鵺翠の音楽の世界と読書の記録

クラシック音楽を趣味とする早大OB

今週のお題「私の好きな交響曲ランキング」

Ludwig Van Beethoven [1770-1827]

introduction

 今週在宅勤務ということもあって余裕があり、久しぶりにブログを書いてみよう思ったところ、今週のお題「私の〇〇ランキング」ということでこれをお題に書いてみようと思った。
 ということで、私のお題は「私の好きな交響曲ランキング」にしてみた。しかし、このお題にしたものの一つ懸念がある。それは、一つの作曲家に偏りすぎて「〇〇の交響曲ランキング」化しないかということだ。私自身幅狭く深く聴くタイプなのでその傾向にありがちなのである。そこで思い切って、同じ作曲家は選ばないということにした。例えば、ベートーヴェン交響曲をひとつ選んだら他はランキングに掲載しないということである。そして、執筆している今、どのようなランキングになるか全く予想していない(第1位を除いて)。
 結果どのようなランキングになるのか私自身楽しみでもある。そして、掲載した曲の推薦盤などがあったらそれも引用するつもりである
 以前、はてなブログ10周年記念というテーマをお題に「私が選ぶ好きな交響曲10選」を執筆したことがある。これは同一の作曲家から複数の作品を掲載しているので、今回のランキングとは異なるので、ご興味があったら参照されたい。
law-symphoniker.hatenablog.com

第1位:ベートーヴェン交響曲第第9番ニ短調《合唱付き》

 第1位は文句なしのベートーヴェン交響曲第第9番ニ短調《合唱付き》である。私自身クラシック音楽の中での最高傑作といえばこの作品であると思っている
 第1楽章から第4楽章の全て一部分を切り取っても素晴らしい。第1楽章の厳しく緊張感の漂う荘厳な音楽。第2楽章は第4楽章の一部分が垣間見えるような美しく軽快なトリオが印象的。第3楽章のアダージョ美しく清らかな音楽。そして、長大な第4楽章は声楽も伴う圧倒的な音楽。全ての魅力が詰まった最高傑作である。
 そして、言葉は悪いかもしれないが多少崩れたとしてもそれなりに形のある演奏になる構成も素晴らしい。とても耳が聴こえない作曲家が作った音楽とは思えない完成度の高さにはいつ聴いても驚かされるばかりである。


第2位:ブルックナー交響曲第5番変ロ長調

 人気のあるブルックナー交響曲といえば、第4番《ロマンティック》・第5番・第7番・第8番・第9番とある。特に第7番・第8番・第9番の3つの作品は、ブルックナーの中でも屈指の傑作とされる。個人的に第8番と第5番をどちらにするか迷うところであるが、やはり交響曲第5番変ロ長調を選んだ。
 その理由として、一番ブルックナーらしい作品だからだ。特に第4楽章のフィナーレは音楽的建造物という言葉が相応しいように、対位法を駆使した重厚な音楽が要塞のように聳え立っているのである。このフィナーレは圧巻であり、ブルックナーの魅力が詰まった作品である。一方で第8番は「宇宙」と表現されることもあるが、第5番は「要塞」の文言が相応しいのではないか。

第3位:マーラー交響曲第9番ニ長調

 マーラーは全ての交響曲が魅力的であるからどれを掲げようか悩んだ。結果、やはり最高傑作と称される交響曲第9番ニ長調に決めた。
 マーラー自身の「死」という概念に襲われながら作曲したという逸話もあり、第1楽章冒頭部分から不安定で不気味な音楽なのである。ニ長調というと、ベートーヴェンの『交響曲第2番』、ブラームスの『交響曲第2番』、パッヘルベルの『3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ』*1と明るく、明快な音楽がたくさんある。しかし、交響曲第9番ニ長調は違う。不気味で不安定ということもあるから調性が安定せず、転調を繰り返したりしている。この「死」という恐怖から踠き苦しむ第1楽章の内容は実に濃い。一方で第2楽章と第3楽章は軽快な音楽であるし、第3楽章の途中はバッハの『管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV1068』の第2曲「エール (Air)」*2のような神秘的な場面さえ登場する。そして、第4楽章のアダージョマーラーの死を彷彿させるような音楽である。
 さらにこの作品をランキングに掲載した理由がもう一つある。この不気味で不安定な理由として調性が安定しないと前に述べた。これがのちに、新ウィーン楽派の時代を築き上げた作曲家の1人であるアーノルト・シェーンベルクが開発した『十二音技法』の起因となっている。このように後世に大きな影響を与えた作品でもあるということでラインナップした。

