧歌 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち」へと続いていく。
 途中の第4楽章〜第5楽章に入る間が、雨や風が落ち着き、嵐が鎮まり、そして徐々に空が明るなり、雲の間から日光が差し込み、あたりの草花に雫が残ったまま輝かしい田園風景が登場するような描写が実に素晴らしいといつも思う。ここもテンポによって、嵐が去る速度、嵐がさった後の感謝の気持ちがいかなるものかも解釈のポイントとなろう。この点についても、朝比奈先生は絶賛していた*2

ベートーヴェン交響曲第6番へ長調『田園』

ハンス=シュミット・イッセルシュテットウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

評価:8 演奏時間:約42分
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第1楽章:Allegro Ma Non Troppo

 この記事に限ったことではないが、一番最初に取り上げる演奏はいつも悩む。さて、軽やかに弦楽器が冒頭の第1主題を奏でる。その後、ウィーン・フィルの甘美な音色とともに自然なクレッシェンドによって幕を開ける。第1主題は非常に明るく、軽快に進んでいく。その後の第2主題も流れるようで美しく、奏でられている。まるで、第2楽章の小川の流れを予兆させるかのようだ。提示部の繰り返しはなし
 展開部に入ると、弦楽器や木管楽器の軽快な下降音型が際立つが、自然なクレッシェンドが非常に心地良い。田園の穏やかな風景と爽やかな風が感じられよう。
 再現部に入ると、再び軽快な第1主題が戻ってくる。一見同じ演奏に聴こえるが、提示部第1主題ではf(フォルテ)であるのに対して、再現部ではff(フォルテッシモ)になっている。第2主題も非常に美しく、輝かしい。
 コーダに入ると変ロ長調に転調するがすぐにへ長調に戻る。第1主題の軽快さに加え壮大さが加わる。華々しく美しいコーダによって第1主題を締めくくる。

第2楽章:Andante Molto Mosso

 8分の12拍子のアンダンテ。しかし、イッセルシュテットはまるでワルツのようなテンポで刻んでいく第1主題の美しい旋律、そして円やかなクラリネットの音色が素晴らしい。随所にヴァイオリンのトリオは鳥の鳴き声を表現する。第2主題も非常美しく、ヴァイオリンが大きく主題を奏でていく。さらに、ファゴットの重低音とヴィオラとチェロの音色が重厚さを加えていく
 展開部に入ると木管楽器が主な主役となり、自然豊かな風景に明るさを加えていく。フルートの音色が非常に透き通っていて、辺り一面に豊かな田園風景が浮かんでいく。クレッシェンドとヴィオラとチェロの壮大さは自然の壮大を十分に表現しているといえよう。
 再現部では、チェロやヴィオラの重低音に加えて、美しい第1主題がヴァイオリンと木管楽器によって彩られるベートーヴェンはどのような田園風景を見たのだろうか。さぞ美しいに違いない。そして、このイッセルシュテットのワルツのような優雅なテンポがより一層「小川のほとりの情景」を引き立てる。
 コーダに入り、いよいよ鳥の鳴き声の再現が始まる。ウィーン・フィルのフルート、オーボエクラリネットは軽やかな音色で見事に鳥の鳴き声を再現している。やがて、穏やかに第2楽章を閉じる。

第3楽章:Allegro

 標準的なテンポで優雅にヴァイオリンと木管楽器が奏でられている。途中の木管楽器も軽快な音色を奏で、ホルンの主題も非常に雄大に奏でられている。そして、トリオ、In tempo d' Allegroは、あまり速くなく、どっしりとしたテンポで弦楽器が勇壮に奏でられている繰り返しあり
 そして、短い再現部を経て第4楽章へ。

第4楽章:Allegro

 若干慎重なテンポで静かにスタッカートを刻んでいく。そして爆発したかのような金管楽器いよいよ嵐が来たのだ!イッセルシュテットの嵐は「自然」を全面的に要求しているのか、そこまで激しい嵐ではない。しかし、第1楽章〜第3楽章の軽快な音楽から一転して緊張感があるのは、やはり恐ろしい嵐なのだろう
 この重々しいテンポがより一層の嵐の不穏さを強調する。頂点部のピッコロは少々抑えめ。そして少し落ち着いてくる。
 木管楽器とヴァイオリンがハ長調を奏で、嵐がさり空がだんだん明るくなる。テンポもゆったりとしており、本当に嵐が去りゆくようだ。

第5楽章:Allegretto

 クラリネットのソロによって、第5楽章を幕を開ける。提示部、その後のホルンの音色も実に雄大で美しい。第1ヴァイオリン→第2ヴァイオリン→ホルンと第1主題を奏でていくのだが、ホルンの音色が自然な音色ながらも雄大で非常に美しい。その後の経過句のチェロとヴァイオリンの音色も非常に美しい。第2主題のハ長調のクレッシェンドも自然な強弱である。
 展開部は、第1主題が断片的に中断される。その後の木管楽器とヴァイオリンのクレッシェンドが非常に美しく、スケールの大きい音楽を奏でる。ハ長調に転調する場面のトランペットの音色が非常に穏やかである。
 再現部は、第1主題が変形されて演奏される。第1ヴァイオリン→第2ヴァイオリンと続いていくが、最初の第1ヴァイオリンが繊細で美しい音色を響かせる。第2ヴァイオリンの後は、ホルンではなく、ヴィオラとチェロが低音で第1主題の変形を奏でる。しかし、その他の楽器の方が音量が大きくちょっと聴こえにくい。経過句は提示部と同様に美しい音色を響かせている。
 長いコーダは、断片的に第5楽章の今までの部分を再現する。壮大に演奏する箇所もあれば、静かに演奏する箇所もある。イッセルシュテットはその強弱を自然に操る。無駄を取り除いた自然体を貫く演奏は非常に美しく、輝かしい田園風景をお届けする。
 最後は意外とハッキリとした終わり方。

