Symphonikerの音楽鑑賞日記

クラシック音楽を趣味とする早大生

ブラームス:交響曲第1番ハ短調を聴く

Introduction

 今回は、ブラームス交響曲第1番ハ短調ブラームス交響曲の中でも最も有名な交響曲といえよう。
 もっとも、第1楽章冒頭の迫力ある悲痛な叫びのような序奏は初めて聴いた時、雷に打たれたような衝撃が走ったことを強く記憶している。その時の演奏が、叔父の所有しているカラヤンベルリン・フィル(DG)の演奏だった。
 第1楽章から非常に中身の濃い曲であり、ブラームス特有の濃厚さが詰まっている。
 そして、第2楽章・第3楽章の流れるように落ち着いた美しさもブラームスの特徴のひとつといえよう。古典的な交響曲は、第3楽章にスケルツォを置くことが多いのだが、本曲は第2楽章に続いて第3楽章も緩徐楽章なのである。ある意味、新しい第3楽章ともいえよう。
 なんと言っても、最終章である。長い序奏部のあとの、提示部第1主題は第4楽章のなかで最も重要な主題であり、印象深いものである。

 第1楽章の暗さ→第4楽章の明るさというわかりやすい構造であるが…類似した構成の曲がブラームス交響曲第1番の前にすでに登場しているのである。それが、ベートーヴェン交響曲第5番である。ブラームスベートーヴェンの影響を強く受けていることが推定されよう。
 そして、ブラームスは、ベートーヴェンの9つの交響曲を意識するあまり、管弦楽曲、特に交響曲の作曲、発表に関して非常に慎重であった。通常は数か月から数年とされる作曲期間であるが、最初のこの交響曲は特に厳しく推敲が重ねられ、着想から完成までに21年という歳月を要した*1
 また、ハンス・フォン・ビューローは、この曲をベートーヴェン交響曲第10番」とも評価した。近時、この評価の仕方について様々な意見が出てるところだが、ブラームス交響曲の中も素晴らしい作品であることについては異論はなかろう。

ブラームス交響曲第1番ハ短調

カルロ・マリア・ジュリーニウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

評価:10 演奏時間:約51分【当方推薦盤】


第1楽章:Un Poco Sostenuto, Allegro
 重々いテンポに加えて崇高な弦楽器が悲劇的に美しく響かせながら幕を開けるジュリーニは基本的にスローテンポの指揮者であり、序奏部もテンポを遅めてスケールの大きい演奏を繰り広げる。序奏部からジュリーニの特色が存分に表れている。提示部に入っても、第1主題は遅めのテンポでスケールの大きな演奏を繰り広げるブラームスのような濃厚な音楽は遅めのテンポの方がより濃厚な演奏となる。第2主題はスラーの部分も弦楽器が美しく奏でられ、非常に美しい音楽である。濃厚な音楽であるブラームスの音楽をここまで迫力満点に襲いかかる演奏は大好きである。提示部繰り返しなし展開部に入ると、ミュンシュとは異なり、柔らかく美しい音楽が広がっている。ウィーン・フィルの伝統的な甘美な音色とジュリーニのテンポによる相乗効果はすごいものだ再現部もじっくりとしたテンポ。コーダは美しく幻想的に締めくくる。提示部繰り返しなしでも、約16分の演奏。
第2楽章:Andante Sostenuto
 こうなると、第2楽章の美しさはどのようになるのか、楽しみでしかない。ウィーン・フィルの伝統的な甘美な音色が極めて美しい。各弦楽器の美しさがミルフィーユのように積み重なり、実に幸福感をもたらす美しさである。動きのある中間部を経て、コンサートマスターが活躍する場面に入る。ヴァイオリン・ソロの透き通るような繊細な音色と、ウィンナ・ホルンの雄大な音色が安らかに奏でられ、これまた美しいミュンシュのやや固い音色とは正反対に、柔らかく美しい空間、音楽を提供する。ジュリーニの美しい音楽作りが際立つ第2楽章である。
第3楽章:Un Poco Allegretto E Grazioso
 クラリネットが柔らかく、甘美な音色を響かせる。第3楽章はそこまでテンポは遅くなく、標準的(か若干遅い)なテンポである。途中「タタタターン」というリズムが出てくる箇所があるのだが、木管楽器の柔らかな音色と、弦楽器の美音のシャワーが実に印象的。スケールの大きい演奏を続けるものだから、第3楽章のゆったりとした演奏も素晴らしい。本当に弦楽器の音色が美しく、迫力ある
第4楽章:Piu Andante, Allegro Non Troppo, Ma Con Brio, Piu Allegro
 いよいよ、第4楽章である。ジュリーニはこの第4楽章を約20分で演奏する。大抵第4楽章は17分〜18分で演奏されるから、ジュリーニのスローテンポがこの演奏時間から伺われる。
 第1楽章の冒頭を彷彿されるような重々しい序奏部分である。序奏部分第1部はスローテンポによって弦楽器の美しさと濃厚さが十分に引き出されている。第2部は雄大アルペン・ホルンが演奏される場面に入るが、まるでリヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」聴いているかのような自然で雄大な音色が広がっている。その上、テンポが遅いものだから非常にスケールの大きい音楽となっている。
 そして提示部に入り、若干の静寂があり、かの有名な第1主題が奏でられる。「おお、なんて美しい出だしなんだ!」ゾワゾワとくるG音が早速体中に感動の響きが伝わる。濃厚な弦楽器が折り重なった素晴らしい時間であり、至高の弦楽器のミルフィーユが完成した。その後の木管楽器も明るく、楽しげに演奏される。その後、金管楽器が加わっても遅めのテンポで、しっかりとした音楽が続いていく。再現部に入る前にグッとテンポを落とし、第1主題が我こそはと堂々と登場し、美しい主題がまた戻ってくるのである。木管楽器の繊細な響きの後にさりげなくG音が入ってくるが、その響きも素晴らしく思わず涙が出そうになるほどの美しさにただただ感動。ジュリーニの素晴らしさはこの点にあるのだろう。そして、コーダに入る。相変わらずのスローテンポであるが、相変わらずの弦楽器の美しさである。最終部に入ればスケールの大きさに圧倒される。最後の最後まで美しい演奏を繰り広げ、長いハ長調の和音で締めくくる。
 ジュリーニが作り出したスケールの大きく、美しさに満ち溢れたブラームスは必聴に値するものといえよう。

ブラームス:交響曲第1番

ブラームス:交響曲第1番

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ギュンター・ヴァント・NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団

Coming Soon

シャルル・ミュンシュ:パリ管弦楽団

評価:8 演奏時間:約48分宇野功芳先生推薦盤】*2

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第1楽章:Un Poco Sostenuto, Allegro
 重々いテンポに加えて張りのある厳格な音色によって、幕を開ける。独特の強弱とテンポの揺れがミュンシュの特徴であるが、序奏部分からすでにその要素が現れている。序奏部から凄まじい迫力である。提示部に入っても、第1主題はミュンシュによる力一杯の演奏によって奏でられる。第2主題はスラーの部分は弦楽器が美しく唸り、キレのある部分は迫力満点。濃厚な音楽であるブラームスの音楽をここまで迫力満点に襲いかかる演奏は大好きである。提示部繰り返しなし展開部に入ると、提示部第1主題メインとなり再び迫力ある音楽が登場する。とにかく弦楽器の音色がものすごい重厚で襲いかかってくるのであるミュンシュという指揮者は恐ろしいものだ。展開部に入ると「タタタターン」というモチーフ(特にティンパニ)が聴こえるが、これは運命の動機とも解されている。再現部も提示部第1主題同様に鬼気迫る迫力。コーダはテンポを遅くしながらも迫力は維持され、美しく安らぐように締める。
第2楽章:Andante Sostenuto
 第1楽章の重々しさから一変して安らぎの第2楽章である。美しい弦楽器であるが、低弦楽器の重厚さがものすごい伝わってくる。とてもスケールの大きい演奏である。中間部のオーボエも美しビブラートを奏で、それを美しく重厚な弦楽器が支える。ちょっとやや固い音色である点が気になるが、聴いていて非常に癒され、安らぎの空間を提供する。動きのある中間部を経て、コンサートマスターが活躍する場面に入る。ヴァイオリン・ソロの美しく甘美な音色がしっかりと響き、その後にホルンの雄大な音色が奏でられている。それを支えるオーケストラの音色もまた素晴らしい。実に「一体的」な演奏だといえよう。重厚ながらも美しさに満ち溢れた第2楽章である。
第3楽章:Un Poco Allegretto E Grazioso
 流れるような心地よいテンポによってクラリネットが甘美な音色を響かせる。古典的な交響曲は第3楽章にスケルツォが置かれるのだが、本曲は第2楽章に引き続いて緩徐楽章である。ミュンシュの独特な音楽作りによる第3楽章は抑揚があり、聴いていて非常に楽しい中間部の迫力ある場面はミュンシュの見せ場ともいえようか、迫力満点の音のシャワーを諸に浴びることとなる。実際に聴いたらすごい音量に違いなかろう。チラッと聴こえるのびやかなトランペットがミソである。
第4楽章:Piu Andante, Allegro Non Troppo, Ma Con Brio, Piu Allegro
 いよいよ、第4楽章である。第1楽章の冒頭を彷彿されるような重々しい序奏部分である。序奏部分第1部はテンポを遅め、慎重さと重々しさを兼ね備えたものとなっている。第2部は雄大アルペン・ホルンが演奏される場面に入るが、あまりうるさくなく、自然な音色である。そして提示部に入り、、かの有名な第1主題が奏でられる。重厚な弦楽器による音色によって奏でられる1主題はいつ聴いても美しく、感動する弦楽器→木管楽器と美しさから軽やかさに変遷していき、やがては金管楽器が加わって壮大に演奏される。この流れはブラームスはやはり天才的作曲家である。その後、張り切って力んでいるような弦楽器が随所に見られるが、これがミュンシュの求める恐ろしい要求なのである。迫力ある演奏が続き、少し落ち着いたと思ったら、再現部第1主題が登場し、美しい主題がまた戻ってくるのである。個人的に再現部第1主題の方が好みであるが、提示部第1主題の静寂な中から重厚な弦楽器によって奏でられるものもまた素晴らしい。そして、コーダに入る。大迫力な音量と強い推進力によって進められ、張りのある金管楽器と唸りを上げる弦楽器、そして体の中心に響くティンパニが鳴り響き、長く伸ばして締める。完全燃焼の演奏といえよう。