第4位:ブラームス交響曲第1番ハ短調


 ドイツ音楽を好む私にとってこの作品を外すことはできない。
 着想から完成まで約23年も要した作品である。当然のその内容は十分に濃いものであり、指揮者のハンス・フォン・ビューローベートーヴェン交響曲第10番だ」と評価したほどだ。
 特に第1楽章の迫力ある序奏部が印象的だ。ハ短調の音階で悲痛な叫びを上げるような上昇音階は一度聴いただけで頭に残る。そして、伝統的な古典形式の楽曲構成から離れて、第2楽章と第3楽章といった中間楽章の両方に緩徐楽章を置いたというのは、尊敬するベートーヴェンから離れたブラームスオリジナルの発想だと言える
 そして、第4楽章はハ長調へ変わり、最後は圧倒的なフィナーレで堂々と締めくくる。このハ短調ハ長調という「暗→明」と変化する作品は他に有名な作品がある。そう、あの有名なベートーヴェン交響曲第5番ハ短調である。ベートーヴェン交響曲第5番の構成はブラームスのこの作品に大きな影響を与えた作品である。
 特に、このブラームス交響曲第1番ハ短調ベートーヴェンには無いブラームス特有の弦楽器の重厚さが存分に堪能できる素晴らしい作品なのである。

第5位:フルトヴェングラー交響曲第2番ホ短調

 さて、指揮者として絶大な人気を誇るヴィルヘルム・フルトヴェングラーであるが、彼自身は作曲家でもあったのだ。
 ただ、指揮者として輝かしい実績を残しており、作曲家としてのフルトヴェングラーは影に潜んでしまう状況だった。その中で私はこのフルトヴェングラー交響曲第2番ホ短調はもっと評価されても良い作品では無いかとずっと思っている。ブルックナーのような構築性、ワーグナーのような壮大さといったドイツ音楽の要素が詰まっている大作である
 ただ、ラフマニノフ交響曲第1番と類似して全ての楽章が木管楽器によって幕を開けるのである。しかし、内容は濃いものであってブルックナー交響曲第5番のような緻密性さえ感じられるのである。全体として約80分程度ある作品であって全て聴き通すとなると相当の気力が必要ではある。もっとこの作品をコンサート等で取り上げられたら良いのになぁと思う作品である。

(上記は改訂版の演奏である)

第6位:ドヴォルザーク交響曲第9番ホ短調新世界より

 音楽室に飾ってある肖像画でお馴染みのアントニオン・ドヴォルザーク。その中でも最も有名なのがこの交響曲第9番ホ短調新世界よりではなかろうか。
 第2楽章のラルゴと第4楽章の冒頭部分は超がつくほど有名な作品である。クラシック音楽に馴染みのない方でもどこかで必ず聴いたことのある作品である。しかし、私が一番好きなのは第3楽章のスケルツォである。時にティンパニと火花を散らすような演奏もある一方で、木管楽器とチェロが甘美な音色を響かせる場面もある。このような多彩な顔をみせる第3楽章がこの中で一番好きな部分なのである。特にバーンスタイン/NYPとの演奏が火花を散らしたバチバチな演奏なので是非一度聞いてみていただきたい↓

