Symphonikerのひとりごと

クラシック音楽を趣味とするロー生

ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調を聴く(その1)

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Ludwig Van Beethoven [1770-1827]

はじめに

 今回は、ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調。ご存知の方も多いだろう。「運命」の愛称で知られているクラシック音楽中の中でも名曲である。実際に、三大交響曲として、ドヴォルザーク交響曲第9番新世界より」、シューベルト交響曲第8(7)番「未完成」、そして、ベートーヴェン交響曲第5番である。
 実際に交響曲において「5」という数字は、今後の作曲家に大きな影響を与えた。交響曲作曲家として5番目の交響曲を作曲するときは相当熱を入れたようだ。実際に「交響曲第5番」で人気の作品を書いた作曲家を考えてみよう。
 ベートーヴェンブルックナーマーラーショスタコーヴィチ。実際に、ベートーヴェンピアノ協奏曲第5番「皇帝」も非常に人気である。また、ベートーヴェン交響曲の中でも最も緻密に設計された作品であり、その主題展開の技法や「暗から明へ」というドラマティックな楽曲構成は後世の作曲家に模範とされた。ブラームス交響曲第1番が同様に「暗から明へ」という構造になっている。そして、同じハ短調であることも注目されよう。
 そして、ベートーヴェン交響曲第5番は聴き比べにも非常に参考になる曲である。もっとも有名な第1楽章提示部第1主題がメインとなる。速く指揮する指揮者もいれば、1音1音しっかりと鳴らす指揮者もいる。同じ曲でも指揮者が異なれば全く違う、これがクラシック音楽の醍醐味といえよう
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 上記画像は再現部に入る少し前からの楽譜であるが、ここはものすごい迫力であり、第1楽章の中でももっとも緊迫感のある瞬間だろう
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 私が第1楽章の中でもっとも好きな再現部第2主題。。暗→明という構成を取る中、明るさへ若干顔を覗かせるハ長調の第2主題はたまらない。
 第2楽章において、私は2回目の第2主題(78小節目以降)の方が好きなのである。
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弦楽器が32部音符になっており、より一層華々しく活発的になるのである
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 そして、98小節以降のヴィオラとチェロの流れるような旋律がある。32部音符ながら滑らかに奏でられる旋律は第2楽章の中でもっとも美しく甘美な音色が楽しめる場面といえよう。
 第3楽章はトリオの以下の場面がある。
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 チェロとコントラバスによって奏でられるトリオは「象のダンス」ベルリオーズが呼んだ。ハ短調ハ長調へと第4楽章に向けた前兆とも解釈されよう。
 第4楽章は、「ドーミーソー」と非常に単純な旋律だが、大変華々しく最終を飾るにもっとも相応しい。
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 私が第4楽章中でもっとも好きな場面は以下の部分。
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 第4楽章336〜337小節の弦楽器がトゥッティで「ソドソミーレドソー」と奏でる場面があるのだが、私が第4楽章の中でもっとも好きな箇所なのである。たったの1〜2秒しかないのに、ベートーヴェンの力強さと弦楽器の美しさ重厚さが兼ね備えられた場面なのである。素早く演奏するのもよし、ゆっくりとしたテンポで演奏するのもし。あらゆる奏法によってもこの1小節はベートーヴェンらしさを存分に発揮する場面でもある。
 そして、ベートーヴェン交響曲として唯一フェルマータで終えるのもこの第5番のみである。もっとも、交響曲第3番第4楽章の最終音をどれだけ伸ばして演奏するか否かによっても種類があるが、第5番ほど長く伸ばして演奏はされない。
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ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調

カール・ベームウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

評価:9 演奏時間:約33分
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 今回取り上げる演奏は、カール・ベーム指揮:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏である。そして、上記演奏は1966年に録音されたライヴ演奏である。
 なお、カール・ベームという指揮者については以下の記事を参照されたい。
law-symphoniker.hatenablog.com