ヘルベルト・ブロムシュテットライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

評価:12 演奏時間:約50分【当方超推薦盤】


第1楽章:Un Poco Sostenuto, Allegro
 優しく、柔らかい中に響きの中、シャープで美しい弦楽器が登場する。早速ブロムシュテットの丁寧であり、緻密な音楽が作り出される。独特のクレッシェンドは底から湧き出る泉のような美しさである。2度目の盛り上がりは1度目とは大きく異なり、非常に情熱的である。提示部に入ると、ブロムシュテット独特のシャープな弦楽器の響きが顕著にみられる。年齢を感じさせない爽やかな雰囲気の第2主題は聴きどころである。幸福感が満載の第1楽章は非常に素晴らしい内容となっている。一方、力強い第1主題は厳格な雰囲気で引き締まった印象である。提示部繰り返しあり展開部に入ると、提示部と同様の厳格な雰囲気の中に笑みを浮かべながら指揮をするブロムシュテットの姿が容易に想像できる。唸るようでもありながら、大海原のような壮大な音楽はブロムシュテットならでは。朝比奈先生とは対照的にスッキリと爽やかな美しさに満ち溢れている再現部入ると壮大さを増していくも、自然体を失うことなく美しく、かつ力強い演奏が繰り広げられている。随所にキレのある演奏もみられる。ブロムシュテットの鋭い音色は、全く年齢を感じさせない音楽の一つの要因になろう。コーダは第2楽章に続くように高らかに弦楽器が奏でられ、繊細な響きをもって安らかに締めくくる。
第2楽章:Andante Sostenuto
 繊細な弦楽器の音色を持って第2楽章を幕を開ける。動きのある音色であり、非常に美しい幕開けである。あまりビブラートをかけないため、シャープな音色が生まれるのだが、それによって織り成す弦楽器の音色は実に美しい。その後のオーボエも爽やかな音色であり、それを支える弦楽器も重厚さもありながら美しいミルフィーユのように形成されているブロムシュテットの丁寧な音楽作りがよくわかる。爽やかさもありながら、ブラームス特有の重厚さも失われていない点が極めて重要な点である。後半のホルンとヴァイオリン・ソロは、ヴァイオリン・ソロの音色が美しくハッキリ聴こえる。それを支えるように柔らかいホルンの音色もしっかりと聴こえる。何よりも、背後にオーケストラの美しい音色が聴こえてくるのである。この3つが見事に重なり合って、圧倒的な美しさの大海原が広がっているのだ。実に幸福感に満ち溢れた第2楽章である。
第3楽章:Un Poco Allegretto E Grazioso
 柔らかいクラリネットの音色で第3楽章を幕を開ける。木管楽器のハーモニー、弦楽器のハーモニーもまた美しい。ブロムシュテットも笑みを浮かべながら指揮をしているに違いなかろう。盛り上がる中間部においては、鋭い弦楽器の音色が冴え渡り、圧倒的な美音を響かせる。この点も、ブラームス特有の重厚さも失っていない。カラヤンのような圧倒的な音楽とは異なる、ブロムシュテット特有の圧倒的美音が襲いかかってくる
第4楽章:Piu Andante, Allegro Non Troppo, Ma Con Brio, Piu Allegro
 多少早めのテンポで壮大かつ悲痛な幕開けとなる。序奏部第1部は、ゲヴァントハウス管の壮大な弦楽器の響き、重厚な響きは実に素晴らしい音色である。第2部は堂々としたアルペン・ホルンが鳴り響き、第1部の不穏な雰囲気を一気に晴らす。
 そして提示部第1主題。精錬し尽くされたシャープな弦楽器が折り重なる第1主題は極めて美しい。そして、ブロムシュテットの笑みが浮かび上がるような自然な強弱が一気に魅了するブロムシュテットブラームスは天国にいるかのような優しく、明るい音楽が展開される。また、年齢を一切感じさせない明るさはまさにブロムシュテットの魅力の一つである。再現部第1主題も引き続いて、重厚感もありつつ、美しい弦楽器が鳴り響く。提示部に比べて少し抑えめであるせいか、より一層繊細さが際立っているように思える。カラヤンのような圧倒的な音量による迫力ではなく、時には迫力十分に、時には繊細な響きをというメリハリのついた演奏は聴いていて飽きない。また、他の演奏では気が付かなかったその作品の背景、構造が明らかになることもある。ブロムシュテットの繊細な音楽作りは新たな一面をお届けしてくれることもある。そして、コーダに入る。当時92歳のブロムシュテットであるが、強烈な加速には度肝を抜かれた!!まさかの加速には驚いた。年齢を重ねるごとにテンポが遅くなる傾向にあり、カラヤンクレンペラーもそのような演奏が見られるが、ブロムシュテットは年齢を重ねるごとに若返るような元気ある演奏を響かせる。その後のコラールでは流石にテンポを落とすが、迫力は継続している。迫力がありながらも自然な音色が響き、十分な音量を持って締め括る
 こんなに幸福感のあるブラームス交響曲第1番は初めてだ!!

 先日、ブロムシュテットライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団ブラームス交響曲が全部発売されることになった。私は、やがて交響曲全集が発売されるのではないかと予想しているため、しばらく待ってみることにしている。
 しかし、その他の演奏も期待が大きいのは間違いない。

ヘルベルト・フォン・カラヤンベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1988年・ロンドンライヴ)

評価:10 演奏時間:約46分【当方推薦盤】


第1楽章:Un Poco Sostenuto, Allegro
 最初のティンパニの1音で既にカラヤンの充実した音楽が始まる凄まじい一発であり、オーケストラ音色が登場するコンマ1秒ほど早くティンパニが鳴らされている。そうすると、一気に緊迫感が広がるのだ。その後、美しながらも緊迫感のある弦楽器が響く。なんという序奏部だ。テンシュテットも真っ青になるだろう。また力強いティンパニの1音で提示部に入る。唸る弦楽器の音色と力強い金管楽器のハーモニーが印象的カラヤンらしい豪華な音色を響かせ、聴く者を圧倒する。第2主題は一旦落ち着き、美しく雄大に音色を響かせるベルリン・フィル特有の透き通るような弦楽器の音色がよくわかる。それにしても、ものすごい充実感。提示部繰り返しなし展開部に入っても気合入った演奏が繰り広げられる。レガートを多用しているせいか弦楽器の響きが切れず、充実感をもたらしている。途中のティンパにも力強く、カラヤンベルリン・フィルの底力が発揮されているのだろう再現部入ると提示部よりも迫力さを増しており、テンシュテットのように音が襲いかかってくる。ここまで気迫のこもった第1楽章はそうそうないだろう。コーダ第2楽章に続くように高らかに弦楽器が奏でられるのだが、第1楽章の余韻を生かしているのか、ティンパニはやや強く、テンポも速めで締めくくる
第2楽章:Andante Sostenuto
 大迫力の第1楽章から一変してベルリン・フィルの美しい弦楽器の音色が響き渡り、重厚な音色を響かせる。この音色は一度でもいいから実際に聴いてみたい。その後の木管楽器の音色も優しい音色を響かせる。それにしても、随所に見られる盛り上がる箇所は、物凄い迫力。すげー(思わず語彙力を失う)。後半のホルンとヴァイオリン・ソロは、ホルンの音色とヴァイオリンが聴こえるのだが、その他の楽器の音色も十分鳴っている。一部かき消されてしまっているが、ヴァイオリンの美しい音色は十分聴き取れる。
第3楽章:Un Poco Allegretto E Grazioso
 第2楽章の美しさを引き継ぐように、美しい弦楽器が鳴り響く。テンポもそこまで遅くはなく、流れるように奏でられる第3楽章は恍惚とする。盛り上がる中間部においては、第1楽章のような迫力さが戻ってきたかのような充実感がある。大迫力のオーケストラの美音が溢れ出て止まらない。カラヤン美学が第3楽章に大いに表れているようだ。ヴァイオリンが高く、唸っているのである。
第4楽章:Piu Andante, Allegro Non Troppo, Ma Con Brio, Piu Allegro
 第1楽章の序奏部のような迫力。第4楽章が幕を開ける。序奏部分第1部は厳格なテンポであり、慎重で緊迫感のある雰囲気が続く。第2部は雄大アルペン・ホルンが聴こえてるが、伸びがあり雄大な音色を響かせる。その後のフルートもどこまでも聴こえてきそうな音色である。そして、提示部第1主題。ベルリン・フィル特有の透き通るような美しさに加え、ブラームス特有の重厚感が実に素晴らしい響きであり、感動の渦に引き込まれる。テンポも多少速めであって元気さ、明るさを徐々に増していく。そして金管楽器が加わるともうカラヤンの世界。他の指揮者は近づくことが難しい。圧倒的な音楽を形成する。再現部第1主題も引き続いて厚みのある美しい弦楽器が鳴り響く。そして、ホルンが共に演奏されているのもわかる。しかし、金管楽器がものすごい迫力であり、弦楽器の音色を完全にかき消してしまうほどの音量であるカラヤンの漲る音楽造りには圧倒されるばかり、そしてトランペットは倍管にしているだろう。
 そして、コーダに入る。ティンパニが強く叩かれ、金管楽器が強烈な音色を響かせる「これでもか!というほどどんどん音量を増していく」「恐るべし!ベルリン・フィルカラヤン!」超絶な爆音を持って力強く締めくくる。
 その後のブラボーもものすごい。拍手もう少し長く収録してくれたらなぁ…。
 でも、これだけ充実感に満ち溢れた演奏を聴けばぐうの音も出ない。カラヤンブラームスの決定盤といえよう。
 なお、以下の演奏には次のようなハプニングがあったという。

 1988年、最後の来日公演よりさらに5ヶ月後、カラヤンの死が9ヶ月後に迫った頃のコンサートです。前回と同じかそれ以上に、聴衆に「これが最後かも知れない」との雰囲気が蔓延したのは、誰も口にせずとも明確です。
 そんな中、このコンサートは大きなハプニングとともに始まることになります。ウィーン、パリそしてロンドンという楽旅上にあったカラヤンベルリン・フィルですが、パリからロンドンへの楽器の搬送がフランス国内でのストライキの影響で遅れに遅れてしまったのです。ドーヴァーからイギリス警察が護衛し搬送するという国家的な特別措置をもってしても、ホール・リハーサルに割く時間は確保されませんでした。事情を知らされていなかった聴衆の心中が、いかに穏やかならなかったかを想像するのは難しくありません。それは、苛立ち、といった感情より、最悪の事態(=公演の中止)をも想定したそこはかとない不安感だったに違いありません。同様に、楽器の到着を待ちわび続け、リハーサルが出来なかった不安もあった楽団員たちもまた、今までに無い緊迫感の中にありました。
(下記、HMVサイトより。下線部筆者)

 そのような状況下の中で、行われたヘルベルト・フォン・カラヤンブラームス交響曲第1番のライヴ演奏である。

www.hmv.co.jp

カール・ベームベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

評価:9 演奏時間:約43分


第1楽章:Un Poco Sostenuto, Allegro
 冒頭ベームらしい厳しく、重々しい雰囲気で幕を開ける。弦楽器も相当気合が入っているようだ。安定したテンポと、重々しくも透き通るようなベルリン・フィルの音色が響き渡る。序奏部から既に感動的提示部に入ると熱量が凄まじいまま第1主題を奏でる。決して遅くないテンポに加えて、カラヤンを凌駕するほどの圧倒さがそこにある。「決して地味とは言わせない」そのような言葉がピッタリであろう。第2主題に入ると、迫力も十分ながら透き通るような美しい弦楽器が奏でられている。地味との印象が強いベームであるが、時には何もかも凌駕する程度の熱量を持って指揮することがあるのだ。しかし、熱量があっても、カラヤンのように強烈な金管楽器を響かせるようなものではなく、あくまでも自然体を貫いているのがベームの魅力の一つである。提示部繰り返しなし展開部も提示部と同様に迫力とキレと流れるような美しさが登場する。
 再び熱量のこもった第1主題等が出現し、再現部を経てコーダへ。コーダは繊細さを極め、落ち着いた雰囲気を持って終結する。この後の穏やかな第2楽章へ承継するように穏やかに締める。
第2楽章:Andante Sostenuto
 穏やかな第2楽章。第1楽章の激しさは一旦影を潜め、美しさと壮大さが十分に響き渡る演奏が繰り広げられる。しかし、決して薄っぺらい演奏ではなく、ブラームス特有の重厚な音色が響き渡る中間部を経て、コンサートマスターが活躍する場面に入る。ヴァイオリン・ソロは、ミシェル・シュヴァルべ。透き通るような繊細な音色と、それを支える美しい弦楽器ベームの本格的な解釈と、世界屈指のオーケストラであるベルリン・フィルが織り成す美しい音楽は言葉で言い表すことは難しい。それほど、芸術性が高いのである。
第3楽章:Un Poco Allegretto E Grazioso
 淡々としたテンポで進められていく。もっとも、弦楽器もそうだが、木管楽器クラリネットも非常に透き通るような音色で美しい。気を衒わず、自然なテンポで奏でていく指揮はまさに本格的。途中「タタタターン」というリズムが出てくる箇所は、大海原にいるような圧倒的なスケールを構築する。鬼気迫る緊迫感も垣間見えるのもまた素晴らしい。
第4楽章:Piu Andante, Allegro Non Troppo, Ma Con Brio, Piu Allegro
 いよいよ、第4楽章である。
 第1楽章の冒頭を彷彿されるような重々しい序奏部分である。序奏部分第1部は標準的なテンポであるが、ベーム特有の厳しさが伝わってくる。第2部は雄大アルペン・ホルンが聴こえてるが、力みはなく、自然体ながらも押し寄せる美音に圧倒される。そして、提示部に入り、若干の静寂があり、かの有名な第1主題が奏でられる。気を衒わず、スムーズに第1主題が美しく奏でられる。淡々としたテンポによって美しい音色が響き渡り、その後の木管楽器も明るく、楽しげに演奏される。その後、金管楽器が加わってテンポを加速し、迫力十分な音楽を奏でるベルリン・フィルとのベームは全く地味ではない。再現部も、スッと第1主題が我こそはと堂々と登場し、美しい主題がまた戻ってくるのである。ロマン溢れるジュリーニとは異なり、本格的な古典派を演じている。その後も、緊迫感とカラヤンに引けを取らないほどの迫力に圧倒される。そして、コーダに入る。最終部の熱狂さは途轍もない。テンポを極端に遅くすることがないため、サッパリとしながら圧倒的な音量に驚かされる。最後の連打音もテンポに変化を加えることなく、堂々と締めくくる。