*1:東条碩夫『朝比奈隆 ベートーヴェン交響曲を語る』144頁〔朝比奈隆〕(中央公論新社、2020年)

*2:前掲・東条碩夫・166頁

【東京シティ・フィル】第350回定期演奏会 in 東京オペラシティコンサートホール

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はじめに

 今回は、【東京シティ・フィル】第350回定期演奏会。プログラムは、マーラー交響曲第9番ニ長調という大曲。
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 この記事にも概説したが、マーラーの10曲ある交響曲の中で最高傑作であると評価されるのがこの交響曲第9番と言われている。
 特に第1楽章のマーラーの死に対する恐怖が忠実に再現されている点であろう。いつ聴いても悶絶する。実際、交響曲第1番「巨人」と交響曲第9番を比較すると、その雰囲気は正反対。同じマーラーの作品とは言い難い面も有する。
 私がこの、マーラー交響曲第9番で注目する点は以下の点である。

  • 第1楽章:提示部(第1主題)、展開部
  • 第2楽章:B
  • 第3楽章:中間部
  • 第4楽章:後半部クライマックス、アダージェット

 そして、指揮者は知能派で知られる高関健先生。スコアを徹底的に精緻に分析する高関先生の音楽は一体どのように聴こえるのだろうか?難しいマーラー交響曲第9番をいかに解析をするのか、それが楽しみである。
 オーケストラも東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団と初めて聴きに行くオーケストラである。

本日のプログラム

マーラー交響曲第9番ニ長調

第1楽章:Andante Comodo

 不穏な出だし。しかし、この時わたしは多少首を傾げた。「こんなものか…?都響だったらもっと良いかもしれない…」と思っていた。もっとも、マーラー交響曲第9番は2018年9月25日(私の二十歳の誕生日)にラトル@ロンドン響で聴いており、記念日的なこともあってよく覚えている。どうしても比較してしまう。しかし、私の不安はその後一気に打ち消されることになる。第1主題は不穏な雰囲気ではなく、弦楽器の美しい音色が響き渡り大変に安らかな音楽が響き渡った。高関先生の指揮は非常に分かりやすく、ドイツ的にタイムラグのある指揮振りであったが、内容は極めて緻密だ。そして、第2主題は大音量であり、迫力ある金管楽器と重厚感ある低音が鳴り響いた。しかし、バーンスタインテンシュテットのような迫力さではなく、自然体意識しているように聴こえた。
 そして長く、激動の展開部に入る。ヨハン・シュトラウス2世のワルツ「人生を楽しめ(Freuet Euch des Lebens)」の引用箇所は非常に安らかに弦楽器が奏でられており、高関先生の指揮も非常に柔らかかった。ホルンも牧歌的であったが一部ちょっとしたミスがあった。ティンパニが響き始めると、1回目の激しい場面となる。ホルンも相当な音量が響きており、何よりもティンパニが強烈に打ち付けていた。1度目の激しい場面は短く、すぐにまた静かになる。そして、再び第2主題が登場するが、不穏な雰囲気よりも美しさが勝っておりすぐに安らかな雰囲気に変わった。2回目の激しい場面に至るまでの静かな場面は、高関先生の繊細な音楽作りが目立った。2回目の展開部の頂点部は、全ての楽器が最大限の音量を出し、シンバルも強烈な打点!まさに「圧倒される音楽」を作り上げた。何よりも強烈なティンパニとホルンの音色がとても印象的だった。その後の、銅鑼とトロンボーンの動機とティンパニの第1主題も超強烈!!圧倒的な音圧である。まさに、「最大の暴力で(mit höchster Gewalt)」であり、バーンスタインに引けを取らない音圧である。
 再現部は、激しい展開部の余韻を残しながら静かになっていく。鐘の音が鳴り響くも、激しさを残しながら安らぎも垣間見える弦楽器が非常に印象的だった。その後、ホルンとフルートの複雑な3連符があるが、そこも非常に丁寧に演奏され、高関先生の緻密な分析が光った。
 コーダの切れてしまいそうなフルートの高音、ヴァイオリンのソロが繊細な音色を響かせていた。
 第1楽章終了後、第4楽章が終わったかのような長時間の静寂さに包まれた。

