鵺翠の音楽の世界と読書の記録

クラシック音楽を趣味とする早大OB

【クラシック音楽の最高傑作】ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調《合唱》を聴く

Introduction

 今回は、ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調「第九」の名称で広く知られているクラシック音楽の数ある中で傑作といえる作品である。
 個人的に数ある交響曲の中で、ベートーヴェン交響曲第9番が最高傑作であると認識している。作曲当時、交響曲の中で合唱が組み込まれている作品は画期的であっただろう。このような音楽作品を「合唱交響曲と称する。ちなみに、初めて「合唱交響曲という用語を使用したエクトル・ベルリオーズだといわれている*1
 その後、合唱交響曲を作曲したものとして…

 以上が挙げられよう。もちろん他にもたくさんある。合唱が伴うとオーケストラも大きくなり、合唱も組み込まれ非常にダイナミックで迫力のある音楽が期待される。そのため、合唱が伴う作品はそのような醍醐味があるため、その日のコンサートで合唱交響曲を扱うとなるとその日は非常に楽しみで満ち溢れている。
 さて、この時期にベートーヴェン交響曲第9番ニ短調の記事を書いたとして、年末といえば第九だからである。実際に日本の各地のオーケストラがこの第九を演奏するのである。しかし、年末に第九を演奏するのは日本だけというのも驚きである。
 そして、ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調の逸話として以下の逸話が残されている。

 「参加者の証言によると、第九の初演はリハーサル不足(2回の完全なリハーサルしかなかった)であり、かなり不完全だったという示唆がある。ソプラノソロのゾンタークは18歳、アルトソロのウンガーは21歳という若さに加え、男声ソロ2名は初演直前に変更になってしまい(バリトンソロのザイペルトが譜面を受け取ったのは、初演3日前とされる)、ソロパートはかなりの不安を抱えたまま、初演を迎えている。さらに、総練習の回数が2回と少なく、管楽器のエキストラまで揃ったのが初演前日とスケジュール上ギリギリであったこと、演奏者にはアマチュアが多く加わっていたこと(長年の戦争でプロの演奏家は人手不足だった。例えば初演の企画段階でも「ウィーンにはコンサート・ピアニストが居ない」と語られている)、加えて合奏の脱落や崩壊を防ぐためピアノが参加して合奏をリードしていた。
 一方で、初演は大成功を収めた。『テアター・ツァイトゥング』紙に「大衆は音楽の英雄を最高の敬意と同情をもって受け取り、彼の素晴らしく巨大な作品に最も熱心に耳を傾け、歓喜に満ちた拍手を送り、しばしばセクションの間、そしてセクションの最後には何度も繰り返した」という評論家の記載がある 。ベートーヴェンは当時既に聴力を失っていたため、ウムラウフが正指揮者として、ベートーヴェンは各楽章のテンポを指示する役目で指揮台に上がった。ベートーヴェン自身は初演は失敗だったと思い、演奏後も聴衆の方を向くことができず、また拍手も聞こえなかったため、聴衆の喝采に気がつかなかった。見かねたアルト歌手のカロリーネ・ウンガーがベートーヴェンの手を取って聴衆の方を向かせ、初めて拍手を見ることができた、という逸話がある。観衆が熱狂し、アンコールでは2度も第2楽章が演奏され、3度目のアンコールを行おうとして兵に止められたという話が残っている。」 (下線部筆者)

 この逸話には少々否定的な見解も存在するが、耳の聴こえないベートーヴェンが聴衆の方を向いた時に拍手を見ることができた部分は実に感慨深いものがある。当時、交響曲等の作品の初演は作曲者による指揮で行うというものが慣例だった。
 最後に、このベートーヴェン交響曲第9番ニ短調であるが、名曲ということも相まってどの演奏も名演なのである。実に緻密に作曲されたのかが窺われる作品であるといえよう。したがって、評価番号は悩んだ末につけたものとなっている。

ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調

アンドリス・ネルソンスウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

評価:8 演奏時間:約68分


第1楽章:Allegro Ma Non Troppo 冒頭、緊迫感のある雰囲気が漂う。そして、大変力強い第1主題が奏でられる。ネルソンスのどっしりとした体格から生まれる音は、どっしりとしている。ウィーン・フィルも相当の気合が入っているようだ。提示部第1主題から迫力満点の演奏に圧倒される。第2主題は、穏やかに木管楽器が奏でている。第1主題と比較して対照的に穏やかな雰囲気である。
 展開部に入ると、提示部第1主題の緊迫感が戻ってくる。テンポはあまり速くなく、むしろ標準的であるが、ひしひしと伝わる重厚感が凄まじい。ホルンの音色も聴こえてくるが、それよりも木管楽器やヴァイオリンといった高音の楽器がよく鳴っているのが印象的である。。
 再現部においては、提示部第1主題のような迫力が再び戻るのだが、破壊力抜群の圧倒的な燃え盛る第1主題にはつい力が入る。可能な限り、大音量で気聴いておきたい。提示部第1主題でも相当の迫力であったが、それをはるかに上回る再現部第1主題は圧巻そのものである。その後の第2主題は非常に穏やかになり、さらにニ長調に転調するため、非常に明るく先ほどの激しい第1主題はどこへやら。意外と、クレッシェンドの抑揚が強い点も特徴といえようか。
 コーダも相当な迫力であり、再現部のような迫力が再び襲いかかってくる。金管楽器も相当音量が出ているのだが、フルート等の木管楽器もしっかり鳴っている。圧倒的な音楽にも関わらず、バランスの良い演奏だ。

第2楽章:Molto Vivace 冒頭の幕開けは迫力満点。しっかりとしたテンポで進められていく。1音1音丁寧ながらも、しっかりと音を鳴らし、木管楽器が高らかに鳴り響く繰り返しあり
 トリオも、主部とあまり変わらないテンポである。途中のウィンナ・ホルンのソロは非常に雄大で美しい木管楽器は穏やかに明るく曲を彩る。途中ヴァイオリンが徐々にクレッシェンドになっていく箇所は一直線であり、かつ木管楽器が美しく鳴っていることがよくわかる。全体的に包み込むような、そんな音楽が堪能できる。
 そして、主部が戻り、力強い演奏が繰り返される。

第3楽章:Adagio Molto E Cantabile
 冒頭、非常に遅めのテンポで穏やかな木管楽器によって幕を開ける。主題部に入ると、ゆったりとしたテンポで美しい弦楽器が第1主題を奏でるウィーン・フィルの伝統的で美しい弦楽器はいつ聴いても美しいものだ。リヒャルト・シュトラウスもレパートリーとするネルソンスだからこそ、ロマン溢れる演奏をクリ酷げるのだろう。第2主題に入るとより一層美しさが際立ち、うっとりとしてしまう。
 第3楽章は、変奏曲と理解するのが一般的であるから、美しい主題が形や調性を変えて繰り返し演奏される。そして、ホルンのソロ・パートの後、流れる弦楽器の第1主題変奏が登場する。
 第3変奏において、8分の12拍子による流れるような弦楽器はやや抑えめ。しかし、木管楽器の音色が自然で美しく歌い上げる。弦楽器が主役となって演奏することが多いが、木管楽器の美しいハーモニーが堪能できる。
 終わりに近づくにつれ、途中金管楽器のファンファーレが登場する。どっしりとしたテンポで堂々と鳴り響くトランペットと、重厚感あるティンパニが印象的。しかし、張りのあるお手本のようなトランペットの音色である。
 あっという間の16分である。第4楽章へ。