 このベームの演奏の燃焼度は数ある演奏の中でもトップクラスに入るだろう。

サー・ジョン・バルビローリウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

評価:9 演奏時間:約50分


第1楽章:Un Poco Sostenuto, Allegro
 力感もなく自然な音色で滑らかな導入部分である。その後の木管楽器も穏やかであり、弦楽器も滑らかに音を奏でる。ベーム以上の「自然体」である。提示部に入ると遅く、厳格なテンポで進められていく。第1主題は厳格なテンポによって重々しい雰囲気であるが、冒頭のように「自然体」を貫き、ブラームスの本質的な部分を奏でているように聴こえる。それに引き続いて第2主題も穏やかで美しい音色が響いてくる。これはウィーン・フィルとの共演によるものだからこそ奏でられるブラームスなのだろう。提示部繰り返しなし展開部に入っても遅いテンポで演奏を続ける。ウィーン・フィルの透き通るような美しい音色、自然な金管楽器が美しさを際立たせる
 再現部も上記同様に自然体を貫いていく。コーダはよりテンポを遅めて、清廉な雰囲気を迎え、幻想的に締めくくる
第2楽章:Andante Sostenuto
 なんという美しい出だしなのだろう。「自然体」を貫くバルビローリによる第2主題は数ある美しさを凌駕するほどの美しさである。悪く言ってしまえば、表面的といえようが…しかし、第2楽章は濃厚さよりも美しさの方が重要であるジュリーニとはまた違った美しさが、バルビローリによって奏でられる。ブラームス特有の低弦楽器の濃厚さも十分にありながら、ヴァイオリンの美しい音色が撫でるように奏でるのである。後半のホルンとヴァイオリン・ソロは、ホルンの自然かつ雄大な音色と繊細で美しいヴァイオリンが見事な競演を繰り広げられる。もちろん、この部分は第2楽章の中でも聴きどころの一つといえよう。
 こんなに美しく自然的な演奏をするのは他にはないだろう。
第3楽章:Un Poco Allegretto E Grazioso
 第2楽章の美しさを引き継ぐように、柔らかく穏やかなクラリネットによって始まる。その後の弦楽器も美しく穏やかな海のように滑らかに畝る。第1楽章と第4楽章は重厚な内容に対して、中間の第2楽章と第3楽章は繊細で美しい構造となっていることが改めて実感する。もっとも、この第3楽章は金管楽器が加わったりと、第4楽章を予感させる内容である。
 盛り上がる中間部においては、テンポは遅く厳格な雰囲気ながらも、木管楽器等の楽器が非常に柔らかく穏やかな音色を響かせるため、自然体で美しい内容となっている。トランペットの音色も非常に柔らかい。
第4楽章:Piu Andante, Allegro Non Troppo, Ma Con Brio, Piu Allegro
 冒頭悲痛な幕開けとなる部分であるが、力感はない。ここでも「自然体」を貫く。
 序奏部分第1部は標準的なテンポであるが、ブラームス特有の重厚感が十分に引き出されている。第2部は雄大アルペン・ホルンが登場する。実に自然で雄大な音色であり、まさしくアルプスである。青空が広がり、太陽が燦々としている中、雄大マッターホルンが聳え立っているような、そんな風景が目に浮かぶ。リヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」のようだ。
 そして、提示部に入り、若干の静寂があり、かの有名な第1主題が奏でられる。重厚な弦楽器の音色が美しく第1主題を奏でていく。テンポもやや遅く、美しく第1主題を奏でる音色は至高の美しさである。淡々としたテンポによって美しい音色が響き渡り、序奏部第2部のアルペン・ホルンのそのまま承継したような演奏である。その後、金管楽器が加わってもテンポは維持しており、抑えめであって耳障りとなるような箇所は一切ない。バルビローリの徹底した自然体はここまでブラームスの本質を引き出すことに司どる。再現部も、再びあの重厚な弦楽器の音色が美しく第1主題を奏でていく。いつ聴いても、木管楽器がフェード・アウトするときに、この印象的で美しい第1主題が登場する場面は感動する。ブラームスが推敲に推敲を重ねた緻密な音楽がそこにある。そして、コーダに入ると一気にバルビローリ特有の世界に持ち込まれる。序奏部でトロンボーンファゴットによって歌われていたコラール風主題が一気にテンポを落とすのである。以後、テンポをかなり落として、ブルックナーのような音楽的建造物を思わせるようなコーダになる。しかし、音色は自然体を一貫している。「これぞブラームスだ」と思わせるかのような、自然体ながらも重厚な音色を響かせて締め括る
 約20分近い重厚な第4楽章であった。
 一時期、この演奏をほぼ毎日聴いていたほどの愛聴盤である。ベームよりも自然体な演奏は、ブラームス好きにとって欠かせない一枚になるのではないだろうか。カラヤンのようなゴージャスな演奏ももちろん悪くはないが、このように自然体を首尾一貫する演奏も悪くはないだろう。

*1:交響曲第1番 (ブラームス) - Wikipedia

*2:宇野功芳『クラシックの名曲・名盤』(講談社、1989年)50頁

ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」を聴く

Introduction

 期末試験が終わり、1日中自分の時間が取れるようになった。しかし、やりたいことだらけであり、四六時中音楽のことについて考えるわけにもいかない。勉強しつつも、やはり音楽のことについて書きたくなるものだ
 そこで、今回は、ブルックナー交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」を取り上げることにした。久しぶりにブルックナーについての記事を書くことにしたブルックナーの作品は長大であり、宗教性も高く、なかなか短時間で書くことが難しい。今だからこそ、少しでも多くの記事が書ければいいかなと思っている。
 さて、このブルックナー交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」であるが、他の作品に比べて、わかりやすく、美しいことを理由にブルックナーの中でもかなり人気の作品であるといえよう。もっとも、筋金入りのブルックナーファンは、圧倒的に第5番や第8番を挙げることに違いないだろう。私もそのうちの一人である。
 また、この作品は、ブルックナー交響曲全体的に散見される特徴がたくさん織り込まれている。例えば、第1楽章冒頭の弱音で弦楽器のトレモロが鳴り響く原始霧、2連符+3連符のブルックナーリズムが挙げられよう。また、この作品は、第5番に引けを取らないほどの重厚感ある音色が鳴り響くのも魅力的である。
 なお、この作品は大きく改変されており、第1稿と第2稿とで大きく異なる。現在、もっとも多く演奏されているのは第2稿である。そして、もはや毎度お馴染みになろう、ノヴァーク版とハース版であるが、聴く分にはあまり大きな違いは見受けられない。もっとも、以下の点が大きな相違点となっている。

  • 第3楽章トリオ冒頭の管弦楽法(主旋律を演奏する楽器が違う)
  • 第4楽章最後(練習番号Z)で回想される第1楽章第1主題の管弦楽法(ノヴァーク版ではホルンが明確に主題を再現する。ハース版は複数の楽器群の組合せで主題が暗示される)

 第3楽章トリオはわかるにしても、第4楽章の練習番号Zは手許にスコアがないと確認できない。スコアを持ちながら聴くのも醍醐味の一つであると再確認される
 そして、ブルックナー交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」を聴く!(その1)」として、最初に取り上げる演奏は、クラウディオ・アバドウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏である。その理由として、アバドブルックナーはあまり、ブルックナー臭さがなく、入門に相応しい演奏であるからだと考えている。

ブルックナー交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」

ベルナルド・ハイティンクロンドン交響楽団

Coming Soon

クラウディオ・アバドウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

評価:8.5 演奏時間:約79分

第1楽章:Bewegt, Nicht Zu Schell
 冒頭部分。早速耳を澄ませないとよく聴こえないほどの最弱音による弦楽器のトレモロによって始まる。そして、第1主題が、ホルンの柔らかくて雄大な音色が響き渡り、薄暗く霧に覆われている中、ホルンとフルート等の木管楽器が加わって、少しずつ朝日が差し込む情景が浮かんでくる。大変美しい音楽である。アバドの長い指揮棒によって生み出される音楽はダイナミックで美しい音楽である。そして、全合奏によって奏でられるブルックナーリズムは、あまり力まず雄大で柔らかい音色が響き渡っている。第2主題は、落ち着いて弾むように軽快な音楽が繰り広げられている。テンポも標準的であり、音の強弱も自然で素晴らしい演奏である。壮大な第1主題とは対照的な音楽である。しかし、その後発展していき、豪快な第3主題が鳴り響くも、金管楽器は前面的に奏でられず、柔らかく調和された重厚な音色が響き渡る展開部に入ると、ソロ・パートが非常に大きくなり、緊張感が一気に増していく。再び序奏部のような弱音のトレモロ雄大なホルンの音色が戻ってくる。しかし、フルートの下降音階とオーボエの上昇音階が非常に美しい音色で奏でられており、もう一度幻想的な風景が思い起こされる。やがて盛り上がってき、やや暴力的な音色でブルックナー・リズムを何度も演奏され、非常にダイナミックな展開部を構築している。これぞ、これぞ、ブルックナーの魅力である!その後は、煌びやかなヴァイオリンのトレモロに加えて、トランペットが非常に輝かしい音色でコラール風なハーモニーを響かせている。どこまでも届いていきそうなほどの輝かしい音色は素晴らしい音色である。再現部第1主題も、ホルンの音色ともに、軽やかで美しいフルートが上下する。繰り返される冒頭部分の再現であるが、毎度思い浮かぶ情景が異なるのである。その後の全合奏も壮大な音色によってブルックナー・リズムが何度も何度も演奏されている一切力んだ様子もなく、自然体な音色であるにもかかわらず、壮大な音色が広がっていく、アバドの音楽作りに圧倒される。再現部第2主題も、軽快な音色と主に、多少厚みがかかった弦楽器の音色が美しい。その後の、再現部第3主題は、非常に迫力ある音色が広がっていき、どこまでも横に広がっていきそうな音色が響き渡るアバドのダイナミックさがブルックナーではこのように表現されるのかと思うと感銘を受ける。コーダでも、迫力ある音楽が繰り広げられており、ホルンが勇壮に冒頭部分の主題を繰り返し、迫力をもって締め括る
第2楽章: Andante Quasi Allegretto
 繊細な幕開け。第2楽章は色々な見解があるものの「A-B-A-B-A-Coda のロンド形式と捉えるのが妥当ではないかと思われる。何回か冒頭のチェロの主題が繰り返し使われるからである。
 主要主題の部分である主題は、チェロによる主題はやや哀愁漂う音色を響かせており、美しい。各々の楽器のソロパートに加えて、ピッツィカートで刻んでいく描写はブルックナーではよく見られる構造である。副主題の部分も、美しくも重厚感ある弦楽器に加えて、木管楽器の鳥の鳴き声を再現しているかのような優しい音色が印象的である。アバドの自然豊かなアプローチが冴え渡っていることがよくわかる。後半のクラリネット等の木管楽器の応答もまた繊細な響きで美しい。中間部分においては、クライマックスを形成するかのような盛り上がりを見せる。力強い弦楽器に加えて壮大なホルンの音色と低音が勇ましく奏であげるのだが、アバドの演奏は非常に力強く、非常に勇敢な演奏を展開しているベートーヴェン交響曲第3番第2楽章の中間部のような勇ましさである(尤も、本演奏は長調)。その後、再び主要主題が奏でられ、ソナタ形式では無いが再現部に位置付けられるものといえよう。コーダに入る前に、最後の主要主題部では大きなクライマックスが形成される。アバドのクライマックスは、中間部でも述べたが非常に迫力ある演奏なのである。しかし、カラヤンのようなガチガチの力感ではなく、自然豊かな音色と自然体として壮大に鳴り響いているのである。まさに、この曲のテーマである「ロマンティック」の表題にふさわしい内容であり、裏として、森林が描かれているのでは無いだろうか。コーダは繊細な響きを残して締める。
第3楽章:Scherzo & Trio
 俗に「狩のスケルツォとしてよく知られている。
 冒頭、ホルンとトランペットの勇ましいファンファーレが鳴り響き、Aを奏でる。ここでも金管楽器は自然な音色であるにも関わらず、自然体を貫いている。キビキビとした非常に勇ましい楽章である。その後、少し穏やかんで滑らかな旋律が鳴り響くが、その穏やかさ一瞬にすぎる。しかし、小刻みに音が上下するので、奏者としてはかなりの技術を要するのだろう。トリオ(B)は、冒頭フルートによって奏でられているので、ここでノヴァーク版であることが確認できるアバドのトリオは、あまりテンポを落とさずに、勇敢な主部を維持しているかのような印象を受ける。しかし、アバドらしい巧みなアゴーギクによって穏やかなトリオを彩っている
 そして、再びAを繰り返す。
第4楽章:Finale: Bewegt, Doch Nicht Zu Schnell
 機械的なリズムを起点に、弦楽器の波打つような演奏によって幕を開ける。そして、提示部において凄まじい重厚感の第1主題を奏でている。この第1主題の部分は重厚感ある音色が繰り返し登場し、ブルックナーの醍醐味である重厚感が何度も味わえる。アバドの第1楽章は第4楽章早々から凄まじい演奏であった。強烈である。第2主題は、第1主題とは対照的に落ち着いた雰囲気である。アバドは、しっかりとテンポを落として優しく、第2楽章のような優しく落ち着いた演奏を展開している。若干弾むような場面も非常に可愛らしい。第3主題は、第1主題のような強烈な演奏が戻ってくる。ここでもアバドは自然体を貫きながら非常に壮大で力強い重厚感ある音色を響かせている。この重厚感こそがブルックナーなのである。
 展開部に入ると、冒頭の雰囲気に戻ってくる。第2主題を回顧するかのような演奏だが、再びホルンが第1主題のコラールを奏で、その後に弦楽器がトゥッティで力強く奏でる。いつ聴いても壮観だ。そして、第3主題が登場する。コーダ前の非常に大きなクライマックスである。何度もブルックナー・リズムが繰り返され、金管楽器の重厚感ある大迫力の演奏が非常に素晴らしく、決して遅くないテンポがより一層明るさと、荘厳さを齎している。その後、第1主題の冒頭部分をもう一度繰り返されるのだが、その後の第1主題の再現もまた強烈な迫力である。なお、再現部は短め(第1主題と第2主題の再現のみ)。静まり返ると、弦楽器の3連符と木管楽器の第1主題冒頭部分を奏でる。緊張感が漂い、圧倒的なクライマックスへと導く。このじわじわくるクレッシェンドがたまらない。ここでも、アバドの知的なアプローチが光り、自然体を意識しながら重厚感ある音色を徐々に盛り上げている。そして、最高潮に達した時、凄まじい迫力さであり、身体に何かが走ったかのような壮大さに圧倒される。最後の最後の、締め括りも大変力強い、何もかも持ち去っていってしまうかのような終わり方にはもう体が動かない
 これはすごい。
 なお、朝比奈先生やギュンター・ヴァントといった本格的なブルックナー指揮者と比べると、ややブルックナーらしさが欠けている印象を受ける。十分な重厚さであるが、もっと厳格さ、荘厳さがあるのが本格的なブルックナーであるとと考えるのが自論である。
 しかし、あまりブルックナー臭さが無いにもかかわらず、ブルックナーの醍醐味である重厚感がしっかり演奏されている点を考慮すると、この演奏はブルックナー初心者にはおすすめの演奏なのでは無いかと思っている。
 したがって、評価の部分を「8.5」としてある。