第2楽章:Im Tempo Eines Gemachlichen Landlers

 ABCBCABAという順序で入れ替わり現れる。
 激動の第1楽章から軽快な第2楽章へ。軽快な木管楽器から弦楽器が登場するが、スタッカートではなくレガートを採用したような滑らかな滑り出しであったアバドウィーン・フィルのような演奏だった。テンポはバーンスタインのように軽快なテンポであった。
 Bに入ると軽快な三拍子を刻んでいき、唸る弦楽器よりも重厚感あふれる金管楽器が印象的だった。自然体な重厚感あふれる金管楽器は軽快な第2楽章に迫力さを齎す。目まぐるしい展開となるBは、聴いていて非常に楽しく、高関先生の指揮も大きく、分かりやすかった。高関先生と東京シティ・フィルの相性の良さがよくわかった。
 Cに入ると、静かになり、木管楽器の繊細さが際立った。この第2楽章でこれほど美しい演奏は過去に聴いたことあったかな…。
 再びBに入り、1度よりも複雑さが増していくがやはり高関先生の精緻な分析が際立ち、重厚感ある低音と繊細である高音が見事に調和されており、「第2楽章ってこんな音楽だったんだ!」と新たな発見があった。合間のシンバルも素晴らしかった。
 C→Aと静かな箇所も繊細な響きに加え、軽快なテンポによって進められていた。
 3度目のBも不協和音気味に複雑になっていくが迫力十分!
 最後のAは第1楽章のコーダのような静かな繊細さを持って、第2楽章を締める。

第3楽章:Rondo, Burleske

 ABABC(中間部)Aという構成。
 トランペットがもっとも緊張する第3楽章であるが、難なく第3楽章の幕を開けた。テンポは標準的であり、力強く重厚感あふれる弦楽器が第3楽章のAを進めていく。それに加えて、重厚感あふれるホルンの音色が素晴らしい響きをしていた。
 Bに入ると弾むような楽しい部分であり、第2楽章のAのような軽快さがここで再び登場する。
 やがてシンバルが打たれるとCに入り、ニ長調でトランペットが柔らかく回音音型を奏する。第4楽章の回音音型を予兆させる音色であり、この時点では第4楽章の素晴らしさは知らなかった。しかし、振り返ると、この回音音型が思わぬ帰結に驚くことがあった。第3楽章Cの回音音型は極めて幻想的で美しく、天国のような安らぎを感じた。トランペットの音色、透き通るような弦楽器が際立った。素晴らしい中間部だった。
 そして、コーダとも言えるAであるが、狂乱的に締め括るのであるがテンポは多少早めて力強く締め括った。

第4楽章:Adagio

 いよいよ最終章である。短い序奏はとてもテンポが遅く、スコアの客観的な解釈ではなく、高関先生の主観的な解釈に基づくものと推測される
 主要主題に入ると少しテンポを加速し(むしろ標準的)、東京シティ・フィルの自然体ながらも幻想的で美しい音色を響かせていた。それにしても、美しいヴァイオリンと重厚感あるチェロ等の低弦楽器が見事なハーモニーを響かせていた。途中のホルンの雄大さはもちろんのこと、随所に見られるコントラファゴットがものすごい重厚感ある音色を響かせていたのが印象的であった。とても安楽な気分になった。
 中間部に入るとハープのリズムに木管楽器が奏でる。どこかもの寂しそうであったが、高関先生と東京シティ・フィルの演奏は繊細で安らかな雰囲気であった。徐々に盛り上がり、主要主題を力強く奏でる。ここからやや長い時間をかけてクライマックスを築いていく。金管楽器が加わり、トロンボーンが力強く主要主題を奏で、強烈なティンパニが鳴り響く圧倒的なクライマックスである。その後のヴァイオリンの悲痛な叫びのような下降音階も素晴らしかった。ホルンの堂々たる主要主題も素晴らしい音量であるも、安らから雰囲気はずっと続いていた。アダージッシモに向けてデクレッシェンドになっていくが息を引き取るかのような雰囲気になるのだが、今日は違った。
 本当の最後、最後の34小節(アダージッシモ)は、息を呑むほどの繊細さと美しさに包まれる。テンポは緩めることなく少し淡々と進められていた印象であったが、凄まじい緊張感に包まれた。そして、見事な繊細さと安らぎ最後はヴィオラが主要主題をオルゴールが止まるように締めくくるのだが、高関先生は左指で1、2、3…とカウントして最後の音が消えていった
 その後、長い沈黙の後、割れんばかりの拍手となった。

総括

 いや、とんでも無いほど素晴らしい演奏を聴いた!!
 実は今回の演奏に入る前に高関先生によるプレ・トークが行われていた。このマーラー交響曲第9番マーラーの死」という暗示が込められた作品であるというのが広く認識されているところであると思われる。私もそのように認識していた。
 しかし、高関先生によるとマーラーは死ぬ直前まで元気でいた」と仰った。さらに、心臓病は医師の誤診であるという。マーラーの死はブドウ球菌感染症(?)によるものであり、現代の医療では抗生物質によって治療することが可能である。もし仮に、マーラーの生存当時に現代の医療が存在していたら、マーラーは今後どのような作品を書いたのだろうか。さらに、高関先生はマーラー交響曲第10番もほぼ書き終えていた」という。今までのマーラーだいぶイメージと離れるものとなった。
 さらに、マーラー交響曲第9番は、オーケストレーションが薄いと言われがちであるが、近日、マーラーが出版直前に修正を加えたスコアが存在することが発表され、高関先生は今回の演奏で一部加えたと仰った。