第4楽章:Presto, Allegro Assai
 Presto。テンポは速くなく、どっしりとしたテンポで幕を開ける。フォルテ(f)の部分は迫力十分に、ピアノ(p)の部分は繊細な音楽を築く
 Allegro assaiコントラバスとチェロによって超有名な主題が奏でられるが、非常に小さい音である。やがて、ファゴットが甘美な音色を響かせる箇所に代わるが、弦楽器の音色が美しいウィーン・フィルの伝統的で美しい弦楽器が冴え渡る。そして、金管楽器が加わるのなんと華々しいのだろう。暗闇から一気に太陽の光が差し込み、希望か何か前進的な要素を窺わせる。テンポもそこまで速くなく、実に荘厳で天国のような雰囲気である。
 Presto; Recitativo "O Freunde, nicht diese Töne!"; Allegro assaiバリトン歌手(ゲオルク・ツェッペンフェルト)の登場し、いよ合唱が伴う。テンポが多少速くなり、随所に微妙なアクセントが加わり、メリハリのついた演奏である。ネルソンスの若さのエネルギーが湧出しているのだろう。徐々に迫力を増していく。トランペットの音色もすごい
  Allegro assai vivace (alla marcia)テノール歌手(クラウス・フロリアン・フォークト)のソロパートも標準的なテンポである。弾むように歌うフォークとは、このピッコロの可愛らしい音色と見事に調和している。多少合唱は抑えめのようである。
 非常に複雑で格好良い間奏の後に超有名な箇所に入る。合唱も大迫力であり、トランペットの音色がよく響き渡っている。テンポもやや快速的であり、力強く演奏されている
 Andante maestoso。荘厳なトロンボーンによって始まる。ただ、少し気になるのが合唱がやや抑えめであることだ。録音の状況なのか不明だが、合唱の荘厳さがやや欠けている印象である。壮大な超有名部分の後の荘厳さに期待するのであるが、やや物足りない印象
 Allegro energico e sempre ben marcato。こちらは、高らかにソプラノの音色とトランペットの柔らかい音色に加え、ホルンの雄大な音色も聴こえる。弾むように進められているのだが、ネルソンスの力強さが相俟って迫力ある荘厳さが繰り広げられている。ホルンの音色がしっかりと聴こえてくる。
 Allegro ma non tanto男声合唱と女声合唱が交互に歌う。これが聴こえるともう終わってしまうのか、といつも思う。さて、テンポはやや快速的であり、強い推進力で進められていく。もはや世界的指揮者として巧妙なアンドリス・ネルソンスの勢いが十分に伝わってくる。
 Presto; Prestissimo。いよいよ最終部。異様なほどにピッコロの音色が目立ち、トランペット等の金管楽器が叫びを上げる。ネルソンスの力強さがここにて爆発する。最後の最後まで力強さは健在であり、聴くこちらもつい力が入る。一番最後にピッコロが力んでいるところも必聴だ
 
 ウィーン・フィルを振ったベートーヴェン交響曲全集は、ドイツ・グラモフォンにはイッセルシュテットベームバーンスタインアバド、ラトルといった巨匠が振った全集がある。その中に、アンドリス・ネルソンスが加わっているのだからウィーン・フィルからにも認められたと言っても過言ではないだろう。
 ベートーヴェン・ファンならば、手許に置いておきたい一枚である。

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オトマール・スウィトナーシュターツカペレ・ベルリン

評価:10 演奏時間:約71分【当方推薦盤】


第1楽章:Allegro Ma Non Troppo 心地よいテンポによって、幕を開ける。そして、力強い第1主題が奏でられる。この幕の開け方は、今後の作曲家に大きな影響を与える。この第1楽章は迫力満点なのだが、カラヤンとは違う迫力さであり、楽器のそのものの音色が調和された心地よい迫力なのだ。ゴツゴツとした印象でもなく、ふんわりとした柔らかさでもない自然なスタイル。「古きよきドイツの伝統」とするスウィトナーの特徴が表れている。第2主題も美しい木管楽器が奏でられている。
 展開部の力強い低弦楽器がメインとなる部分においては、力まずそのまま一直線に進んでいく。しかし、盛り上がるにつれて迫力が増していき、強い推進力も現れるスウィトナーの虜になる。
 再現部においては、提示部第1主題のような迫力が再び戻り、さらに強烈なティンパニも加わる。自然なスタイルを基調とするスウィトナーであるが、時には燃えるような燃焼度の高い演奏も随所に聴こえる。その反面、第2主題は木管楽器が楽しく歌っているのである。実に素晴らしい演奏である。聴くたびに新たな発見がある。
 コーダも十分な迫力であり、ベルリン・フィルを彷彿させるような金管楽器も鳴り響き、相当な音量を持って締めくくる