第7位:ステンハンマル:交響曲第2番ホ短調

 さて、また聴いたことのない作曲家が登場してきた。スウェーデンの作曲家であるヴィルヘルム・ステンハンマルである。
 この曲と出会ったのは、現役世界界高齢指揮者であるヘルベルト・ブロムシュテット*3の主要なレパートリーのひとつである。
 第1楽章冒頭の勇ましい弦楽器の第1主題に惹かれ、その後の木管楽器が調和されてくるとブルックナーとは異なる北欧らしい清らかな音楽になる。そして、私が最も印象に残っているのが第3楽章である。古典派音楽のような雰囲気が垣間見えるドイツ・オーストリア的な要素があるからだ。モーツァルト交響曲第40番第3楽章やシューベルト*4交響曲第5番第3楽章の雰囲気が感じられる。
 聴いたことのないマイナーな作曲家であるが一度聴くとなかなか頭から離れない主題が印象的である。

第8位:モーツァルト交響曲第35番ニ長調《ハフナー》

 数多くの作品を書き上げたヴォルフガング・アマデウスモーツァルト交響曲も全て41曲あって、その中でも、第40番第41番二大巨頭と言っても過言ではないほどの作品である。
 しかし、私はモーツァルトの中で一番好きなのは、なんと言ってもこの交響曲第35番ニ長調《ハフナー》である。
 何よりも第1楽章冒頭からいきなり2オクターブ上がる幕開けが颯爽として気分が良いからである。そして、モーツァルトらしい溌剌とした明るい音楽であり、私の中でモーツァルトのイメージに一番違いこの交響曲第35番ニ長調《ハフナー》なのである。
 そして、第4楽章はAllegroではなく「presto」となっており、快速的テンポではなく急行や特急のようなテンポで演奏されるから尚更颯爽として気分が良いのである。最も尊敬する指揮者としてカール・ベームがいるが、ベームのテンポでは全然物足りない…。

第9位:グラズノフ交響曲第5番変ロ長調

 これまたマイナーな作曲家が出てきた。尤も、ある程度クラシック音楽に携わってきた方は聴いたことあるかもしれない。アレクサンドル・グラズノフというロシアの作曲家である。
 特に第4楽章が非常に激しく活発的な音楽が印象である。チャイコフスキー交響曲第4番第4楽章に劣るかもしれないが指揮者によっては破壊力満点の大迫力な演奏を展開することもある*5。特に最終部のフィナーレは圧巻の演奏である。一方で第1楽章冒頭の重厚感あふれる弦楽器のトゥッティもなかなか魅力的な場面である。
 ストレス発散にはもってこい?是非第4楽章の迫力ある演奏を聴いて気分爽快になっていただきたい。

 

第10位:ハイドン交響曲第88番ト長調


 フランツ・ヨーゼフ・ハイドンは、交響曲の父」と呼ばれ数多くの交響曲を残した。その数は108番まである*6。数多くの交響曲の中には『哲学者』*7や『校長先生』*8といった少々変わった愛称がある。この交響曲第88番ト長調には『V字』という愛称が付されている。
 尤も、この作品は小規模なものでクラリネットトロンボーンといったベートーヴェン以降の作曲家ではよく使われていた楽器が除かれている。そのため、典型的な古典派音楽という印象がある。
 不思議とこのハイドン交響曲第88番ト長調ヴィルヘルム・フルトヴェングラーの指揮でしか聴いたことがない。
 爆速で狂人みたいな演奏を展開するヴィルヘルム・フルトヴェングラーであるが、第4楽章終盤のテンポはやはり異常なもので弦楽器が擦り切れてしまいそうな勢いでテンポである
 と思っていたら、レナード・バーンスタインがそれを上回るような演奏をウィーン・フィルハーモニー管弦楽団としていたのである。そして面白いことに、指揮をしない指揮者となっている。4分弱の短い動画なので是非一度見ていただきたい。

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なお、上記の演奏は第4楽章のみアンコールの時の映像である。
フル動画は下記に掲載しているのでお時間があったら視聴していただけたら幸いである。

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*1:カノンで有名な作品

*2:「G戦場のアリアとして有名な作品

*3:2024年6月8日現在

*4:シューベルトはロマン派音楽の作曲家に位置付けられるが、作品の具体例として引用した。

*5:例えば、エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮の演奏が挙げられる

*6:中には一部ハイドン作ではないと疑問が呈されているものも含まれている

*7:交響曲第22番

*8:交響曲第55番