第1楽章:Allegro Con Brio

 1音1音丁寧な第1主題を奏でるが、フルトヴェングラーのような暗さが漂うベームらしい厳格な第1主題を奏で、その後の第2主題はウィーン・フィルの美しい音色が響き渡る。提示部繰り返しあり
 ホルンが雄大に第1主題動機を奏でる展開部に入る。何度も第1主題動機を繰り返して演奏されるのだが、1音1音が非常に鮮明に丁寧に奏でるのである。モノラル録音のこともあって、より緊迫感が伝わってくる。そして、第1主題動機がどんどん盛り上がって再現部に入る。
 大迫力の第1主題を奏でた後に、オーボエ・ソロが良い一呼吸をつける。そして、再現部第2主題はハ長調によって奏でられるのであるが、交響曲第6番第5楽章のように嵐がさったような明るさに包まれる。私が第1楽章の中でも最も好きな場面であるが、弦楽器が丁寧に第2主題を奏でる中、力強い金管楽器木管楽器ティンパニが拍子を切り刻む。ライヴ演奏ならではの、燃え盛るベームを堪能できる。
 コーダも力強い第1主題動機を奏で、終始緊迫感のある第1楽章を終える。

第2楽章:Andante Con Moto

 A-B-A'-B-A"-B'-A'"-A""-codaから成る緩徐楽章かつ、変奏曲である。
 緊迫感あふれる第1楽章の後、流れるようなチェロの第1主題が緊張感を解してくれる。ベームらしい慎重なテンポで進んでいく。モノラルながら、ウィーン・フィルの甘美な弦楽器な音色が十分に伝わってくる。1966年ならば、ステレオ録音が行われている時代にもかかわらず、なぜモノラルなのか…ちょっと惜しい気もするが、モノラルならではの空気感もまた良しとしよう。
 元気ある第2主題はトランペットがかなりの音量が出ていることがわかる。個人的には、2回目のBが好きなのだ。第2主題は変わらないのだが、弦楽器が32部音符でより細かく演奏され、躍動感が生まれるのがたまらない。その後のチェロの第1主題の変装も流れるように美しい。
 個人的にこの第2楽章はものすごい好きな場面であり、おそらく交響曲第5番の中でも最も好きな場面かもしれない。

第3楽章:Allegro

 スケルツォ部分では、ホルンが力強く、第1楽章第1主題動機を奏で、この第3楽章でもその動機が繰り返される。トリオに入るとハ長調に転じ、コントラバス等の低弦楽器が見せ場となる。ベルリオーズは、「象のダンス」と呼んだそうな。
 第3楽章でも、ベームらしい慎重かつ厳格なテンポによって進められる。本格的なベートーヴェン
 やがて静まり、第4楽章へ…。

第4楽章:Allegro

 ハ短調からハ長調に切り替わったとたん、大爆発を起こしたかのように「ドー・ミー・ソー」と力強く第1主題を奏でる。慎重なテンポに基づく力強い第1主題は切れ味鋭い演奏である。その後のホルンの勇壮に奏でる箇所も実に雄大であり、実際はものすごいよく響いたのだろう。第2主題は、第1楽章の緊迫感はいったいどこへ行ったのだろうというほど弾んだ弦楽器が印象的である。それでもベームは口を一文字にして指揮をしているのだろう。提示部繰り返しなし
 第2主題がメインとなる展開部へて、第3楽章のちょっと静かで暗い場面を経て再現部へ。
 再現部に入ると、より一層ベームが燃え出し、勢いがましてくる。特に第2主題の切れ味が鋭く、「決して地味」な演奏ではない。フルトヴェングラーに引けを取らないほどの迫力である(ネタバレになってしまうが、フルトヴェングラーの方がもっとすごい)。
 コーダに入れば、低弦楽器が唸り、高音楽器が叫ぶような盛り上がりを見せ、執拗に念を押していく。そして、最終音はためずに、そのままの勢いで鳴らし、力強く締め括る
 燃え盛るベームの勢いに脱帽!!