Symphonikerの音楽鑑賞日記

クラシック音楽を趣味とする早大生

ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調を聴く(その2)

Introduction

 今回は、ヘルマン・シェルヘン指揮、ルガノ放送交響楽団(現在スイス・イタリアーナ管弦楽団の演奏を取り上げよう。 
 このヘルマン・シェルヘンは、極めて個性的な指揮をする指揮者である。個性的指揮者といえば、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーオットー・クレンペラーゲンナジー・ロジェストヴェンスキーが挙げられようか。日本人指揮者で言えば、山田一雄先生は外せないだろう。
 近年、このような個性的指揮者が乏しくなってきた。ベートーヴェンのような超王道な交響曲であっても、個性的指揮者が演奏することによって新たな発見、解釈があるのもまた醍醐味の一つである。
 特に、このベートーヴェン交響曲第5番は第1楽章冒頭の「ダダダダーン」が指揮者によって全く異なることがあるため、開始早々から解釈の異動が窺えるのである。
 また、このベートーヴェン交響曲第5番を取り上げた理由として、2022年4月17日に行われる【日本フィル】第237回芸劇シリーズの予習である。

 ピエタリ・インキネンが個性的指揮者ではないことは知っており、独特な演奏が展開されることは期待していない。むしろ、自然豊かな演奏が展開されると予想している
 本稿は、2022年4月17日以前に投稿するため、上記日本フィルの演奏については別途の記事を参照されたい。
 なお、本作品の非詳細な解説は以下の記事を参照されたい。
law-symphoniker.hatenablog.com

ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調

ヘルマン・シェルヘン:ルガノ放送交響楽団

評価:6 演奏時間:約34分

第1楽章:Allegro Con Brio

 堂々たる出だし。しかし、冒頭部からしばらくして第1主題が奏でられるフルトヴェングラー、いやそれ以上の溜めがあるかもしれない。オケはベルリン・フィル等に比べて劣るが張り詰めた弦楽器が鳴り響く。第2主題に至ってはやや落ち着いて安らかな演奏が展開される。ピッチは多少高めであるが1965年付近の演奏であるため、録音技術は目を瞑るべき。提示部繰り返しあり
 ホルンが雄大に第1主題動機を奏でる展開部に入る。弦楽器の音色がかなり張りのある音色が繰り広げられる。微妙にヘルシェンの鬼演が垣間見える。フルトヴェングラーとは違った気迫がひしひしと近づいている。
 タメの入った迫力ある第1主題動機が奏でられるオーボエ・ソロは流れるようにサッパリと過ぎ去っていく。そして、第2主題は明るい木管楽器と爽やかな弦楽器が奏でられ、標準的なテンポながらも力強いリズムを刻む。たまに、シェルヘンの唸り声が聴こえる。張り詰めた弦楽器が当時の演奏を物語る。
 コーダも力強い演奏のまま集結する。

第2楽章:Andante Con Moto

 A-B-A'-B-A"-B'-A'"-A""-codaから成る緩徐楽章かつ、変奏曲である。
 第1楽章に比べて落ち着いた印象であるが、弦楽器の音色がやや微妙。オケのレベルが表れるのは仕方のないこと。第2主題の部分は、相当の迫力であり、行進曲のような力強い足取りである。トランペットの音色がよく響いている。その後の流れるような弦楽器の箇所も、やや微妙な印象を受ける。テンポは至って標準的。
 2回目の第2主題は、シェルヘンが吠えまくっている。そして、弦楽器が32部音符でより細かく演奏されることが要因かわからないが、1回目の第2主題よりテンポが快速的である。その後の弦楽器が滑らかに奏でる箇所は、なんと一つのクレッシェンドになっており、だんだんと大きくなっている。これはなかなか面白い解釈である。もっとも、低弦楽器の音色はあまり変わらず、刻んでいく木管楽器等が徐々に大きくなっていく辺りがやや謎。良い意味で言えば、個性的というべきか。
 緩徐楽章と位置付けられる第2楽章であるが、シェルヘンがかなり叫んでいる。何故か、珍しいものだ。躍動感の大きい第2楽章であった。

第3楽章:Allegro

 スケルツォ部分では、ホルンが力強く、第1楽章第1主題動機を奏でる。ホルンの音色は雄大な音色を響かせる。しかし、弦楽器はスタッカートではなく、レガートっぽく途切れずに演奏されている。個人的に切れ味のある第1楽章第1主題動機が好きであるため、このように続けて演奏されてしまうとどうもだらけてしまう印象である。ちょっと残念。
 トリオに入るとハ長調に転じ、コントラバス等の低弦楽器が重厚な音色を響かせる。このハ長調は、第4楽章の明るさを予兆させる。随所アンサンブルが乱れている箇所がある。
 再現部を終えて第4楽章に向けて静寂に包まれる。そして、シェルヘンの大きな怒号と合わせて第4楽章へ。

第4楽章:Allegro

 「ドー・ミー・ソー」とトランペットが張りのある音色を力強く第1主題を奏でる。テンポはあまり速くなく、力強さが伝わる。その後のホルンの勇壮に奏でる箇所は、なんとホルンの音色はあまり聴こえず、寧ろ木管楽器(特にオーボエ)がはっきりと聴こえてくる。ホルンはどこへ行った?第2主題はしっかりとしたテンポで進められていく。提示部繰り返しなし
 第2主題がメインとなる展開部へ。ちょっとよろよろしているが、緊迫感は十分に伝わり、随所にシェルヘンの怒号が飛びかう。そして、静寂な第3楽章の再現。
 再現部に入ると、「ドー・ミー・ソー」と再び堂々たる幕開けである。その後のホルンの雄大に奏でるはずの箇所は、提示部と同様に木管楽器が主となって奏でられている。再現部に入ると怒号の数が増えてくる。
 コーダに入れば、ピッコロも加わるも途中で裏返ったりしている。その後低弦楽器が唸り、高音楽器が高らかに鳴り響く。
 シェルヘンの叫び声も相まって加速していき、最後は堂々と締めくくる。

 ハッキリ言って、世界の主要なオーケストラに比べて演奏技術ははるかに劣っている。従って、上手な演奏を期待してはいけない。しかし、このシェルヘンの極めて独特な解釈とルガノ放送交響楽団の演奏によって生み出される音楽は極めて独特なものであり、緊迫感が生じる
 このような個性的な演奏を聴くのもたまには悪くはない。