ブルックナー:交響曲第4番

ブルックナー:交響曲第4番

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エリアフ・インバル:フランクフルト放送交響楽団(hr交響楽団

Coming Soon


ギュンター・ヴァント:ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団

Coming Soon


朝比奈隆NHK交響楽団

Coming Soon

更新日:令和4年10月3日

【読響】第250回日曜マチネーシリーズ in 東京芸術劇場

introduction

 今回は、【読響】第250回日曜マチネーシリーズ。そして、私の誕生日でもある。運よく私の誕生日の日にコンサートが行われているのである。昨年は、東京交響楽団であり、非常に素晴らしい演奏だった。
law-symphoniker.hatenablog.com
 そして、今年は読売日本交響楽団日本を代表する屈指のオーケストラであるから、どんな演奏になるのだろうと期待している。
 プログラムは、オール・ロシアであり名曲揃いというプログラムである。そして興味深いのが、ドイツ系の作品を得意とするセヴァスティアン・ヴァイグレによるロシア音楽はどのような音楽なのかである。店頭に販売しているロシア系の棚を見ても、かなりの数がロシア系の指揮者やオーケストラで占めている。カラヤンマゼールベルリン・フィルとの演奏の記録があるがあまり数は多くない。気になるところである。
 グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲は、明るく華やかな作品でありコンサートの幕開けとして相応しい作品である。もっとも、この作品といえば、エフゲニー・ムラヴィンスキ:レニングラードフィルハーモニー交響楽団の印象が強いので、ここまでの演奏が繰り広げられることを期待して良いものなのか…。

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 ラフマニノフパガニーニの主題による狂詩曲もこれもラフマニノフを代表する名曲である。圧倒的な美しさを奏でる第18変奏があまりにも有名であり、これももちろんのことながら個人的にはピアノが迫力ある低音が鳴り響く第10変奏、重厚な弦楽器が格好良い第13変奏が非常に好きなのである。アンコールは何かな?
 リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェヘラザード*1は、数々の楽器のソロ・パートが印象的な作品。冒頭のヴァイオリン・ソロの主題が何度も登場する。そして、2管編成といえども迫力ある作品である。
 本作品には物語となっており、あらすじは以下のようである。

 シャフリアール王(Shahryār)は彼の一番目の妻の不貞を発見した怒りから、妻と相手の奴隷の首をはねて殺害する。 女性不信となった王は、街の生娘を宮殿に呼び一夜を過ごしては、翌朝には処刑していた。側近の大臣が困り果てていたとき、大臣の娘のシェヘラザードは王の愚行をやめさせるため王との結婚を志願する。
 シェヘラザードは毎晩命がけで、王に興味深い物語を語る。そして物語が佳境に入った所で「続きはまた明日。」と話を打ち切る。
 王は新しい話を望んでシェヘラザードを生かし続け、千と一夜の物語を語り終える頃には二人の間には子どもが産まれていた。王は自分とシェヘラザードの間に子供が出来たことを喜び、シェヘラザードを正妻にする。こうしてシェヘラザードは王の悪習を終わらせた。
Wikipediaより)

 そして、バッド・エンドな物語なのである。
 ヴァイグレはどのような物語を形成するのだろうか。
yomikyo.or.jp

本日のプログラム

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲

 華麗なる曲で幕を開ける。ヴァイグレはややテンポ遅め(標準的と言えば標準的)で演奏されていた読響らしいゴージャスな金管楽器のファンファーレが素晴らしかった。そして、弦楽器の忙しなさもまたよし。
 なお、本曲について詳細な解説が見当たらなかったが一応ソナタ形式で説明できそうなのでソナタ形式によって綴ることにする。
 上記の通り、ヴァイグレはしっかりとしたテンポで進んでいたため、第1主題のヴァイオリンは非常に勇ましく壮大な音色を奏でていた。急がない、一つ一つが丁寧な印象を受けた。そして、チェロの滑らかな主題(第2主題)もまた素晴らしい音色であった。やや低音であるが甘美な音色が響いており、華麗なる提示部を形成した。
 展開部では、静寂な場面が多くなる。木管楽器と弦楽器のピツィカートの掛け合いがあるが、ヴァイグレのタクトは楽しそうに動いていた。木管楽器の音色も軽やかな音色を奏でていた。再現部入る前のティンパニも迫力ある音色が届いてきた。
 そして、再現部。第1主題の弦楽器がより一層に輝いた音色が聴こえてきた。そして、再現部第2主題ではチェロが1オクターブ高い音色を響かせるのだが、より甘美な音色が広がり、それがヴァイオリンに受け継がれると美しく、壮大な音楽が広がった
 そして、コーダ。金管楽器が主役となり、高らかな音色を響かせるトランペットと迫力あるトロンボーンが冴え渡った
 堂々たる音楽で締めくくった。
 大変素晴らしい幕開けである。

ラフマニノフパガニーニの主題による狂詩曲

 主題を含め、25部に分かれているが、流石に全部はかけないので、上記私の好きなポイントをピックアップして記すことにする。
 なんと言っても、序奏部が肝心。読響の力強い弦楽器のサウンドともに、コレスニコフの力強い打鍵が響き渡るこれぞ、これぞラフマニノフだ!
 主部では弦楽器の音色はもちろんのこと、技巧ながらも美しく流暢な演奏は聴いていて・見ていてさすがの一言。手が大きくて有名なラフマニノフを弾きこなすのであるから相当な才能の持ち主である。
 第8変奏から雰囲気が少し異なる。第10変奏では、冒頭ピアノの強い低音がとても格好良いのであるが、コレスニコフは私の期待を裏切らずに力強い低音を鳴らしていた。どこか、ホロヴィッツのような重厚さが垣間見えたのは私だけであろうか。その後の爆発的な金管楽器とシンバルは、トランペットが冴えにさえており、鋭く力強い音色を響かせてダイナミックな演奏を繰り広げた
 第11変奏からまた雰囲気が一変する。第13変奏では低音の弦楽器のトゥティが非常に格好良く、重厚感のある音色を響かせていた。その後の木管楽器のトリルも耳が痛くなく、自然な音色を響かせていた。
 第18変奏これは素晴らしかった!第18変奏に入った途端にホール内の空気がガラッと変わったのである。コレスニコフの甘美で美しいピアノの音色が響き渡った。弦楽器が加わると非常に美しくなり、読響の演奏者も熱が入っていたことがよくわかった。頂点部に達すると泉が湧き出るような美しさと素晴らしさが溢れ出ていたこんな美しい作品をこのような演奏で本当に聴いて良いものなのか。最後の第18変奏が終わるまで、コレスニコフの素晴らしピアノが響いていた。
 そして、最後の第24変奏では、トランペットやトロンボーンの強烈な音色を響かせシンバルも打たれながら圧倒的なフィナーレを形成し、急激に静かに締めくくった。
 そして、鳴り止まぬ拍手に包まれた!本当に素晴らしいラフマニノフであった。

Encore

ルイ・クープラン: ボーアンの手書き譜からの舞曲集より「サラバンドイ短調
 てっきり、もう一度第18変奏を演奏してくれるかな…と思っていたが違った。
 私はクープランピアノ曲は全くと言って良いほど知らないので、アンコールの曲も知らなかった。しかし、コレスニコフは繊細で甘美な音色を1音1音丁寧に打ち鳴らしていたラフマニノフでは豪快な音色を響かせいていたが、アンコールでは繊細で緻密な音楽作りが感じられた
youtu.be
ルイ・クープラン:ボーアンの手書き譜からの舞曲集(パヴェル・コレスニコフ)www.tokyo-m-plus.co.jp

リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェヘラザード」

第1楽章《海とシンドバッドの船》(Largo e maestoso—Allegro non troppo)

 力強いユニゾンでシャリアール王の主題を読響らしい迫力ある音色を奏でる。強烈な音色ではなく、柔らかいがどこか押し寄せるトロンボーンの音色が印象的だった。その後、一旦落ち着いてフルート等の木管楽器が奏でるのだが、繊細で美しい響きを奏でていた。
 そして、美しいハープの音色が十分に響いており、ヴァイオリン・ソロのパートであるシェヘラザードの主題を林先生が繊細で美しいヴァイオリンの音色を響かせながら奏でていた。ホールいっぱいに林先生のヴァイオリンが響き渡った。
 主部に入る。チェロ等の低弦楽器が海を再現する。重厚な音色を響かせる海は大海原を表現するがどこか不安な雰囲気もあった。ヴァイオリンが何度もシャリアール王の主題を繰り返す。そして徐々に盛り上がっていくにつれ、読響のヴァイオリンの音色も熱が入るヴァイグレは遅めのテンポで壮大に力強く演奏されており、私は遅めのテンポで演奏される方が好みであるので感動した。今日の読響サウンドは素晴らしかった。
 その後、何度か林先生のソロ・パートがあるのだが、冒頭同様に繊細で美しい音色を響かせた。その後、シャリアール王の主題が再び繰り返されるのだが金管楽器も加わって大迫力の演奏が展開されていった。トランペットが加わると一気にかき消されるかのような大迫力圧倒された壮麗なトランペットの音色とともに、重厚感あふれるトロンボーン、そして負けじと唸る弦楽器、全てが調和された何か震えるような凄まじい迫力に押された。ヴァイレと読響の相乗効果はここまで恐ろしいものを発生させるのか。