 なるほど、通りで今日の演奏は「安らかさ」が印象的だった。「マーラーの死」ではなく、マーラーがなくなった天国の安らかさ」となったのであろう。
 高関先生のプレ・トークがより一層本作品の理解が深まり、そのような状態で演奏を聴くという初体験のコンサートであった。
 音楽の知の巨人による音楽は分かりやすくも、精緻な演奏が繰り広げられた。

前回のコンサート

law-symphoniker.hatenablog.com

ブラームス:交響曲第1番ハ短調を聴く(その6)

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はじめに

 作品内容については以下の記事を参照されたい。
law-symphoniker.hatenablog.com
 春休み中にもかかわらず、勉強面でやるべきことが山積みとなってしまい投稿が遅くなって申し訳ありません。
 やはり法科大学院は大変…。

ブラームス交響曲第1番

ヘルベルト・ブロムシュテットライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

評価:12 演奏時間:約50分【当方超推薦盤】
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第1楽章:Un Poco Sostenuto, Allegro

 優しく、柔らかい中に響きの中、シャープで美しい弦楽器が登場する。早速ブロムシュテットの丁寧であり、緻密な音楽が作り出される。独特のクレッシェンドは底から湧き出る泉のような美しさである。2度目の盛り上がりは1度目とは大きく異なり、非常に情熱的である。
 提示部に入ると、ブロムシュテット独特のシャープな弦楽器の響きが顕著にみられる。年齢を感じさせない爽やかな雰囲気の第2主題は聴きどころである。幸福感が満載の第1楽章は非常に素晴らしい内容となっている。一方、力強い第1主題は厳格な雰囲気で引き締まった印象である。提示部繰り返しあり
 展開部に入ると、提示部と同様の厳格な雰囲気の中に笑みを浮かべながら指揮をするブロムシュテットの姿が容易に想像できる。唸るようでもありながら、大海原のような壮大な音楽はブロムシュテットならでは。朝比奈先生とは対照的にスッキリと爽やかな美しさに満ち溢れている
 再現部入ると壮大さを増していくも、自然体を失うことなく美しく、かつ力強い演奏が繰り広げられている。随所にキレのある演奏もみられる。ブロムシュテットの鋭い音色は、全く年齢を感じさせない音楽の一つの要因になろう。
 コーダは第2楽章に続くように高らかに弦楽器が奏でられ、繊細な響きをもって安らかに締めくくる。

第2楽章:Andante Sostenuto

 繊細な弦楽器の音色を持って第2楽章を幕を開ける。動きのある音色であり、非常に美しい幕開けである。あまりビブラートをかけないため、シャープな音色が生まれるのだが、それによって織り成す弦楽器の音色は実に美しい。その後のオーボエも爽やかな音色であり、それを支える弦楽器も重厚さもありながら美しいミルフィーユのように形成されているブロムシュテットの丁寧な音楽作りがよくわかる。
 爽やかさもありながら、ブラームス特有の重厚さも失われていない点が極めて重要な点である
 後半のホルンとヴァイオリン・ソロは、ヴァイオリン・ソロの音色が美しくハッキリ聴こえる。それを支えるように柔らかいホルンの音色もしっかりと聴こえる。何よりも、背後にオーケストラの美しい音色が聴こえてくるのである。この3つが見事に重なり合って、圧倒的な美しさの大海原が広がっているのだ。
 実に幸福感に満ち溢れた第2楽章である。

第3楽章:Un Poco Allegretto E Grazioso

 柔らかいクラリネットの音色で第3楽章を幕を開ける。木管楽器のハーモニー、弦楽器のハーモニーもまた美しい。ブロムシュテットも笑みを浮かべながら指揮をしているに違いなかろう。
 盛り上がる中間部においては、鋭い弦楽器の音色が冴え渡り、圧倒的な美音を響かせる。この点も、ブラームス特有の重厚さも失っていない。カラヤンのような圧倒的な音楽とは異なる、ブロムシュテット特有の圧倒的美音が襲いかかってくる

第4楽章:Piu Andante, Allegro Non Troppo, Ma Con Brio, Piu Allegro

 多少早めのテンポで壮大かつ悲痛な幕開けとなる。序奏部第1部は、ゲヴァントハウス管の壮大な弦楽器の響き、重厚な響きは実に素晴らしい音色である。第2部は堂々としたアルペン・ホルンが鳴り響き、第1部の不穏な雰囲気を一気に晴らす。
 そして第1主題。精錬し尽くされたシャープな弦楽器が折り重なる第1主題は極めて美しい。そして、ブロムシュテットの笑みが浮かび上がるような自然な強弱が一気に魅了するブロムシュテットブラームスは天国にいるかのような優しく、明るい音楽が展開される。また、年齢を一切感じさせない明るさはまさにブロムシュテットの魅力の一つである。
 再現部第1主題も引き続いて、重厚感もありつつ、美しい弦楽器が鳴り響く。提示部に比べて少し抑えめであるせいか、より一層繊細さが際立っているように思える。カラヤンのような圧倒的な音量による迫力ではなく、時には迫力十分に、時には繊細な響きをというメリハリのついた演奏は聴いていて飽きない。また、他の演奏では気が付かなかったその作品の背景、構造が明らかになることもある。ブロムシュテットの繊細な音楽作りは新たな一面をお届けしてくれることもある
 そして、コーダに入る。当時92歳のブロムシュテットであるが、強烈な加速には度肝を抜かれた!!まさかの加速には驚いた。年齢を重ねるごとにテンポが遅くなる傾向にあり、カラヤンクレンペラーもそのような演奏が見られるが、ブロムシュテットは年齢を重ねるごとに若返るような元気ある演奏を響かせる。
 その後のコラールでは流石にテンポを落とすが、迫力は継続している。迫力がありながらも自然な音色が響き、十分な音量を持って締め括る
 こんなに幸福感のあるブラームス交響曲第1番は初めてだ!!

