鵺翠の音楽の世界と読書の記録

クラシック音楽を趣味とする早大OB

ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調を聴く(その2)

ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調

アンドリス・ネルソンスウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

評価:8 演奏時間:約68分

第1楽章:Allegro Ma Non Troppo

 冒頭、緊迫感のある雰囲気が漂う。そして、大変力強い第1主題が奏でられる。ネルソンスのどっしりとした体格から生まれる音は、どっしりとしている。ウィーン・フィルも相当の気合が入っているようだ。提示部第1主題から迫力満点の演奏に圧倒される。第2主題は、穏やかに木管楽器が奏でている。第1主題と比較して対照的に穏やかな雰囲気である。
 展開部に入ると、提示部第1主題の緊迫感が戻ってくる。テンポはあまり速くなく、むしろ標準的であるが、ひしひしと伝わる重厚感が凄まじい。ホルンの音色も聴こえてくるが、それよりも木管楽器やヴァイオリンといった高音の楽器がよく鳴っているのが印象的である。。
 再現部においては、提示部第1主題のような迫力が再び戻るのだが、破壊力抜群の圧倒的な燃え盛る第1主題にはつい力が入る。可能な限り、大音量で気聴いておきたい。提示部第1主題でも相当の迫力であったが、それをはるかに上回る再現部第1主題は圧巻そのものである。その後の第2主題は非常に穏やかになり、さらにニ長調に転調するため、非常に明るく先ほどの激しい第1主題はどこへやら。意外と、クレッシェンドの抑揚が強い点も特徴といえようか。
 コーダも相当な迫力であり、再現部のような迫力が再び襲いかかってくる。金管楽器も相当音量が出ているのだが、フルート等の木管楽器もしっかり鳴っている。圧倒的な音楽にも関わらず、バランスの良い演奏だ。

第2楽章:Molto Vivace

 冒頭の幕開けは迫力満点。しっかりとしたテンポで進められていく。1音1音丁寧ながらも、しっかりと音を鳴らし、木管楽器が高らかに鳴り響く繰り返しあり
 トリオも、主部とあまり変わらないテンポである。途中のウィンナ・ホルンのソロは非常に雄大で美しい木管楽器は穏やかに明るく曲を彩る。途中ヴァイオリンが徐々にクレッシェンドになっていく箇所は一直線であり、かつ木管楽器が美しく鳴っていることがよくわかる。全体的に包み込むような、そんな音楽が堪能できる。
 そして、主部が戻り、力強い演奏が繰り返される。

第3楽章:Adagio Molto E Cantabile

 冒頭、非常に遅めのテンポで穏やかな木管楽器によって幕を開ける。主題部に入ると、ゆったりとしたテンポで美しい弦楽器が第1主題を奏でるウィーン・フィルの伝統的で美しい弦楽器はいつ聴いても美しいものだ。リヒャルト・シュトラウスもレパートリーとするネルソンスだからこそ、ロマン溢れる演奏をクリ酷げるのだろう。第2主題に入るとより一層美しさが際立ち、うっとりとしてしまう。
 第3楽章は、変奏曲と理解するのが一般的であるから、美しい主題が形や調性を変えて繰り返し演奏される。そして、ホルンのソロ・パートの後、流れる弦楽器の第1主題変奏が登場する。
 第3変奏において、8分の12拍子による流れるような弦楽器はやや抑えめ。しかし、木管楽器の音色が自然で美しく歌い上げる。弦楽器が主役となって演奏することが多いが、木管楽器の美しいハーモニーが堪能できる。
 終わりに近づくにつれ、途中金管楽器のファンファーレが登場する。どっしりとしたテンポで堂々と鳴り響くトランペットと、重厚感あるティンパニが印象的。しかし、張りのあるお手本のようなトランペットの音色である。
 あっという間の16分である。第4楽章へ。

第4楽章:Presto, Allegro Assai

 Presto。テンポは速くなく、どっしりとしたテンポで幕を開ける。フォルテ(f)の部分は迫力十分に、ピアノ(p)の部分は繊細な音楽を築く
 Allegro assaiコントラバスとチェロによって超有名な主題が奏でられるが、非常に小さい音である。やがて、ファゴットが甘美な音色を響かせる箇所に代わるが、弦楽器の音色が美しいウィーン・フィルの伝統的で美しい弦楽器が冴え渡る。そして、金管楽器が加わるのなんと華々しいのだろう。暗闇から一気に太陽の光が差し込み、希望か何か前進的な要素を窺わせる。テンポもそこまで速くなく、実に荘厳で天国のような雰囲気である。
 Presto; Recitativo "O Freunde, nicht diese Töne!"; Allegro assaiバリトン歌手(ゲオルク・ツェッペンフェルト)の登場し、いよ合唱が伴う。テンポが多少速くなり、随所に微妙なアクセントが加わり、メリハリのついた演奏である。ネルソンスの若さのエネルギーが湧出しているのだろう。徐々に迫力を増していく。トランペットの音色もすごい
  Allegro assai vivace (alla marcia)テノール歌手(クラウス・フロリアン・フォークト)のソロパートも標準的なテンポである。弾むように歌うフォークとは、このピッコロの可愛らしい音色と見事に調和している。多少合唱は抑えめのようである。
 非常に複雑で格好良い間奏の後に超有名な箇所に入る。合唱も大迫力であり、トランペットの音色がよく響き渡っている。テンポもやや快速的であり、力強く演奏されている
 Andante maestoso。荘厳なトロンボーンによって始まる。ただ、少し気になるのが合唱がやや抑えめであることだ。録音の状況なのか不明だが、合唱の荘厳さがやや欠けている印象である。壮大な超有名部分の後の荘厳さに期待するのであるが、やや物足りない印象
 Allegro energico e sempre ben marcato。こちらは、高らかにソプラノの音色とトランペットの柔らかい音色に加え、ホルンの雄大な音色も聴こえる。弾むように進められているのだが、ネルソンスの力強さが相俟って迫力ある荘厳さが繰り広げられている。ホルンの音色がしっかりと聴こえてくる。
 Allegro ma non tanto男声合唱と女声合唱が交互に歌う。これが聴こえるともう終わってしまうのか、といつも思う。さて、テンポはやや快速的であり、強い推進力で進められていく。もはや世界的指揮者として巧妙なアンドリス・ネルソンスの勢いが十分に伝わってくる。
 Presto; Prestissimo。いよいよ最終部。異様なほどにピッコロの音色が目立ち、トランペット等の金管楽器が叫びを上げる。ネルソンスの力強さがここにて爆発する。最後の最後まで力強さは健在であり、聴くこちらもつい力が入る。一番最後にピッコロが力んでいるところも必聴だ
 
 ウィーン・フィルを振ったベートーヴェン交響曲全集は、ドイツ・グラモフォンにはイッセルシュテットベームバーンスタインアバド、ラトルといった巨匠が振った全集がある。その中に、アンドリス・ネルソンスが加わっているのだからウィーン・フィルからにも認められたと言っても過言ではないだろう。
 ベートーヴェン・ファンならば、手許に置いておきたい一枚である。

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