第2楽章:Molto Vivace 快速的テンポで進められる。冒頭の幕開けは迫力満点。そして、弾むようなテンポでどんどん進んでいき、随所のティンパニも力強い。遅いテンポで力強い足取りで進めていく演奏もあるが、スウィトナーはそうではない。繰り返しあり
 トリオも、快速的テンポを維持して進められる。この木管楽器の可愛らしい主題とそれを支えるファゴットの刻みがたまらない。主部は早めのテンポ、トリオはゆったりとしたテンポで演奏されるものが多いと思うが、トリオは早い方が好み。このトリオの主題は快速的テンポで奏でられた方が爽快感が増すからである木管楽器が高らかに楽しそうに歌い、弦楽器が厚みを増していき一つの至高の音楽が誕生するスウィトナーの素晴らしい音楽が堪能できる。
 そして、主部が戻り、力強い演奏が繰り返される。

第3楽章:Adagio Molto E Cantabile さて、強い推進力を持つ演奏や、快速的テンポで進められてきたスウィトナーである。しかし、第3楽章は約17分と遅めのテンポで演奏される。冒頭、穏やかな木管楽器によって幕を開け、ゆったりとしたテンポで美しい弦楽器が第1主題を奏でる。本当に美しい。ただその一言だけで十分、という演奏である。第2主題も神秘的な美しさであり、時が経つのを忘れさせる。幸福な音楽とはこのような演奏をいうのか?
 第3楽章は、変奏曲と理解するのが一般的であるから、美しい主題が形や調性を変えて繰り返し演奏される。そして、ホルンのソロ・パートの後、流れる弦楽器の第1主題変奏が登場する。
 第3変奏において、8分の12拍子による流れるような弦楽器は非常に美しく、かつ、木管楽器の音色も自然で美しく、美しい音楽が折り重なって紡ぎ出される最高の音楽である。
 終わりに近づくにつれ、途中金管楽器のファンファーレが登場する。このトランペットも、自然な音色であり、耳をつん裂くような鋭い音色ではない。しかし、張りのあるお手本のようなトランペットの音色である。
 そして再び静寂になり、第4楽章へ。
第4楽章:Presto, Allegro Assai 迫力ある幕開け。その後の、レチタティーヴォにおいては、途中第1楽章第1主題が再び登場するなど、色々要素が詰まっている。自然な音色によって、冒頭部分が進められている
 そして、コントラバスとチェロによって超有名な主題が奏でられる。ここから、楽器が加わり、壮大な音楽へ変わっていくのである。コントラバス・チェロ→ヴィオラファゴット→ヴァイオリンと増えていくのであるが、どの楽器も非常に美しい音色を響かせる。テンポも標準的で素晴らしい。その後、トランペットの音色がが加わると神聖な雰囲気となり、天国にいるかのような美しさに感動する。第九ってこれほど美しい作品だっけ?
 バリトン歌手の登場し、いよ合唱が伴う。オーケストラの音色も自然で美しく、合唱も自然で美しい。特異な演奏もなく、安心感がある。ベームとは違った、これまた本格的な演奏といえよう。ソプラノの特徴的な高音もしっかりと響いている。
 テノール歌手のソロパートも標準的なテンポであり、合唱もメリハリがあり。非常に聴きやすい。その後、複雑な箇所となるが少しテンポを早めて快速的に演奏する。その後、超有名な合唱部分に入るが、力強いテンポに加え、随所に聴こえるトランペットが勇壮さを盛り上げる。合唱も力強い。
 その後、神聖なコーラスも天国にいるかのような壮大さである。
 最後に、Prestissimoに入る。早いテンポで突き進む。シンバルの音は控えめであり、オーケストラと合唱の一体感が確認できる。それにしても、トランペットの音色がよく響き、どこまで響いているのか。ベルリン・フィル顔負けである。
 最後も、トランペットが勇壮な音色を響かせて締め括る。
 ここまで満足度が高い演奏もそうそうないだろう…。手許においておきたい一枚である!