 先日、ブロムシュテットライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団ブラームス交響曲が全部発売されることになった。私は、やがて交響曲全集が発売されるのではないかと予想しているため、しばらく待ってみることにしている。
 しかし、その他の演奏も期待が大きいのは間違いない。

倒産法判例百選新旧対照表(第5版-第6版)


 司法試験の選択科目の一つでもある倒産法。
 倒産判例百選が2021年1月20日に第6版として新しくなりましたが、基本書等の記述は第5版の番号であったり、逐一調べ直すのも少し面倒。そして、新旧の対照表も私が調べた中では見当たらなかった。
 そこで、新旧対照表を自分自身で作成することにしました。
 誤記等がありましたら、コメントでお知らせください。

凡例

  • 削除:第5版に掲載されていたが、第6版には削除されたもの。
  • 新規:第5版には掲載されておらず、第6版において新たに掲載されたもの。
  • 変更:第5版に掲載されていた百選番号が、第6版において変更があったもの。
  • 赤数字:第5版の百選番号の判例が、第6版で百選番号が異なっているもの。
  • 緑数字:第5版の百選番号の箇所に新たな判例が差し替えられているもの。

倒産法判例百選新旧対照表

第5版(旧) 第6版(新) 判例年月日 論点
1 1 ①最大決昭和45年6月24日
②最決平成3年2月21日
①倒産手続と憲法的保障(1)ー裁判を受ける権利
②倒産手続と憲法的保障(1)ー裁判を受ける権利
2 2 最大決昭和45年12月16日 倒産手続と憲法的保障(2)ー財産権
3 削除 大決昭和12年10月23日 財産区の破産能力
4 3 東京高決33年7月5日 支払不能(1)ー弁済能力
5 削除 東京地決平成3年10月29日 支払不能(2)ー不法行為債務の場合
6 4 福岡高決昭和52年10月12日 支払停止ー支払不能の推定
7 5 東京高決昭和56年9月7日 債務超過の判断要素
8 6 東京高決昭和57年11月30日 破産手続開始申立てに対する事前協議・同意条項の効力
9 7 東京高決平成17年1月13日 再生計画不認可決定確定後の再度の再生手続開始の申立て
10 8 東京高決平成13年3月8日 再生計画案可決の見込みと申立棄却事由
11 9 東京高決平成24年3月9日 不当な目的による再生手続開始の申立て
12 10 最決平成11年4月16日 債権質の設定者の破産手続開始申立権
新規 11 東京地判平成21年2月13日 申立代理人の義務
13 12 阪高決平成6年12月26日 破産手続開始決定に対する株主の即時抗告申立権
14 13 最決平成13年3月23日 破産手続開始決定に対する即時抗告期間
15 削除 最判平成16年6月10日 有限会社の破産と火災保険契約約款の免責条項の「取締役」
16 14 最判平成21年4月17日 株主総会決議不存在確認訴訟が提起された株式会社の破産と訴えの利益
17 15 最判昭和48年2月16日 破産管財人の第三者性(1)―建物保護法1条の第三者
18 16 最判昭和58年3月22日 破産管財人の第三者性(2)―民法467条2項の第三者
19 17 最判平成18年12月21日 破産管財人善管注意義務
20 18 最判平成23年1月14日 破産管財人源泉徴収義務
21 19 大阪地判平成20年10月31日 再生債務者の第三者性―民法177条の第三者
新規 20 最判平成26年10月28日 破産管財人による不当利得返還請求に対する不法原因給付の主張の可否
新規 21 最判平成5年6月25日 破産管財人の破産手続終了後の地位
22 22 東京地決平成12年1月27日 責任追及等の訴え
23 23 最判昭和58年10月6日 破産財団の範囲(1)―名誉毀損による慰謝料請求権
新規 24 最判平成28年4月28日 破産財団の範囲(2)―名誉毀損による慰謝料請求権
24 25 東京高決平成16年6月17日 営業譲渡についての代替許可の要件
25 26 東京地判平成19年3月29日 支払不能―否認の要件(1)(弁済期の到来)
新規 27 高松高判平成26年5月23日 支払不能(2)ー無理算段
26 28 最判昭和60年2月14日 支払停止―否認の要件(2)
27 29 最判昭和58年11月25日 総破産債権の消滅と否認権の行使
28 30 最判平成2年7月19日 "①給与支給機関から共済組合への払込みと否認
②給与支給機関から共済組合への払込みと否認"
29 31 最判平成5年1月25日 借入金による弁済と否認
30 削除 東京高判平成5年5月27日 不動産の適価売却と否認
新規 32 東京高判平成25年12月5日 相当対価での事業譲渡と否認
新規 33 東京高判平成24年6月20日 会社分割と否認
31 34 最判昭和41年4月14日 代物弁済と否認
32 35 最判平成9年12月18日 動産売買先取特権の目的物を転売先から取り戻してする代物弁済と否認
