鵺翠の音楽の世界と読書の記録

クラシック音楽を趣味とする早大OB

ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調を聴く(その4)

ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調

クラウス・テンシュテットロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

評価:9 演奏時間:約34分

第1楽章:Allegro Con Brio

 提示部非常に不気味で押し寄せるような恐怖。そして、強烈なホルンの第1主題がすでにテッシュテットの凄さを感じる。第2主題は第1主題とは異なって落ち着いた印象を受けるが、盛り上がった後は今まで聴いたことのないような迫力がある提示部繰り返しあり
 展開部。破壊力あるホルンが第1主題を吼える。それにしても、凄まじいテンシュテットの気合いといえよう。全ての楽器がテンシュテットの真剣勝負であり、一歩間違えたら一気に乱れてしまいそうである。
 再現部。これほど迫力ある第1主題は他にあるか!?。凄まじいテンシュテットのパワーに圧倒される。そして、第2主題は天国のような明るさはあるものの、第1楽章の時点ですでに勝利を確信したかのような迫力と壮大さである。その後は、ロンドン・フィルテンシュテットの相性の良さと真剣勝負のベートーヴェンは言葉では表現し得ない恐ろしさを感じる。
 コーダも大迫力の演奏。第1楽章の時点で完全燃焼である。

第2楽章:Andante Con Moto

 A-B-A'-B-A"-B'-A'"-A""-codaから成る緩徐楽章かつ、変奏曲である。
 緊迫した第1楽章の緊張をほぐすような第2楽章であるが、どこか第1楽章の余韻が残っているような重厚な弦楽器が鳴り響く。第2主題の部分は、やっぱりテンシュテットのパワーが凄まじい!!一音一音が墓石にかかってきている。これがテンシュテットなのだ。
 2回目の第2主題は、金管楽器があまりにも大音量すぎて弦楽器が32分音符が全く聞こえない。凄まじいパワーだ。その後の弦楽器が滑らかに奏でる箇所は、弦楽器よりも木管楽器の音色の方が若干大きいが、緊張感のある弦楽器の音色が響き渡った
 緩徐楽章であるはずの第2楽章だが、なぜこんなに疲れるのだろう。テンシュテットの演奏は居眠りを許さないのである。

第3楽章:Allegro

 期待を裏切らないで迫力あるあるホルンが第1楽章第1主題を奏でる。テンポも若干遅めである。非常に活発的なスケルツォである。
 トリオに入るとハ長調に転じ、多少テンポを速めて活気あふれるトリオになっている。本当に標準的な二管編成で演奏されているのか?カラヤンのように増強して聴こえるほどの迫力さがある。

第4楽章:Allegro

 「ドー・ミー・ソー」は一音一音溜めながら大迫力の幕開けであり、少し遅い第1主題が迫力さを増強させるロンドン・フィルテンシュテットのコンビの恐ろしさを感じる。その後のホルンの勇壮に奏でる箇所は、マーラー交響曲第1番第4楽章コーダのようにホルンが他の楽器をかき消す勢いである。提示部繰り返なし
 第2主題がメインとなる展開部へ。弦楽器がメインとなり、いくらか抑えた雰囲気になるが金管楽器が加わるとその様子は一変する。第3楽章の再現前は金管楽器の音量が凄まじく、弦楽器の音色はほぼかき消されている
 再現部に入ると、「ドー・ミー・ソー」と提示部同様に大迫力の演奏である。既に燃焼済みであるがまだコーダが残っているとなると、ロンドン・フィルの団員の体力は凄まじいものが要求されるのだろう。
 コーダに入れば、決してテンポを早めることなく少し遅いテンポで進んでいく。これが、よりダイナミックさと破壊力をもたらすのである。最後のフィナーレでは強烈なティンパニと天を突き抜けるような迫力あるトランペットの音色とはじめとした強烈な金管楽器が吠えまくり、力強く締めくくる
 曲が終わったと同時に「ブラボー」の大歓声が巻き起こる。これほど、観衆のテンションも高かったのだろう。そしてこの演奏を前にして有無を言わせない。本当は、評価:10【当方推薦盤】としたかったが、好みが分かれそうなので評価:9とした。


 ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調を聴く(その3)の後にテンシュテットの演奏を取り上げた理由として、同じロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏なのに、指揮者が異なるだけでこれだけ演奏が異なるという、クラシック音楽の醍醐味をお伝えしたかったのである。