ヴィルヘルム・フルヴェングラー:バイロイト祝祭管弦楽団スウェーデン放送所音源)

評価:7 演奏時間:約76分


概説
 この演奏についてはあらかじめ言及しなければならないことがある。
 本演奏は、1951年のバイロイト音楽祭の録音であるが、この演奏については従来から論争があった。いわゆる、旧EMIレーベルより発売された演奏と、バイエルン放送音源の相違である。
 同じ1951年のバイロイト音楽祭についての演奏であるが、聴き比べると全く異なる演奏である。もっとも、第4楽章最終部の爆速はフルトヴェングラーによるものであることについて争いがないと思われる。しかし、随所異なる部分がある
 おそらく、どちらかが本番による演奏であり、どちらかがゲネプロによるものであるというのが従来の論争であった。
 そこで、今回取り上げるスウェーデン放送所蔵音源が従来の論争に決着をつけたのだ!。私の見解では、どちらかが本物であって、新たな音源が発見されたわけではないということだ。

第1楽章:Allegro Ma Non Troppo 演奏の前に、ドイツ語、フランス語、英語、スウェーデン語による「1951年バイロイト音楽祭バイエルン放送がリヒャルト・ワーグナー音楽祭(バイロイト音楽祭)のオープニング・コンサートをバイロイト祝祭劇場からドイツ・オーストリア放送、英国放送、フランス放送、ストックホルム放送を通じてお届けします。曲はヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮によるベートーヴェン交響曲第9番です。」という放送が入っている。

 冒頭、ゆっくりとしたテンポによって幕を開ける。そして、ゆったりとしたテンポで大変力強い第1主題が奏でられるフルトヴェングラー独特のテンポによって開始される第1楽章は異様な雰囲気が漂う。ただ、当時の放送をそのまま再現しているせいか、ちょっと音量が小さめ。ボリュームは大きめにしておくことが望ましい。第2主題も引き続き、遅めのテンポでゆっくりと奏でられている。随所にノイズが入っているが止むを得ない。
 展開部に入ると、提示部第1主題の緊迫感が戻ってくる。フルトヴェングラー特有の緊張感、暗さがよくわかる。低減楽器も聴こえるのだが、少々ヴァイオリン等の高音が目立つ印象である。テンポはそこまで速いのだが、独特の異様な雰囲気はフルトヴェングラーならではの空気感に包まれる。
 再現部においては、第1主題において十分な気合いが伝わり、フルトンヴェグラー特有の強烈なクレッシェンドによるティンパニは圧巻の一言。思わずのけぞってしまう。その後の第2主題はゆったりと穏やかに変わる。まるでベートーヴェン交響曲第6番第4楽章→第5楽章へと移り変わるようだ。
 コーダも相当な迫力であり、強烈である。随所ものすごくテンポを落としたりしており、約18分の第1楽章を終える。
 第2楽章まで1分近くあるのだが、それは当時の雰囲気を残すため、カットをしなかったことによる。

第2楽章:Molto Vivace 冒頭の幕開けはティンパニに穴があくくらいの強烈な音色。ヴァイオリンのアンサンブルが少しバラけている感じもするが…。あまりに気しないでおこう。少しノイズが気になる。繰り返しあり
 トリオは、微妙に少しずつテンポが遅くなっている。フルトヴェングラーの非常にわかりにくいとされる指揮法によって生み出される音楽は、緻密で独特な音色を響かせる。木管楽器の軽やかな音色と、遅いテンポによる重厚感あふれる弦楽器の音色を響かせる。この押し寄せる感じがたまらない。
 そして、主部が戻り、力強い演奏が繰り返される。

第3楽章:Adagio Molto E Cantabile 冒頭、遅めのテンポで穏やかな木管楽器によって幕を開ける。主題部に入ると、かなりテンポで美しい弦楽器が第1主題を奏でる。「爆速」とのイメージが強いフルトヴェングラーであるが、時には遅い演奏もするのである。実際に、この第3楽章は約19分かけて演奏しているのだ。遅めのテンポによる第3楽章もまた素晴らしい。フルトヴェングラー特有のクレッシェンドがよくわかる。しかし、これだけ遅いと演奏者も大変だろう…。
 遅めのテンポによるアダージョは弦楽器が美しく謳っている
 第3変奏において、8分の12拍子はかなり遅いテンポで進められていく。弦楽器の清らかな音色がしっかりと響き渡っている。遅いテンポだが急がず、音楽に身を預けて聴くべきである。それにしても、かなり遅い(笑)。
 終わりに近づくにつれ、途中金管楽器のファンファーレが登場する。トランペットの張りのある音色もしっかりと確認できる。当時の音色はどのような響きをしていたのだろうか。
 約19分と遅い第3楽章から第4楽章へ。