33 削除 仙台高判昭和53年8月8日 借入れのための担保権の設定と否認
34 36 最判昭和62年7月3日 保証・担保の供与と無償否認
35 37 最判昭和37年11月20日 手形の買戻しと否認の制限
36 38 最判昭和45年8月20日 対抗要件の否認
37 39 最判平成16年7月16日 停止条件付集合債権譲渡契約と否認権
38 40 最判昭和57年3月30日 執行行為の否認
39 削除 最判平成8年10月17日 仮登記仮処分の否認
40 41 阪高判昭和53年5月30日 否認の登記と転得者
41 42 最判昭和48年11月22日 弁済否認と連帯保証債務の復活
42 43 最判昭和61年4月3日 否認による価額償還―算定基準時
43 44 最判平成17年11月8日 否認の効果が及ぶ範囲
44 45 最判平成18年1月23日 破産債権に対する自由財産からの弁済と不当利得の成否
45 46 最判平成22年3月16日 物上保証人の複数被担保債権の一部の全額弁済と開始時現存額主義
46 A9 阪高判昭和63年7月29日 相続財産破産と相続人の固有財産に対する債権者の権利行使
47 削除 東京地判平成3年12月16日 支配会社の債権の取扱い
変更 47 最決平成29年9月12日 開始時現存額主義と超過配当の扱い
48 48 最判平成23年11月22日 ①弁済による代位と財団債権性・共益債権性の承継
②弁済による代位と財団債権性・共益債権性の承継
新規 49 最判平成25年11月21日 再生債権として届け出られた共益債権の取扱い
49 50 最判昭和43年7月11日 問屋の破産と委託者の取戻権
50 51 最判平成2年9月27日 財産分与金と取戻権の成否
51 52 最判平成14年1月17日 保証事業制度下の保証に係る公共工事の前払金と信託
52 53 最判平成10年7月14日 手形上の商事留置権の破産手続開始決定後の留置的効力
53 54 最判平成23年12月15日 商事留置権民事再生手続
54 55 東京高決平成10年11月27日 破産により特別先取特権とされる商事留置権と他の担保権との優劣
55 56 最判昭和59年2月2日 動産売買の先取特権による物上代位と買主の破産
56 削除 ①名古屋高判昭和53年5月29日
②東京地判昭和56年11月16日
①手形の譲渡担保権者の地位
②手形の譲渡担保権者の地位"
57 57 最判昭和41年4月28日 会社更生手続と譲渡担保権者
58 削除 最判平成22年6月4日 所有権留保と民事再生手続
変更 58 最判平成29年12月7日 自動車の所有権留保と登録名義
59 59 最決平成16年10月1日 破産財団から放棄された財産を目的とする別除権の放棄の意思表示をする相手方
60 60 阪高決平成21年6月3日 集合債権譲渡担保の実行としての債権譲渡通知と民事再生法31条の中止命令
61 61 東京高決平成21年7月7日 販売用不動産に対する担保権消滅の可否
62 62 大阪知決平成13年7月19日 ファイナンス・リースと担保権消滅請求手続
新規 63 最判平成26年6月5日 別除権協定解除の効力
63 64 最判平成17年1月17日 相殺の可否(1)―手続開始後の停止条件成就
64 65 最判昭和63年10月18日 相殺の可否(2)―危機時期における手形取立金引渡債務の負担
65 66 最判昭和40年11月2日 相殺の可否(3)―手形買戻代金債権と「前に生じたる原因」
66 67 名古屋高判平成24年1月31日 相殺の可否(4)―支払停止後の投資信託受益権解約と「前に生じた原因」
67 68 東京地判平成21年11月10日 相殺の可否(5)―「専ら再生債権をもってする相殺に供する目的」
68 69 最判昭和52年12月6日 相殺禁止規定に違反した相殺を有効とする合意
69 70 最判平成24年5月28日 無委託保証人の事後求償権の破産債権該当性と相殺制限
新規 71 最判平成28年7月8日 三者間相殺の可否
70 72 最判昭和57年1月29日 届出破産債権に対する異議と時効中断の帰趨
71 73 最判昭和61年4月11日 上告審係属中における当事者の破産と訴えの変更
72 削除 東京地判平成19年3月26日 民事再生手続中の詐害行為取消権行使の可否
73 74 最判昭和54年1月25日 手続開始決定後の不動産転借権の取得と破産法48条
74 75 最判平成7年4月14日 ファイナンス・リース会社更生法61条
75 76 最判昭和57年3月30日 所有権留保売買における倒産解除特約の効力―会社更生手続
76 77 最判平成20年12月16日 フルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約における倒産解除特約の効力―民事再生手続
77 78 ①大阪地判平成21年1月29日
②名古屋高判平成23年6月2日
①双方未履行双務契約の解除と違約金条項
②双方未履行双務契約の解除と違約金条項