第2楽章《カランダール王子の物語》(Lento—Andantino—Allegro molto—Con moto)

 シェヘラザードの主題で始まる。何度も繰り返されるが林先生の音色は美しかった。そして、ファゴットがカレンダー王の主題を奏で、第2楽章はこの主題が主に占める。ファゴットの音色も甘美な音色をして素晴らしかった。そして、弦楽器も加わって賑やかになる。
 断片的に不穏な雰囲気へ変わる。トロンボーンのソロがあるのだが、ヴァイグレはゲルギエフのように遅く、ゆったりと演奏されていた。これには驚いた。カラヤンやプレヴィンといったヨーロッパ系指揮者はサクッと演奏する傾向にあると思っているが、ドイツ系指揮者であるヴァイグレがロシア系の指揮者のように演奏したのだ。もっとも、トロンボーンの伸びやかな音色は素晴らしく、雄大で迫力ある重厚感ある音色を響かせた
 その後、快速的なテンポで弦楽器のピツィカートに乗せて恍惚となるようなクラリネットの音色が非常に印象的だった。そして、断片的にトランペットの音色が響き渡った。
 第2楽章終盤では弦楽器と木管楽器が力強くカレンダー王の主題を奏でており、非常に格好良い演奏を繰り広げており、改めてこの曲の素晴らしさを再確認した
 最後は燃え盛るようにして締めくくった。

第3楽章《若い王子と王女》(Andantino quasi allegretto—Pochissimo più mosso—Come prima—Pochissimo più animato)

 緩徐楽章に位置付けられよう。そして、形式は三部形式であると思われる。
 主部の弦楽器は非常に滑らかで美しい音色を響かせていた。個人的に読響の印象は迫力ある金管楽器であるが、弦楽器の音色も美しいのだ。ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバス全ての音色が美しく滑らかな音色を奏でていた
 中間部では、クラリネット木管楽器が軽快な主題を奏で、スネアドラムとトライアングルが可愛らしく、華やかさを齎す。第3楽章の中間部で打楽器等のパーカッションが活躍する。少し長い中間部であるが、後半になるとトランペットが登場したりする。
 再び、主部に戻る。そして、第1楽章・第2楽章で登場したシェヘラザードの主題が登場する。ここでも林先生の繊細で美しい音色を響かせると共に、技巧が光る演奏が素晴らしく、それに沿う様にオーボエ等の木管楽器が印象的だった。そして、頂点部を形成するのがら、これは大迫力!素晴らしかった
 そして、穏やかな雰囲気で静かに第3楽章を閉じる。

第4楽章《バグダッドの祭り。海。船は青銅の騎士のある岩で難破。終曲》(Allegro molto—Vivo—Allegro non troppo maestoso)

 シャリアール王の主題がテンポ違いで示される。そして、やや変形されたシェヘラザードの主題が登場する。そして、激しく冒頭のシャリアール王の主題が奏でられる。なかなかの迫力だった。
 やがて主部となり、バグダッドの「祭り」となる。フルートが軽快な音色を響かせ、弦楽器、金管楽器が加わって徐々に熱くなっていく。シンバル等が加わって迫力が増していく。第3楽章主部の回想では穏やかで美しく演奏されるが、テンポははやく第3楽章の様な雰囲気はない。シンバルや速いテンポ、迫力ある金管楽器の音色が非常に印象的だった。その後、チェロ等によるシェヘラザードの主題が奏でられるのだが、荒々しく勇ましさが感じられた。頂点部に向かってシンバル等のパーカッションが加わって少しずつ燃え盛ってく。
 その後頂点部を形成した後に「海」に入る。トロンボーンが強烈な音色でシャリアール王の主題を勇壮に奏でるトランペットもハリのある音色を奏でており、荒れ狂う波に呑まれる船の難破の場面を十分に再現していた。この時、相当の音量が出ていたのは確かであるシンバルとタムタムが撃たれた時は全身に何か打たれた様な痺れが伝わった
 そして、再びシェヘラザードの主題が奏でられる。林先生最後のソロ・パートである。ヴァイオリンの中でも最高音に近い音色を出すのだが、度切れることのない繊細で美しい音色がホール中に響き渡った。その背景にはチェロ等の弦楽器が厳かにシャリアール王の主題を奏でている。
 そして、最後は消えゆくように本曲を閉じた。ヴァイグレの指揮棒はなかなか降りず、約5秒近く沈黙が続いていたのだが、フラ拍等は全くなかった。最後の最後まで、繊細な音楽は続いていたのだ

総括

 冒頭でも述べたように、この日は私の24歳の誕生日なのである。そのような特別な日に素晴らしい音楽が聴けたことは感無量である
 さて、久しぶりの読売日本交響楽団であったが大変素晴らしい演奏であった。強烈な金管楽器が聞けたことはこの上ない喜びである。そして、東京芸術劇場も今回で2回目。やはり、良いホールなのだろう。前回の日本フィルがあまり良い演奏ではなかったため、オケが悪いのかホールが悪いのかわからなかったのだが、今回でハッキリした。
 また東京芸術劇場で演奏を聴こう!!
 忘れられない思い出ができてよかった。その後も楽しいことがあった。とても幸せな誕生日を過ごした。
 それよりも、鼻詰まりや鼻水をなんとかしたい…(花粉症か)

前回のコンサート

law-symphoniker.hatenablog.com

*1:ポスターでは「シェエラザード」と表記されいるが、私自身はこの作品を「シェヘラザード」と呼称しているので、そのように表記した。表記が異なっていても、作品内容は同様である。

【都響】プロムナードコンサートNo.398 in サントリーホール

introduction

 今回は、都響】プロムナードコンサートNo.398。学部生時代にはよく東京都交響楽団を聴きに行ったのだがここ最近まるっきり聴きに行っていなかった。いつ以来だろう?ということで調べたら、2019年12月24日「都響スペシャル『第九』」(指揮:レオシュ・スワロフスキー)以来のことだそうだ。2年8ヶ月ぶりとなる都響である。とても楽しみな気持ちでいっぱいであるし、やや懐かしい気持ちでいっぱいである。そして、指揮者は、東京都交響楽団終身名誉指揮者小泉和裕先生。これはもう素晴らしい。演奏開始前から素晴らしい演奏が期待できる。
 さて、プログラムは、ドイツのベートヴェンイタリアのレスピーギという構成になっている。大体のプログラムは、ドイツ系やロシア系、アメリカ系とその地の作曲家で構成するものが多いが、これはまた面白い。特に、小泉先生の指揮によるベートーヴェン交響曲第6番へ長調『田園』はかなり豪華な気がする。どのような田園風景が広がるのだろう。とても楽しみである。なお、このベートーヴェン交響曲第6番へ長調『田園』について、非詳細な解説を執筆したので、興味ある方は一読されたい。
law-symphoniker.hatenablog.com
 そして、目玉は最後のレスピーギ交響詩「ローマの松」だろう。この曲はマーラーに匹敵するような豪華で迫力あるフィナーレが待っているのである。渾身の小泉先生に基づく圧倒的フィナーレを期待している。ちなみに、レスピーギはかなり緻密なオーケストレーションを得意としているのだが、指揮者によってはイマイチなフィナーレがある。したがって、どの指揮者がやっても素晴らしいフィナーレになるとは限らないというのが私見である。小泉先生は数々の演奏を凌駕するのではないかという大きな期待を抱いている
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本日のプログラム

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ベートーヴェン交響曲第6番へ長調『田園』

第1楽章:Allegro Ma Non Troppo

 全体を通して標準的なテンポ。何よりも、久しぶりの都響サウンドを聴いたのだが、驚くほど鮮麗な弦楽器の音色に恍惚となった。そして、第1主題は、師匠カラヤンの演奏とはやや対照的に自然豊かな田園風景を描くような明るく、美しい音色を奏でていた。鮮麗な弦楽器が鳴り響く第1主題は非常に印象的だった。続いて、第2主題は、C-Durでやや重厚感のある音色を奏でながら滑らかに演奏されていた。それを彩るかのように木管楽器の爽やかな音色も非常に印象的。
 そして、師匠カラヤン同様に繰り返しなし。そのまま展開部へ。第1主題を断片的に繰り返す展開部なのであるが、今回は弦楽器がよく鳴っていた印象を受ける。キレのが要求される部分と、滑らかな演奏が要求される部分がある展開部であるが、すべて自然に演奏されていた。力強くも滑らかに指揮をする小泉先生には貫禄が溢れていた。
 再現部では、提示部第1主題ではf(フォルテ)であるのに対して、再現部ではff(フォルテッシモ)になっていることがよくわかる演奏であった。よりいっそ明るさを増していた。そして、第2主題も明るさを増し、力強さが加わった演奏であった
 コーダでは、小泉先生の渾身の指揮法に乗って弦楽器がうねるうねる。そして、徐々に音量を落として第2楽章へ。

第2楽章:Andante Molto Mosso

 小泉先生はカラヤンほどの快速的テンポではなく、自然体でこの曲に臨んでいることが推測できた
 提示部はうねるようなヴァイオリンとチェロの音色が柔らかくし、そして第1主題を清らかで美しいヴァイオリンが彩っていた。その後の、ファゴットとチェロの低音による第2主題も非常に穏やかであった。小泉先生の大らかで包み込むような指揮法から生み出される音楽は素晴らしい音を引き出す。
 展開部では、弦楽器よりも木管楽器が主役となる。弦楽器と同様に木管楽器美しく高らかな音色で鳥の鳴き声を再現するかのようであった。特に、フルートとクラリネットの音色が素晴らしかったのが印象的
 再現部も提示部同様に自然体で落ち着いた音色を響かせていた。
 そして、コーダのフルート・オーボエ・クライネットによる鳥の囀りの再現は、さすが注目すべきところであるから静寂に包まれた。そのなか、見事に鳥の囀りを再現していたのが本当に素晴らしかった

第3楽章:Allegro

 穏やかな第2楽章から一変して、第1楽章のような雰囲気に戻る。冒頭は弦楽器と木管楽器による合奏になるが、第1楽章同様に美しい音色が響き渡った。そして、第3楽章から金管楽器が徐々に活躍していくのだが、相変わらず堂々としたホルンの音色が響き渡った。その後、ホルンは美しく雄大な音色も奏でていた。
 トリオでは、今回頑張っている弦楽器であるがその音量に負けずに高らかなにフルートが鳴り響いており、ハリのあるトランペットの音色も健在しており、各々の楽器の音色が十分に響き渡っていたのが本当に素晴らしかった
 そして驚いたのが、第3楽章も繰り返さなかった。ここまでカラヤンの音楽を継承するとは思わなかった(本当に繰り返さなかった)。
 そして、一気に第4楽章へ。

第4楽章:Allegro

 嵐が来る。ここで小泉先生の指揮も慎重かつ緊張感が伝わった
 弦楽器の音色も非常に繊細な響きをしていた。そして、随時、G音が鳴り響くのだがその迫力も素晴らしかった。そして、頂点部になるとピッコロの音色が響き渡る部分がある。大体は他の楽器にかき消されてしまうのだが、今回はしっかりとピッコロの音色が響き渡っており、驚きと共に圧倒された。やはりそうでなければならない。
 そして、圧倒的な頂点部を形成した後、一気に落ち着いた雰囲気となり、第5楽章へ入る準備へ移った。
 あれだけ緊張感のあった弦楽器が今度は美しく、木管楽器も美しく奏でられていた。