第4楽章:Presto, Allegro Assai
 Presto。標準的なテンポであるが、トランペットの音色がよく目立つ。低弦のレチタティーヴォが登場するのだが、フルトヴェングラー独特のアゴーギクが冴え渡る
 Allegro assai長い沈黙の後、非常に小さな音でコントラバスとチェロによって超有名な主題が奏でられる。やがて、ファゴットが甘美な音色を響かせる箇所に代わるが、やや弦楽器の音が大きくファゴットの音色が少し小さめになってしまった。しかし、しっかりと聴こえる。そして、金管楽器が加わるのなんとトランペットの高らかな音色が響き渡る。最初の低弦楽器の時から、徐々にテンポが速くなっている。
 Presto; Recitativo "O Freunde, nicht diese Töne!"; Allegro assaiバリトン歌手(オットー・エーデルマン)の登場し、いよ合唱が伴う。古い音源であるものの、しっかりと歌が聴こえる。音が大きい箇所はノイズは全く気にならず、オーケストラと合唱のハーモニーも難なく聴けるのが良い。合唱も相当の気合が入っているようで、熱量が伝わる
  Allegro assai vivace (alla marcia)テノール歌手(ハンス・ホップ)のソロパートは多少速めのテンポである。ノイズによって最初の音はほぼ聴こえない。ピッコロの音からだんだんシンバルの音しか聴こえなくなってくるが止むを得ないだろう(笑)
 非常に複雑で格好良い間奏の後に超有名な箇所に入る。途中、音量が一時的に小さくなる箇所があるが、「これはスウェーデン放送所蔵のマスターテープに起因するものです。中継放送をスウェーデン放送がテープに同時収録している際に起こったと思われ、『BIS』はその音を修正せずそのまま使っています。」とのこと。超有名な合唱箇所はフルトヴェングラーは多少速めのテンポで演奏する。活発的で溌剌とした第九は聴いていて心地よく、元気が湧いてくる。。
 Andante maestosoトロンボーンによって始まる。テープの影響か音量に波があり、荘厳なコーラスの部分はやや迫力がかけてしまった。しかし、相当な声量であることは十分に窺える。ボリューム調節を強いられるのがやや煩いとなってしまう。
 Allegro energico e sempre ben marcato。高らかに歌い上げるソプラノ等、やや速めのテンポで颯爽とかける。個人的にこの箇所ものすごい好きなのであるが、随所ティンパニが入ったりと美しさと力強さが相俟っているのだが、この点についても十分に伝わってくる
 Allegro ma non tanto男声合唱と女声合唱が交互に歌う。テンポは標準的であり、軽やかに演奏される。途中トランペットがやたら目立っている。どうしたんだろう?
 Presto; Prestissimo。いよいよ、最終部である。合唱は相当な声量が出ているのだろう、気迫がものすごい。そして、オーケストラの熱量もものすごいフルトヴェングラーの熱量恐ろしき。そして、注目の一番最後の部分は相変わらずの爆速であり、シンバルがずれてしまっているが、そんなのはお構いなし、超特急で締めくくる

 そして、第九では珍しく、終わってから数秒沈黙があって拍手となっている。ブラボーの嵐が凄まじい。当時の臨場感が伝わってくる。

 さて、フルトヴェングラーの「バイロイトの第九」論争に終止符をつけたといわれる演奏であるが、放送当時をそのまま忠実に収録したようである。そのため、ノイズ等があったりするが、当時のライヴ感よりかは、当時のラジオを聴いてる感覚と表現した方が正確だろう。したがって、音質の面から評価は「7」としたのである。
 最後にも、放送が収録されている。
 