78 79 最判昭和53年6月23日 請負契約における注文者の破産
79 80 最判昭和62年11月26日 請負人の破産と破産法53条
80 81 最判平成12年2月29日
最判平成12年3月9日
①預託金会員制ゴルフクラブの会員の破産と破産管財人の解除権
②預託金会員制ゴルフクラブの会員の破産と破産管財人の解除権"
81 82 最判昭和59年5月17日 中断した訴訟手続の受継
新規 83 最判平成30年4月18日 破産手続開始決定により失効する強制執行手続
82 84 最大決昭和36年12月13日 免責の合憲性
83 85 ①大阪高決平成2年6月11日
②仙台高決平成5年2月9日
①免責不許可事由としての「詐術」および裁量免責
②免責不許可事由としての「詐術」および裁量免責"
84 86 ①東京高決平成8年2月7日
②福岡高決平成9年8月22日
①免責不許可事由としての「浪費」および裁量免責
②免責不許可事由としての「浪費」および裁量免責"
85 87 最決平成12年7月26日 免責決定に対する即時抗告期間
86 88 最判平成12年1月28日 破産者がクレジットカードを利用して商品を購入した場合と非免責債権
新規 89 最判平成26年4月24日 非免責債権該当性を理由とする執行文付与の訴えの拒否
87 90 横浜地判昭和63年2月29日 破産債権を支払う約定と免責の効力
88 91 最判平成9年2月25日 免責決定後の詐害行為取消権の行使の可否
89 削除 最判平成11年11月9日 免責の効力を受ける債権と消滅時効
90 92 東京高決平成16年7月23日 再生計画の認可要件(1)―債権者平等原則
91 93 最決平成20年3月13日 再生計画の認可要件(2)―不正の方法による決議の成立
新規 94 最判平成29年12月19日 再生計画の認可要件(3)―不公正な方法による決議の成立(小規模個人再生)
92 95 東京高決平成15年7月25日 清算価値保障原則(再生計画の認可要件)―債権者の一般の利益
93 96 福岡高決平成15年6月12日 給与所得者等再生における可処分所得要件
94 97 東京高決平成22年10月22日 小規模個人再生における清算価値保障原則
95 98 福岡高決昭和56年12月21日 更生計画における公正・衡平――親会社の権利
96 削除 東京高決昭和54年8月24日 100%減資更生計画の許否
97 99 最判平成23年3月1日 届出再生債権と同じ条件で弁済する旨の再生計画による未届出再生債権の帰趨
98 100 最判平成21年12月4日 届出なき債権の失権と信義則
99 削除 最判昭和36年10月13日 会社更生手続中の会社の行為の廃止後の効力
100 削除 最判平成5年6月25日 破産手続終了後の訴訟
A1 A1 最判昭和45年9月10日 破産手続開始申立ての効果―時効中断
A2 A2 広島高決平成14年9月11日 国庫仮支弁の必要性
A3 A3 福岡高判昭和59年6月25日 保全処分の対象―退職前の退職金請求権
A4 A4 最判昭和37年3月23日 弁済禁止保全処分と給付の訴え
A5 削除 最判昭和44年1月16日 買戻手形の支払を受けた場合と買戻しの否認
変更 A5 東京高決平成27年3月5日 破産者に対する条件付海外渡航許可
A6 削除 阪高判昭和58年11月2日 否認の訴えと破産債権者の補助参加
変更 A6 最判平成29年12月19日 差し押さえられた債権に対する二重弁済と偏頗行為否認
新規 A7 東京高判平成27年11月9日 遺産分割と無償否認
新規 A8 最判平成8年10月17日 仮登記処分の否認
新規 A10 東京高判平成17年6月30日 弁済による代位と財団債権性の承継ー租税債権
A7 A11 最判昭和42年8月25日 仮登記を有する買主の取戻権
A8 A12 最判昭和45年1月29日 三者異議の訴えと債務者の破産
A9 削除 福岡高決平成8年6月25日 債権調査期日における異議
新規 A13 東京地判平成24年2月27日 別除権協定に基づく債権の性質
A10 A14 東京高判平成15年12月4日 民事再生手続開始後の債権者代位権
新規 A15 東京地判平成19年3月26日 民事再生手続後の詐害行為取消権の行使の可否
A11 A16 東京高判平成22年12月22日 小規模個人再生手続開始後の詐害行為取消権
A12 削除 最判昭和56年12月22日 ローン提携販売における買主の倒産と双務契約
A13 削除 最判昭和48年10月12日 賃借人破産と転借権の運命
A14 削除 阪高判平成16年11月30日 中断した訴訟手続の受継
A15 A17 福岡高決平成8年1月26日 免責不許可事由としての「射倖行為」と先物オプション取引
A16 A18 東京高決平成7年2月3日 破産法上の義務違反と免責
A17 削除 阪高決平成6年7月18日 免責決定に基づく強制執行の停止・取消し
A18 削除 東京高決平成元年4月10日 更生計画遂行の見込みのないことに基づく手続廃止