第5楽章:Allegretto

 そして、クラリネットとホルンが穏やかで柔らかい音色で第5楽章をあける。提示部は、第1楽章と同様に、ヴァイオリンが鮮麗な音色で第1主題を奏でていく。そして、第2ヴァイオリン→ホルンと第1主題を奏でていくのだが、ヴァイオリンのトレモロと共に雄大なホルンの音色が響き渡った経過句のチェロとヴァイオリンの音色も重厚感のある音色を響かせながら素晴らしい音色を奏でていた。第2主題のハ長調のクレッシェンドも自然な強弱で自然体を貫いていた。
 展開部に入ると、第1主題が主に扱われるが、鮮麗な音色を響かせる弦楽器と自然体で穏やかな音色を奏でる木管楽器が非常に印象的だった
 再現部は変則的な第1主題が奏でられる。小泉先生の指揮では非常にはっきりとヴァイオリンの音色がはっきり聴こえ、滑らかな音色ながら非常に美しく、壮大なハーモニーが響き渡った。素晴らしい時間だった。その後の経過句も重厚感ある音色が響き渡っていた。
 そして、長いコーダに入る。基本的に静寂な雰囲気であるが頂点部が2度ある。そこでは、鮮麗な音色を響かせる弦楽器のトレモロが溢れんばかりに壮大に奏でられており、その中でチェロ等の低弦楽器が重厚感ある音色を響かせていた
 その後も美しい音楽が続いており、優しく終了した。
クレッシェンドも自然な強弱である。

レスピーギ交響詩「ローマの噴水」

第1部:夜明けのジュリアの谷の噴水 - La Fontane Di Valle Giulia All'albe

 ヴァイオリンの繊細な弦楽器の音色が響く中、穏やかで美しい木管楽器オーボエ)が奏でられる。まさに「夜明け」を再現しているようだ。それにしても、久しぶりの都響だったが、木管楽器がより一層美しい音色が奏でられているようになっていたように思う。この不思議が主題が様々な楽器で繰り返されるのだが、ピッコロの音色も耳が痛くならない音色で素晴らしかった
 そして、この部はオーボエが大活躍する。

第2部:朝のトリトンの噴水 - La Fontane Di Tritone Al Mattino

 第2部は強烈なホルンのファンファーレで幕を開ける。朝にしてはやや荒々しい雰囲気もしないまでもないが…。
 それにしても、相変わらずの堂々たる都響のホルンであった。やや行進曲的で勇ましい雰囲気のある第2部である。木管楽器の軽快な音色が非常に印象的だった。後半部になると徐々に盛り上がっていき、シンバルが撃たれるのだが、個人的に久しぶりのシンバルのような気がする。

第3部:真昼のトレヴィの泉 - La Fontane Di Trevi Al Meriggio

 そして、4部の中で最も頂点部を形成する第3部。小泉先生の堂々たる指揮から生み出される音は凄まじいものであり、トランペットの音色が非常に迫力のある音色が響き渡っていた。唸る弦楽器が、大海原のような壮大さであり、圧倒的なスケールの大きさに圧倒された
 シンバルのクレッシェンドが非常に素晴らしかった。

第4部:黄昏のメディチ荘の噴水 -La Fontane Di Villa Medici Al Tramonto

 第3部から一気に落ち着いた雰囲気へ一変。第4部ではハープとチェレスタの音色が良く聴こえてくる。繊細な音楽となるのだが、木管楽器の穏やかさが本当に素晴らしい音色であり、フルートも非常に美しかった
 そして、静寂な中で弦楽器がメインとなる。繊細な音色で響き渡るヴァイオリンの音色は非常に神秘的だった
 黄昏のように静かに終わる。

レスピーギ交響詩「ローマの松」

第1部:ボルゲーゼ荘の松 - I pini di Villa Borghese

 煌びやかなオーケストレーションによって幕を開ける。トランペット、木管楽器、そして数々のパーカッションの音色がそれぞれ輝いているように聴こえた。第1部が「ローマの松」の中で最も明るく楽しい雰囲気の曲である。
 木管楽器が冴え渡っており、見事な第1部を彩った

第2部:カタコンバ付近の松 - Pini presso una catacomba

 明るい第1部とは対照的。緊張感のある中、ホルンが低音で主題を奏でいった。重々しい主題を奏でるなか、フルートとファゴットがその緊張を和らげるかのように穏やかな音色を奏でいてた。その後、トランペットのソロ・パートがある。どうやって演奏するのか?と思っていたが、本当に舞台裏で演奏されており、演奏者が出入りするステージの扉が開いて、そこから演奏されていた。出だしが怪しかったが、高音も非常に伸びやかな音色が響き渡っていた。
 その後、頂点部に入るのだが、じわじわとくる低音の主題がたまらない。頂点に達すると、圧倒的な金管楽器よりも上回るほどの唸りまくる弦楽器の主題の音色に驚愕トロンボーンの音色がかき消され気味だった。しかし、その後のホルンの雄大な音色はさすがのひと言であり、都響らしいサウンドが鳴り響いていた

第3部:ジャニコロの松 - I pini del Gianicolo

 そして、ピアノが美しい音色を響かせた後、美しいクラリネットのソロ・パートとなる。今日の都響木管楽器が本当に素晴らしかった。弦楽器ももちろんだが、甘美な音色が響き渡り、本当に美しい音色であり、第3部ではこれが聴きたかったのである。
 途中弦楽器のソロ・パートがあるのだが、コンサートマスターの矢部先生の美しい音色が際立っていた。そして、厚みのある美しい弦楽器が非常に印象的。頂点部の弦楽器のハーモニーはまさに、「美音のシャワーを浴びる」という表現が相応しいであろう
 頂点部が過ぎると、冒頭の美しいクラリネットのソロ・パートとなる。そこで、「夜鶯の鳴き声」が聴こえる箇所になるのだが、2階席の方から聴こえた気がするN響の時はステージ上に蓄音機があったのだが、今回はそれがなかったのでどこから演奏されるのかわからなかった。この「夜鶯の鳴き声」が流れた時、ステージの照明が少し明るくなったような気がするのは気のせいか

第4部:アッピア街道の松 - I pini della Via Appia

 そして、重々しい行進が始まる。チェロとコントラバスによる低弦楽器がリズムを刻んていく上で、木管楽器が主題を奏でる。いつ聴いてもワクワクするもんだ。(おそらく、コーラングレか)のパートが終了したら、いよいよクライマックスに入る。ホルンが低音ながらに主題を奏で、その後のトランペットはバンダから奏でられており、ハリのある音色が届いた。2回目のトランペットも反対側の場所からバンダが奏でられいた。
 そして、圧倒的なフィナーレ!!小泉先生の渾身の指揮によって生み出される音は数々の演奏を凌駕するほどの圧倒的な音色が響き渡る。そして、都響サウンドもいえる、強烈な金管楽器が鳴り響いておりハリのあるトランペットの音色、金管楽器全ての楽器の音色が響き渡っていた。小泉先生の堂々たる指揮も凄まじいものだった。パーカッションも素晴らしく、バスドラムが徐々に強く打たれるのも何か凄まじいものが襲いかかってくるようなものであった
 小泉先生の圧倒的な演奏によって締め括った。本当に素晴らしかった。

総括

 上記の通り、私にとって都響2年8ヶ月ぶりとなる都響である。そして、小泉先生だったせいかわからないが、かつて知っていた都響とはやや異なる音色が響き渡っていた。大迫力のサウンド(今回ももちろん迫力満点)に加え、より格式高い音色になっていたように思う。そして、弦楽器と木管楽器の音色がさらに磨かれており、美しい音色が広がっていた
 何よりも、個人的に東京都交響楽団終身名誉指揮者小泉和裕先生の式による、ベートーヴェン交響曲を聴くことができたことが嬉しい。なによりも、小泉先生でベートーヴェン交響曲を聴きたかったのである。さらに、大迫力の演奏に惹かれて好きになったレスピーギ交響詩「ローマの松」も、一度生で聴いてみたかったのである。それを小泉先生の指揮で聴けるのだから私にとってこの上ないほどのプログラムであり、大満足であった。
 以下、東京都交響楽団の公式インスタ・twitterから本日の演奏等について埋め込んでおく。

 本当に素晴らしいコンサートだった。小泉先生これからもお元気で。

前回のコンサート

law-symphoniker.hatenablog.com

青春18きっぷの旅(第2弾)

Introduction

 さてさて、青春18きっぷの旅(第2弾)といこう。
 第1弾では、東北の旅を綴った
law-symphoniker.hatenablog.com
 第2弾は、モグラ駅として有名な土合駅へ。令和4年9日10日が有効期限であるため、今回は2人で行った。したがって、1日で2回分の使用となる。
 ※9月3日に行ったことから、下記の時刻等は土休日ダイヤであることに注意されたい。

東京→高崎

3922E 快速アーバン:東京(9:21)→高崎(11:13)

Wikipediaより拝借)
 乗車車両は、E233系3000番台。なぜだろう、個人的には、E231系1000番台(近郊タイプ)より、E233系3000番台が来るとテンションが上がる。やはり、静かな点だろうか。
 もっとも、E231系1000番台の爆走音も好きである。
 この、快速アーバンは、高崎線内の快速列車であり、湘南新宿ライン等の「快速・特別快速」とはやや異なる。北本駅が停車するか否かが異なり、快速アーバンは、北本駅を通過する。そして、この乗車した列車は、小田原(7:55発)→高崎(11:13着)というかなりの長距離を走る列車である。
 そして、高崎到着後、下記の上越線に乗車するまで時間があったため、高崎駅内にあるフードコートに入り、「ラッキー食堂 ぐんま軒 」にて、モツ煮定食を食べた。非常に美味しかったので、オススメ。
tabelog.com

高崎→水上

733M 普通水上行き:高崎(12:02)→水上(13:08)

 これより上越線に入る。高崎以北のローカル線は、211系がまだ走行している。乗車車両は211系3000番台。お昼ご飯を食べた後ということもあり、途中よく寝ていた記憶がある。
 群馬総社を過ぎると、各駅の所要時間が5分〜7分弱かかり、駅間の間隔があくため、なかなか次の駅が遠い。終点の水上に着く頃はかなり眠たかった。

水上→土合

1739M 普通長岡行き:水上(13:40)→土合(13:48)

 群馬県新潟県の県境である清水トンネル内に向かう。乗車車両は新型車両のE129系。終点の長岡まで走行する。
 この区間は電車の本数が少なく、この13:40を逃すと、17:40まで電車がない。時刻表をよく確認した上で乗車しなければならない。
 そして、土合駅に着く。

土合駅


 土合駅に到着!
 到着した途端、寒い高原にいるかのような寒気に放り出されたような感覚になるほど寒い土合駅の一つ手前の湯檜曽駅も下り方面のみ、トンネル内に駅がある。

 土合駅のホームは以下のような感じ。
 下り方面(土樽・越後湯沢・長岡)

 上り方面(水上・高崎・上野)

 なんと言っても、土合駅といえばこの長い長い長い階段である。

 頂上まで、462段の階段がある。のらくろもしっかり頂上を見ている。

100段目


200段目



300段目


400段目


462段目


 徐々に頂上が大きくなり、徐々にホームが遠下がって見えてくる。非常に壮観であった。

 462段目を登り終えると、改札方面に向かう途中に時代を感じる通路があった。この下は、国道291号線が通っている。

土合駅駅舎
 改修工事のため全体を見ることはできず…。

 結構車で観光する方が多かったようで。

土合→水上

1736M 普通水上行き:土合(15:34)→水上(15:48)
 目的地に達成したので、そのまま帰路へ。乗車車両は新型車両のE129系
 上り方面の土合駅は、地上にある。

 ホームの端にはかつては線路があったであろうと推測できる跡があり、昔は1面2線のホームであったことがここで窺える

水上→高崎

744M 普通高崎行き:水上(15:53)→高崎(16:56)
 乗車車両は211系3000番台。乗車した当日、高崎で花火大会が開催される日であったためか、高崎へ近づくにつれて多くの高校生が乗車してきて満員電車の状態だった。その夜は、高崎駅で入場規制が行われたとか。

高崎→横浜

2853Y (湘南新宿ライン)快速平塚行き:高崎(17:12)→横浜(19:41 

Wikipediaより拝借)
 湘南新宿ラインで横浜へ。乗車車両は、E231系1000番台。高崎から横浜と長距離を移動するため、グリーン車に乗って横浜へ移動。
 ホリデーだと、グリーン車1000円→800円となり、長距離になればなるほどお得になるのが、グリーン車の魅力である。
 途中籠原で、15両編成として運転。
 横浜到着からは、みなとみらい線に乗ってみなとみらいへ。