ヴィルヘルム・フルヴェングラー:バイロイト祝祭管弦楽団

評価:10 演奏時間:約74分【当方推薦盤】

第1楽章:Allegro Ma Non Troppo 冒頭、雑音が目立つがゆっくりとしたテンポによって幕を開ける。そして、ゆったりとしたテンポで大変力強い第1主題が奏でられるフルトヴェングラー独特のテンポによって開始される第1楽章は異様な雰囲気が漂う。ただ、音質は大変素晴らしく、大迫力演奏が鮮明に聴こえる第2主題も引き続き、遅めのテンポでゆっくりと奏でられているスウェーデン盤にあった随所にノイズは全く気にならない程度に取り除かれている。そして、重要なのは3分14分あたりの観客の咳である。私が確認したところ、スウェーデン盤にも同じような箇所に同じような咳が入っていた。そうすると、本演奏が本物であると位置付けられる。緊張感ある提示部を鮮明な音色で楽しむことができる。
 展開部に入ると、提示部第1主題の緊迫感が戻ってくる。フルトヴェングラー特有の緊張感、暗さがよくわかる。低減楽器も重厚感あふれる音色と共に、ヴァイオリンの音色が折り重なってくる。テンポはそこまで速いのだが、独特の異様な雰囲気はフルトヴェングラーならではの空気感に包まれる。高らかに鳴り響くヴァイオリンが鮮明に聴こえ、それを支えるトレモロもはっきりと聴こえる
 再現部においては、第1主題において十分な気合いが伝わり、気迫溢れる弦楽器とともに襲いかかってクレッシェンドは実に恐ろしい。なお、弦楽器を中心に拾っているようであり、ティンパニはあまり目立たないものとなってしまった。その後の第2主題はゆったりと穏やかに変わる。まるでベートーヴェン交響曲第6番第4楽章→第5楽章へと移り変わるようだ。非常にテンポを遅くして落ち着いた印象を与える。
 コーダもテンポを遅して、圧倒的な音圧を持って襲い掛かる。随所ものすごくテンポを落としたりしており、約18分の第1楽章を終える。
 スウェーデン盤と異なり、第2楽章までの間はカットされている。

第2楽章:Molto Vivace 冒頭の幕開けは弦楽器は迫力ある音色を響かせる。気合の入った弦楽器が主部を力強く刻んでいく。スウェーデン盤にはノイズが気になったが、ここも全くと言って良いほどノイズが取り除かれている。繰り返しあり
 トリオは、微妙に少しずつテンポが遅くなっている。フルトヴェングラーの非常にわかりにくいとされる指揮法によって生み出される音楽は、緻密で独特な音色を響かせる。木管楽器の軽やかな音色と、遅いテンポによる重厚感あふれる弦楽器の音色を響かせる。ただし、ちょっとホルンの音色が小さめ。ホルンの雄大な音色がポイントとなるのだが、ちょっと残念だ。一方、弦楽器の音色はしっかりと聴こえてくる。遅めのトリオも良いものだ。
 そして、主部が戻り、力強い演奏が繰り返される。

第3楽章:Adagio Molto E Cantabile 冒頭、遅めのテンポで穏やかな木管楽器によって幕を開ける。主題部に入ると、かなり遅いテンポで美しい弦楽器が第1主題を奏でる。「爆速」とのイメージが強いフルトヴェングラーであるが、時には遅い演奏もするのである。実際に、この第3楽章は約19分かけて演奏しているのだ。遅めのテンポによる第3楽章もまた素晴らしい。フルトヴェングラー特有のクレッシェンドがよくわかる。しかし、これだけ遅いと演奏者も大変だろう…。
 遅めのテンポによるアダージョは弦楽器が美しく謳っている。そして、音質が非常に良好なことも相まって、弦楽器の美しさがよくわかる。
 第3変奏において、8分の12拍子はかなり遅いテンポで進められていく。弦楽器の清らかな音色がしっかりと響き渡っている。遅いテンポだが急がず、音楽に身を預けて聴くべきである。それにしても、かなり遅い(笑)。
 終わりに近づくにつれ、途中金管楽器のファンファーレが登場する。トランペットの張りのある音色もしっかりと確認できる。このトランペットの音色はどこまでも響いていきそうである。
 約19分と遅い第3楽章から第4楽章へ。