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ブラームス:交響曲第1番ハ短調を聴く(その5)

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はじめに

 作品内容については以下の記事を参照されたい。
law-symphoniker.hatenablog.com
 なお、以下の演奏には次のようなハプニングがあったという。

 1988年、最後の来日公演よりさらに5ヶ月後、カラヤンの死が9ヶ月後に迫った頃のコンサートです。前回と同じかそれ以上に、聴衆に「これが最後かも知れない」との雰囲気が蔓延したのは、誰も口にせずとも明確です。
 そんな中、このコンサートは大きなハプニングとともに始まることになります。ウィーン、パリそしてロンドンという楽旅上にあったカラヤンベルリン・フィルですが、パリからロンドンへの楽器の搬送がフランス国内でのストライキの影響で遅れに遅れてしまったのです。ドーヴァーからイギリス警察が護衛し搬送するという国家的な特別措置をもってしても、ホール・リハーサルに割く時間は確保されませんでした。事情を知らされていなかった聴衆の心中が、いかに穏やかならなかったかを想像するのは難しくありません。それは、苛立ち、といった感情より、最悪の事態(=公演の中止)をも想定したそこはかとない不安感だったに違いありません。同様に、楽器の到着を待ちわび続け、リハーサルが出来なかった不安もあった楽団員たちもまた、今までに無い緊迫感の中にありました。
(下記、HMVサイトより。下線部筆者)

 そのような状況下の中で、行われたヘルベルト・フォン・カラヤンブラームス交響曲第1番のライヴ演奏である。

ブラームス交響曲第1番

ヘルベルト・フォン・カラヤンベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

評価:10 演奏時間:約46分【当方推薦盤】
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第1楽章:Un Poco Sostenuto, Allegro

 最初のティンパニの1音で既にカラヤンの充実した音楽が始まる凄まじい一発であり、オーケストラ音色が登場するコンマ1秒ほど早くティンパニが鳴らされている。そうすると、一気に緊迫感が広がるのだ。その後、美しながらも緊迫感のある弦楽器が響く。なんという序奏部だ。テンシュテットも真っ青になるだろう。
 また力強いティンパニの1音で提示部に入る。唸る弦楽器の音色と力強い金管楽器のハーモニーが印象的カラヤンらしい豪華な音色を響かせ、聴く者を圧倒する。第2主題は一旦落ち着き、美しく雄大に音色を響かせるベルリン・フィル特有の透き通るような弦楽器の音色がよくわかる。それにしても、ものすごい充実感。提示部繰り返しなし
 展開部に入っても気合入った演奏が繰り広げられる。レガートを多用しているせいか弦楽器の響きが切れず、充実感をもたらしている。途中のティンパにも力強く、カラヤンベルリン・フィルの底力が発揮されているのだろう
 再現部入ると提示部よりも迫力さを増しており、テンシュテットのように音が襲いかかってくる。ここまで気迫のこもった第1楽章はそうそうないだろう。
 コーダは第2楽章に続くように高らかに弦楽器が奏でられるのだが、第1楽章の余韻を生かしているのか、ティンパニはやや強く、テンポも速めで締めくくる

第2楽章:Andante Sostenuto

 大迫力の第1楽章から一変してベルリン・フィルの美しい弦楽器の音色が響き渡り、重厚な音色を響かせる。この音色は一度でもいいから実際に聴いてみたい。その後の木管楽器の音色も優しい音色を響かせる。それにしても、随所に見られる盛り上がる箇所は、物凄い迫力。すげー(思わず語彙力を失う)。
 後半のホルンとヴァイオリン・ソロは、ホルンの音色とヴァイオリンが聴こえるのだが、その他の楽器の音色も十分鳴っている。一部かき消されてしまっているが、ヴァイオリンの美しい音色は十分聴き取れる。

第3楽章:Un Poco Allegretto E Grazioso

 第2楽章の美しさを引き継ぐように、美しい弦楽器が鳴り響く。テンポもそこまで遅くはなく、流れるように奏でられる第3楽章は恍惚とする。
 盛り上がる中間部においては、第1楽章のような迫力さが戻ってきたかのような充実感がある。大迫力のオーケストラの美音が溢れ出て止まらない。カラヤン美学が第3楽章に大いに表れているようだ。ヴァイオリンが高く、唸っているのである。

第4楽章:Piu Andante, Allegro Non Troppo, Ma Con Brio, Piu Allegro

 第1楽章の序奏部のような迫力。第4楽章が幕を開ける。序奏部分第1部は厳格なテンポであり、慎重で緊迫感のある雰囲気が続く。第2部は雄大アルペン・ホルンが聴こえてるが、伸びがあり雄大な音色を響かせる。その後のフルートもどこまでも聴こえてきそうな音色である。
 そして第1主題。ベルリン・フィル特有の透き通るような美しさに加え、ブラームス特有の重厚感が実に素晴らしい響きであり、感動の渦に引き込まれる。テンポも多少速めであって元気さ、明るさを徐々に増していく。そして金管楽器が加わるともうカラヤンの世界。他の指揮者は近づくことが難しい。圧倒的な音楽を形成する。
 再現部第1主題も引き続いて厚みのある美しい弦楽器が鳴り響く。そして、ホルンが共に演奏されているのもわかる。しかし、金管楽器がものすごい迫力であり、弦楽器の音色を完全にかき消してしまうほどの音量であるカラヤンの漲る音楽造りには圧倒されるばかり、そしてトランペットは倍管にしているだろう。
 そして、コーダに入る。ティンパニが強く叩かれ、金管楽器が強烈な音色を響かせる「これでもか!というほどどんどん音量を増していく」「恐るべし!ベルリン・フィルカラヤン!」
 超絶な爆音を持って力強く締めくくる。

 その後のブラボーもものすごい。拍手もう少し長く収録してくれたらなぁ…。
 でも、これだけ充実感に満ち溢れた演奏を聴けばぐうの音も出ない。カラヤンブラームスの決定盤といえよう。

www.hmv.co.jp