 何度かこの「みなとみらい」に訪れたことがあるのだが、いつきても夜景が美しく、近未来的で私が好きな場所でもある。
 みなとみらいから横浜駅まで歩いて、青春18きっぷの旅(第2弾)は終了。

 近日中に、青春18きっぷの旅(最終回)も投稿する予定である。お楽しみに。

青春18きっぷの旅(第1弾)

introduction

 いつもクラシック音楽のこと書いているが、ちょっと全く違うことを書いてみることにした。
 実は、クラシック音楽以外にもたくさんの趣味を持っており、鉄道に乗ることも好きである(通称乗り鉄。そして、春学期の成績で再試験が一度もなかったので、少し遊べる時間があったので青春18きっぷを使って旅に出ることにしたのだ。ずっと青春18きっぷを使ってどこかへ出かけようと思っていたのだが、やっと行く機会を設けることができたのだ。
 早速どこかへ出かけようと考えていたのだが、未だかつて東北行ったことがないので東北へ行こうとした。そして、時刻表を購入して眺めていたところ、東北本線に目がついたので東北本線に乗る旅を企てたのだ。

1日目

上野→宇都宮

527M 普通宇都宮行き:上野(6:08)→宇都宮(7:51)


 私の自宅の最寄り駅からすると、上野発はこの6時8分発。乗車車両は、E231系1000番台。そういえば、ドア上の行き先表示が1段しかなかった車両であったため、製造年を確認したら、平成14年製造とのこと。もう20歳を超えた車両に乗車して宇都宮まで向かった。車両編成は、上野から終点宇都宮まで10両編成だった。
 なお、東北本線(以下、「宇都宮線」という)上野発は、5時10分発(普通宇都宮行き)。
 下り方面ということもあって、ぎゅうぎゅう詰めになるような満員電車とはならなかったが、通勤通学の方でたくさんだった。

宇都宮→黒磯

637M 普通黒磯行き:宇都宮(8:02)→黒磯(8:58)




 宇都宮は以前行ったことあるが、宇都宮より北には行ったことがない。この時点で、未知の領域に入る。乗車車両は、E131系600番台2021年に導入された最新型の車両である。
 少し前までは、宇都宮から黒磯まで直通する運用が多くあったが、宇都宮〜黒磯間を分離させる目的で今年のダイヤ改正で消滅した。一時期、上野東京ラインが開通し、熱海発黒磯行きの普通列車があったことはもう昔の話。

黒磯→新白河

4129M 普通新白河行き:黒磯(9:08)→新白河(9:32)



 ここからは交流区間となり、乗車車両もE531系3000番台が運用に入っている。この車両は、交流区間も直流区間も両方走れる交直流列車であり、常磐線でも運用されている。
 黒磯〜新白河間の間にある豊原ー白坂栃木県と福島県の境である。
 そして、新白河に到着し、のらくろと私は真紅の大優勝旗と共に、白河の関を超えたわけである。

新白河→郡山

2129M 普通郡山行き:新白河(9:52)→郡山(10:31)


 新白河では、電車は約1時間に一本しかない。しかし、接続がしっかりとしていたので約30分間待って郡山行きに乗ることができた。
 新白河〜郡山は約40分であったがさほど遠い印象は受けなかった。乗車車両は、701系4両編成。東北地方では、この車両にたくさんお世話になることになる。

郡山→福島

1131M 普通福島行き:郡山(10:41)→福島(11:26)


 乗り継いで、福島行きに乗車。使用車両は、701系4両編成。701系ロングシートであるので、そろそろキツくなってくる。
 福島から山形へ山形線に乗って山形へ行き、そこから仙山線に乗って仙台に行かれるのだが、東北本線に乗って仙台へ向かう。

福島→白石

1177M 普通白石行き:福島(11:40)→白石(12:15)
 福島久しぶりのワンマン列車だった。「白石」は「しらいし」ではなく「しろいし」と読む。乗車車両は、701系2両編成。
 そこそこの乗客数が乗っており、多くの人が終点まで同じだった。

白石→仙台

445M 普通仙台行き:白石(12:19)→仙台(13:08)
 白石から仙台行きに乗車。乗車車両は、E721系0番台4両編成。

E721系0番台(Wikipediaより拝借)

 ここで、はじめてボックスシートに乗ることができた。福島県内は全てクロスシートであったため、しんどい状況だった。


 そして、仙台に到着!!!東北を代表する駅ということもあり、かなり大きい駅だった。のらくろもご満悦!
 仙台駅で途中下車をし、「牛タン」を食べに仙台駅構内にある牛タン通りへ




 入ったお店は「伊達の牛たん本舗」。頂いたのは、牛タン定食。味は、塩味・味噌味等選べるのだが、やや迷った挙句、「塩味」を注文!多分正解だったと思われる。
 以前「牛タン弁当」を食べたことがあるのだが、固いという印象があり、ややマイナス的な印象があったが、今回のでその印象は完全に払拭された非常に柔らかく、お肉の旨味が口の中に広がり、自然と口角が上がるような美味しさであった。一部筋があるところは止むを得ないが、噛むたびに美味しさが湧き出るようなそんな感覚だった。付け合わせの漬物のうち、南蛮味噌漬けがかなりの辛さに驚いた。あまり辛いのは得意ではなかったが、とても良いアクセントになった。テールスープもネギが良いアクセントであり、幸福感に包まれた。
 なお、定食注文の場合、ご飯のおかわりが自由というのも非常に大きなポイント(もちろん、お代わりした)
お店→tabelog.com

仙台→松島海岸

1421S 普通石巻行き:仙台(14:29)→松島海岸(15:09)

 仙台で美味しい牛タンをご馳走になった後、松島へ向かうことにした。そこで、仙石線に乗車し、松島海岸駅へ。乗車車両は、205系3100番台4両編成。205系は、あの山手線や南武線を走っていたお下がりであり、東京の顔となった車両(なおかつ、国鉄車)が未だに仙石線で現役で走っているのはどこか感慨深いところがある。どこか懐かしい走行音がした
 途中緊急停車があったものの、30分ほどで松島海岸駅へ到着。
 





 のらくろが松島の様子をご案内。twitterのフォロワーさんから「ずんだシェイク」をお薦めされたので購入。あまり豆はそこまで得意ではなかったが、非常に飲みやすく、適度に豆の味が感じられた非常に美味しかったので松島のリベンジの時にもう一度飲むことにしたいと思う。
 生憎、行った当初の松島は、霧が凄くて遠くの景色があまり見えなかった。


 途中、瑞巌寺に参拝しに行った。御朱印も私の一つの趣味であり、近辺に神社仏閣があると参拝するのが旅行した際の一つの慣例行事と化している。長い長い参道が印象的。

 そして、御朱印も頂いてきた。
www.zuiganji.or.jp

高城町石巻

1621S 普通石巻行き:高城町(17:09)→石巻(17:49)





 JR東北本線松島駅から乗車しようと思ったが、本数の問題もあって高城町へ向かうことにした。乗車車両は、仙石線であるため、205系3100番台4両編成。40分という乗車時間であるにも関わらず、だいぶ遠い印象を受けた。下校という時間もあり、多くの高校生が乗車した(多分松島高校生の生徒さん)。
 終点石巻についた時に、仮面ライダーがいたのだ!!のらくろも一緒に。

石巻→小牛田

1644D 普通小牛田行き:石巻(18:31)→小牛田(19:10)

キハ110系(Wikipediaより拝借)

 これより石巻線に乗って、東北本線に戻る。乗車車両はキハ110系(確か)2両編成。
 何年ぶりに気動車に乗ったことか。轟音を上げるディーゼルエンジンの音を共に、結構揺れる車両に揺られながら小牛田へ向かう。
 上記写真は、石巻駅。途中、陽が落ちて辺りは真っ暗位になった。

小牛田→一ノ関

563M 普通一ノ関行き:小牛田(20:10)→一ノ関(20:56)


 小牛田駅に到着。あたりには何もない…。小牛田からの乗車車両は、701系2両編成。ここでもワンマン電車。小牛田〜一ノ関間も辺りは真っ暗であり、随時鳴らされる警笛のみが響き渡る。

一ノ関→盛岡

1555M 普通盛岡行き:一ノ関(21:17)→盛岡(22:46)




 一ノ関駅に到着。いよいよ、東北本線の終端駅へ向かう。乗車車両は、701系2両編成。同じ701系だが、帯の色が紫色になっており、盛岡地区を走る帯である。
 この区間が一番キツかった!!!新白河から仙台までの間は、何回か乗り継いで行ったので、そこまで遠い感覚はなかった。しかし、一ノ関〜盛岡は乗り継がないで1本で盛岡に行かれるのだが、約90分間乗車することになり続ける。当然のことながら、辺りは真っ暗でどこ走っているか分からないし、距離感も全くわからないので、次の駅が非常に遠かった感覚だった。徐々に乗客が少なくなり、聞こえてくるのは走行音と警笛の音だけ。少し寂しさと恐ろしさが併存する感覚に陥った。
 盛岡の一駅手前の仙北町駅を発車した後、やっと盛岡に着くという感動に包まれた記憶がある。ものすごい達成感に浸された。




 そして、盛岡に到着!!長かった…。
 乗車した、一ノ関→盛岡はすでに最終列車であった。

2日目

盛岡→平泉

1528M 普通一ノ関行き:盛岡(7:15)→平泉(8:40)


 2日目は、世界遺産に登録された平泉へ向かう。1日目と全く同じ路線を逆戻りする形になる。乗車車両は、701系2両編成
 平泉駅から中尊寺までは徒歩で約20分程度であるが、これが意外と遠い。しかも、当時霧雨の状態であり、非常に湿度が高かったので汗びっしょりの状態で中尊寺へ向かった。もし、駅から中尊寺へ行かれる場合はタクシーの利用を推奨する。
 そして、中尊寺に到着。



 中尊寺の山門から本堂・金色堂までが非常に大変な道のりである。まず、階段が欲しいほどの急な坂道を登る必要がある。そして、金色堂へ到着。金色堂は言葉を失うほどの美しさと荘厳さであり、「凄い」のコメントの言葉を失う。実に素晴らしいものであり、東北の観光の際は一度よるべきではなかろうか。

 そして、これが金色堂御朱印である。
 帰路の途中に「弁慶堂」と呼ばれるものがあり、そこでも御朱印をいただくことができる。

 これは横書きの御朱印である。なお、弁慶堂の御朱印は書置のみであり、必ず手許の御朱印帳に貼るべきである。
www.chusonji.or.jp

平泉→一ノ関

1532M 普通一ノ関行き:平泉(10:24)→一ノ関(10:31)



 十分に中尊寺を堪能した後、一ノ関へ向かう。乗車車両は、701系2両編成。ここで、昼ごはんを購入。後の仙台駅の乗り換えが忙しく昼食を食べている時間がなかったのである。
 平泉と一ノ関の間に山ノ目駅があるのだが、どこかで見覚えのある駅名であった。確か、うちの大学で…。

一ノ関→小牛田

544M 普通一ノ関行き:一ノ関(10:39)→小牛田(11:27)
 そして、一ノ関から小牛田へ向かう。 701系2両編成。ここでもワンマン電車。
 田園風景が広がる田舎の風景を颯爽と走行。

小牛田→仙台

2538M 小牛田(11:47)→仙台(12:34)

 そして、小牛田→仙台を乗車。乗車車両は、E721系0番台4両編成。そして、この区間を乗車すれば、東北本線を全て走破することになる。このE721系0番台ボックスシートであるため、車窓を撮影することができた。
streamable.com
 上記動画は、松島〜塩釜区間の動画である。仙石線と並走し、陸前浜田東塩釜駅区間でもこの風景を見ることができる。松島らしい風景であるものといえよう。

仙台→原ノ町

240M 普通原ノ町行き:仙台(12:40)→原ノ町(13:59)
 これより、常磐線に入る。常磐線といえば、2020年3月14日、富岡〜浪江間(20.8キロ)で運転を再開し、9年ぶりに全線開通であろう。701系4両編成。
 常磐線は、「本線」を名乗らないJR線の中では、最も長い路線である。岩沼までは東北本線と共同して走行するが、岩沼で別れる。この東北本線は日暮里で合流し、上野で再び再開する。
 約1時間超で終点の原ノ町に到着。