第4楽章:Presto, Allegro Assai Presto。標準的なテンポであるが、トランペットの音色がよく目立つ。低弦のレチタティーヴォが登場するのだが、フルトヴェングラー独特のアゴーギクが冴え渡る
 Allegro assai長い沈黙の後、非常に小さな音でコントラバスとチェロによって超有名な主題が奏でられる。やがて、ファゴットが甘美な音色を響かせる箇所に代わるが、やや弦楽器の音が大きくファゴットの音色が少し小さめになってしまった。しかし、しっかりと聴こえる。そして、金管楽器が加わるとトランペットの高らかな音色が響き渡る。迫力満点の演奏が繰り広げられる。最初の低弦楽器の時から、徐々にテンポが速くなっている。
 Presto; Recitativo "O Freunde, nicht diese Töne!"; Allegro assaiバリトン歌手(オットー・エーデルマン)の登場し、いよ合唱が伴う。古い音源であるものの、しっかりと歌が聴こえる。音質も非常に良好であるから、合唱の美しいハーモニーがよくわかる。合唱も相当の気合が入っているようで、熱量がより一層伝わる。また、フルトヴェングラー特有の思い切った強弱もよくわかる。
  Allegro assai vivace (alla marcia)テノール歌手(ハンス・ホップ)のソロパートは多少速めのテンポである。ノイズは全くなく、ハンス・ホップの迫力ある歌声とピッコロの音色もはっきりと聴こえる。シンバルとバスドラムの音色は確かに大きいが、他の楽器等をかき消すというほどではない。
 非常に複雑で格好良い間奏の後に超有名な箇所に入る。途中、スウェーデン放送音源では音量が一時的に小さくなる箇所があるが、この演奏では全くそのような場面はない。気をつけていないと、どこの部分かわからないほどだ。超有名な合唱箇所はフルトヴェングラーは多少速めのテンポで演奏する。大迫力の合唱とオーケストラが見事に調和され、言葉には言い表せない音楽が広がる
 Andante maestosoトロンボーンによって始まる。かなりビブラートを効かせているようだ。1951年と昔に録音されたものとは思えないほど、音質が良く、荘厳な合唱も十分に聴こえる。ボリューム調節も全く不要といえよう。
 Allegro energico e sempre ben marcato。高らかに歌い上げるソプラノ等、やや速めのテンポで颯爽とかける。個人的にこの箇所ものすごい好きなのである。引き続いて大迫力の合唱と、気合の入った金管楽器が鳴り響く。本当に素晴らしい迫力である。
 Allegro ma non tanto男声合唱と女声合唱が交互に歌う。テンポは標準的であり、軽やかに演奏される。スウェーデン放送音源では、途中トランペットがやたら目立っていたが、本演奏でも確かに目立つが一人歩きして昼ようなものではない。。特に違和感なく聴くことができる。
 Presto; Prestissimo。いよいよ、最終部である。合唱は相当な声量が出ているのだろう、気迫がものすごい。そして、オーケストラの熱量もものすごいフルトヴェングラーの熱量恐ろしき。そして、注目の一番最後の部分は相変わらずの爆速であり、シンバルがずれてしまっているが、そんなのはお構いなし、超特急で締めくくる。このシンバルがずれているのも、この演奏で確認することができる。

 なお、拍手はなし。

 上記の通り、バイエルン放送音源が本物の演奏と結論づけることができるだろう。スウェーデン放送音源は当時の放送をそのまま再現しており、ノイズ等が入ってしまったが、臨場感はこちらの方が上だろう。しかし、鑑賞とするには良好な音質であることが要求される。バイエルン放送音源は全くといって良いほどノイズは除去されており、各楽器もよく聴こえ、鮮明に聴こえるのである。
 したがって、この演奏はクラシック音楽好きにとっては必ず持っておくべき一枚であろう。

www.hmv.co.jp

*1:合唱交響曲 - Wikipedia

*2:作品35。「前奏曲 嬰ハ短調」作品3-2ではない。