原ノ町→水戸

678M 普通水戸行き:原ノ町(14:08)→水戸(17:21)


 ここから、一気に水戸へ向かう。乗車車両は、E531系3000番台5両編成。原ノ町〜水戸は約171にも及ぶ。約3時間20分もの超長時間乗車となる。上記写真はいわき駅
 沿線にはたくさんの高校があり、ちょうど下校時間と重なる関係で多くの高校生が乗車してきた。そして、広野〜久ノ浜・勿来〜高萩では、車窓から太平洋が見えた。大海原を眺めるのもまた旅情を嗜む一つの要素である。

水戸→上野

434M 快速上野行き:水戸(17:34)→上野(19:46)
 そして、いよいよ東京へ向かう。乗車車両は、E53110両編成(土浦から15両編成)。この時点で多くの学生や通勤客で車内が混雑していた。

 連結作業を行う土浦駅ゲリラ豪雨に遭遇。雷雨がひどく、落雷によって周辺の施設が一気に停電になった。落雷によって停電になったのは何年振りのことか…。しかし、駅や電車は停電にはならなかった。
 その後、何事もなく発車し、上野へ向かう。


 そして、激混むとうの混雑することなく終点の上野に到着!!徐々に聴き馴染みのある発車メロディーATOS放送が聴こえてくるといよいよ東京に戻ってきたという実感が湧く
 もう少し先伸ばして東京へ向かう。

上野→東京

1988H 快速品川行き:上野(19:52)→東京(19:57)


 終点の東京に到着!!長かった…。
 朝の7時15分に盛岡を出発し、最終の東京に到着したのは19時57分。約12時間の旅を終えたわけである。
 その数日後にとある場所にも行ったので、青春18きっぷの旅(第2弾)も投稿する予定である。

ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」を聴く

Introduction

 期末試験が終わり、1日中自分の時間が取れるようになった。しかし、やりたいことだらけであり、四六時中音楽のことについて考えるわけにもいかない。勉強しつつも、やはり音楽のことについて書きたくなるものだ
 そこで、今回は、ブルックナー交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」を取り上げることにした。久しぶりにブルックナーについての記事を書くことにしたブルックナーの作品は長大であり、宗教性も高く、なかなか短時間で書くことが難しい。今だからこそ、少しでも多くの記事が書ければいいかなと思っている。
 さて、このブルックナー交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」であるが、他の作品に比べて、わかりやすく、美しいことを理由にブルックナーの中でもかなり人気の作品であるといえよう。もっとも、筋金入りのブルックナーファンは、圧倒的に第5番や第8番を挙げることに違いないだろう。私もそのうちの一人である。
 また、この作品は、ブルックナー交響曲全体的に散見される特徴がたくさん織り込まれている。例えば、第1楽章冒頭の弱音で弦楽器のトレモロが鳴り響く原始霧、2連符+3連符のブルックナーリズムが挙げられよう。また、この作品は、第5番に引けを取らないほどの重厚感ある音色が鳴り響くのも魅力的である。
 なお、この作品は大きく改変されており、第1稿と第2稿とで大きく異なる。現在、もっとも多く演奏されているのは第2稿である。そして、もはや毎度お馴染みになろう、ノヴァーク版とハース版であるが、聴く分にはあまり大きな違いは見受けられない。もっとも、以下の点が大きな相違点となっている。

  • 第3楽章トリオ冒頭の管弦楽法(主旋律を演奏する楽器が違う)
  • 第4楽章最後(練習番号Z)で回想される第1楽章第1主題の管弦楽法(ノヴァーク版ではホルンが明確に主題を再現する。ハース版は複数の楽器群の組合せで主題が暗示される)

 第3楽章トリオはわかるにしても、第4楽章の練習番号Zは手許にスコアがないと確認できない。スコアを持ちながら聴くのも醍醐味の一つであると再確認される
 そして、ブルックナー交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」を聴く!(その1)」として、最初に取り上げる演奏は、クラウディオ・アバドウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏である。その理由として、アバドブルックナーはあまり、ブルックナー臭さがなく、入門に相応しい演奏であるからだと考えている。

ブルックナー交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」

クラウディオ・アバドウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

評価:8.5 演奏時間:約79分



第1楽章:Bewegt, Nicht Zu Schell

 冒頭部分。早速耳を澄ませないとよく聴こえないほどの最弱音による弦楽器のトレモロによって始まる。そして、第1主題が、ホルンの柔らかくて雄大な音色が響き渡り、薄暗く霧に覆われている中、ホルンとフルート等の木管楽器が加わって、少しずつ朝日が差し込む情景が浮かんでくる。大変美しい音楽である。アバドの長い指揮棒によって生み出される音楽はダイナミックで美しい音楽である。そして、全合奏によって奏でられるブルックナーリズムは、あまり力まず雄大で柔らかい音色が響き渡っている。第2主題は、落ち着いて弾むように軽快な音楽が繰り広げられている。テンポも標準的であり、音の強弱も自然で素晴らしい演奏である。壮大な第1主題とは対照的な音楽である。しかし、その後発展していき、豪快な第3主題が鳴り響くも、金管楽器は前面的に奏でられず、柔らかく調和された重厚な音色が響き渡る
 展開部に入ると、ソロ・パートが非常に大きくなり、緊張感が一気に増していく。再び序奏部のような弱音のトレモロ雄大なホルンの音色が戻ってくる。しかし、フルートの下降音階とオーボエの上昇音階が非常に美しい音色で奏でられており、もう一度幻想的な風景が思い起こされる。やがて盛り上がってき、やや暴力的な音色でブルックナー・リズムを何度も演奏され、非常にダイナミックな展開部を構築している。これぞ、これぞ、ブルックナーの魅力である!その後は、煌びやかなヴァイオリンのトレモロに加えて、トランペットが非常に輝かしい音色でコラール風なハーモニーを響かせている。どこまでも届いていきそうなほどの輝かしい音色は素晴らしい音色である。
 再現部第1主題も、ホルンの音色ともに、軽やかで美しいフルートが上下する。繰り返される冒頭部分の再現であるが、毎度思い浮かぶ情景が異なるのである。その後の全合奏も壮大な音色によってブルックナー・リズムが何度も何度も演奏されている一切力んだ様子もなく、自然体な音色であるにもかかわらず、壮大な音色が広がっていく、アバドの音楽作りに圧倒される。再現部第2主題も、軽快な音色と主に、多少厚みがかかった弦楽器の音色が美しい。その後の、再現部第3主題は、非常に迫力ある音色が広がっていき、どこまでも横に広がっていきそうな音色が響き渡るアバドのダイナミックさがブルックナーではこのように表現されるのかと思うと感銘を受ける。
 コーダでも、迫力ある音楽が繰り広げられており、ホルンが勇壮に冒頭部分の主題を繰り返し、迫力をもって締め括る

第2楽章: Andante Quasi Allegretto

 繊細な幕開け。
 第2楽章は色々な見解があるものの「A-B-A-B-A-Coda のロンド形式」と捉えるのが妥当ではないかと思われる。何回か冒頭のチェロの主題が繰り返し使われるからである。
 主要主題の部分である主題は、チェロによる主題はやや哀愁漂う音色を響かせており、美しい。各々の楽器のソロパートに加えて、ピッツィカートで刻んでいく描写はブルックナーではよく見られる構造である。副主題の部分も、美しくも重厚感ある弦楽器に加えて、木管楽器の鳥の鳴き声を再現しているかのような優しい音色が印象的である。アバドの自然豊かなアプローチが冴え渡っていることがよくわかる。後半のクラリネット等の木管楽器の応答もまた繊細な響きで美しい。
 中間部分においては、クライマックスを形成するかのような盛り上がりを見せる。力強い弦楽器に加えて壮大なホルンの音色と低音が勇ましく奏であげるのだが、アバドの演奏は非常に力強く、非常に勇敢な演奏を展開しているベートーヴェン交響曲第3番第2楽章の中間部のような勇ましさである(尤も、本演奏は長調)。
 その後、再び主要主題が奏でられ、ソナタ形式では無いが再現部に位置付けられるものといえよう。コーダに入る前に、最後の主要主題部では大きなクライマックスが形成される。アバドのクライマックスは、中間部でも述べたが非常に迫力ある演奏なのである。しかし、カラヤンのようなガチガチの力感ではなく、自然豊かな音色と自然体として壮大に鳴り響いているのである。まさに、この曲のテーマである「ロマンティック」の表題にふさわしい内容であり、裏として、森林が描かれているのでは無いだろうか。
 コーダは繊細な響きを残して締める。

第3楽章:Scherzo & Trio

 俗に「狩のスケルツォ」としてよく知られている。
 冒頭、ホルンとトランペットの勇ましいファンファーレが鳴り響き、Aを奏でる。ここでも金管楽器は自然な音色であるにも関わらず、自然体を貫いている。キビキビとした非常に勇ましい楽章である。その後、少し穏やかんで滑らかな旋律が鳴り響くが、その穏やかさ一瞬にすぎる。しかし、小刻みに音が上下するので、奏者としてはかなりの技術を要するのだろう。
 トリオ(B)は、冒頭フルートによって奏でられているので、ここでノヴァーク版であることが確認できるアバドのトリオは、あまりテンポを落とさずに、勇敢な主部を維持しているかのような印象を受ける。しかし、アバドらしい巧みなアゴーギクによって穏やかなトリオを彩っている
 そして、再びAを繰り返す。

第4楽章:Finale: Bewegt, Doch Nicht Zu Schnell

 機械的なリズムを起点に、弦楽器の波打つような演奏によって幕を開ける。そして、凄まじい重厚感の第1主題を奏でている。この第1主題の部分は重厚感ある音色が繰り返し登場し、ブルックナーの醍醐味である重厚感が何度も味わえる。アバドの第1楽章は第4楽章早々から凄まじい演奏であった。強烈である。第2主題は、第1主題とは対照的に落ち着いた雰囲気である。アバドは、しっかりとテンポを落として優しく、第2楽章のような優しく落ち着いた演奏を展開している。若干弾むような場面も非常に可愛らしい。第3主題は、第1主題のような強烈な演奏が戻ってくる。ここでもアバドは自然体を貫きながら非常に壮大で力強い重厚感ある音色を響かせている。この重厚感こそがブルックナーなのである。
 展開部に入ると、冒頭の雰囲気に戻ってくる。第2主題を回顧するかのような演奏だが、再びホルンが第1主題のコラールを奏で、その後に弦楽器がトゥッティで力強く奏でる。いつ聴いても壮観だ。そして、第3主題が登場する。コーダ前の非常に大きなクライマックスである。何度もブルックナー・リズムが繰り返され、金管楽器の重厚感ある大迫力の演奏が非常に素晴らしく、決して遅くないテンポがより一層明るさと、荘厳さを齎している。その後、第1主題の冒頭部分をもう一度繰り返されるのだが、その後の第1主題の再現もまた強烈な迫力である。なお、再現部は短め(第1主題と第2主題の再現のみ)。
 静まり返ると、弦楽器の3連符と木管楽器の第1主題冒頭部分を奏でる。緊張感が漂い、圧倒的なクライマックスへと導く。このじわじわくるクレッシェンドがたまらない。ここでも、アバドの知的なアプローチが光り、自然体を意識しながら重厚感ある音色を徐々に盛り上げている。そして、最高潮に達した時、凄まじい迫力さであり、身体に何かが走ったかのような壮大さに圧倒される。最後の最後の、締め括りも大変力強い、何もかも持ち去っていってしまうかのような終わり方にはもう体が動かない
 これはすごい。

 なお、朝比奈先生やギュンター・ヴァントといった本格的なブルックナー指揮者と比べると、ややブルックナーらしさが欠けている印象を受ける。十分な重厚さであるが、もっと厳格さ、荘厳さがあるのが本格的なブルックナーであるとと考えるのが自論である。
 しかし、あまりブルックナー臭さが無いにもかかわらず、ブルックナーの醍醐味である重厚感がしっかり演奏されている点を考慮すると、この演奏はブルックナー初心者にはおすすめの演奏なのでは無いかと思っている。
 したがって、評価の部分を「8.5」としてある。

ブルックナー:交響曲第4番

ブルックナー:交響曲第4番

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