Symphonikerのひとりごと

クラシック音楽を趣味とする早大生

【N響】第1941回 定期公演 Bプログラム in サントリーホール

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はじめに

 本日は、NHK交響楽団第1941回定期公演Bプログラム。なんといってもヘルベルト・ブロムシュテットベートーヴェンだろう。世界最高のベートーヴェン指揮者でもあるヘルベルト・ブロムシュテットでしかも交響曲第5版である!そして、オーケストラは親密な関係を持つNHK交響楽団。これはもう行くしかない。
 なお、ヴィルヘルム・ステンハンマルブロムシュテットの重要なレパートリーの一つである。ステンハンマルは、スウェーデン出身の作曲家・指揮者であり、同国出身のブロムシュテットにとっても重要なレパートリーともいえる要素であろう。
 世界最高齢現役指揮者を生で見られ、その指揮者によるベートーヴェンば聴けるとは唯一無二の機会だろう。ブロムシュテットの指揮のスタイルは以下の記事を参照されたい。
law-symphoniker.hatenablog.com
 実際に、ブロムシュテット指揮:ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団ベートーヴェン交響曲全集を購入し、1つの愛聴盤となった。ブロムシュテットベートーヴェンは非常に明晰であり、非常にスッキリした印象である。そして、AプログラムのブロムシュテットN響(特にニールセン)は凄まじかったらしく、94歳とは思えない音楽作りに感動したそうな。
 世界最高齢現役指揮者ヘルベルト・ブロムシュテットと親密な関係を築き上げたNHK交響楽団とのベートーヴェンは如何に!?

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本日のプログラム

www.nhkso.or.jp

ステンハンマル:セレナード

第1楽章:Overtura

第1楽章〈序曲〉は謝肉祭の喧騒を表すかのような陽気な気分と静謐かつ繊細な部分が交替する導入部で始まる。主部の主要主題は導入部の喧騒に基づく一方で、副次主題は厳かな聖歌を思わせる。再現部でこの聖歌に喧騒が顔を出す点が興味深い。 中間の3つの楽章は休止なしで続けるよう指示がある。
フィルハーモニー10月号より)

 マスクをつけてマエストロが登場。そして、一礼をし、マスクを外して曲が始まる。
 上記解説のように静謐かつ繊細な部分が交替する導入部で始まる。早速ブロムシュテットの特徴である繊細でシャープな弦楽器がホール内を一気に彩った。そして、ヴァイオリン・ソロは、コンサートマスターマロさんこと、篠崎史紀先生美しい甘美な音色が響き渡った
 副次主題はN響の荘厳で美しい音色に包まれ、ブロムシュテットの指示だろうか、透き通るような極めて透明度の高い音色が響き渡った。甘美な副次主題と、導入部の主要主題が交互に登場し、非常にメリハリのついた第1楽章である。最後は静かに終わる。

第2楽章:Canzonetta

第2楽章〈カンツォネッタ〉は3部形式による。ワルツにも似たリズムでクラリネットから憂いを持った歌が流れ始める主部に対し、長調へ転じる中間部は弦の響きが特徴的。
フィルハーモニー10月号より)

 民族的な三拍子。弦楽器のリズムに合わせて、美しいクラリネットが主部を奏でた。何故だろう。主役のクラリネットはもちろんであるが、それを支える弦楽器のリズムを刻む音が極めて美しく、クラリネットの甘美な音色を一層引き立てたのだ。第1楽章副次主題と同様に、高音→低音と音域の広い独特な主題は非常に印象深い。
 ここでも、ヴァイオリン・ソロがあり、マロさんの美しい弦楽器が響き渡った。
 第2楽章〜第4楽章は休みなし。続けて演奏される。

第3楽章:Scherzo

第3楽章は性格の異なるリズム が争い合うかのようなスケルツォで、作曲者自身は「粗野な間奏曲」と呼んだことがある。
フィルハーモニー10月号より)

 ブルックナー交響曲第5番第3楽章、同交響曲第6番第3楽章のスケルツォのような雰囲気である。決して94歳とは思えないような強い推進力で進んでいく。中間部(トリオ?)で、ホルンの牧歌的な主題が非常に印象深い。とにかくN響のホルンが凄かった!ステージ正面左側に座っていたせいか、ホルンの響きに圧倒された。
 最後にホルンの牧歌的な主題がシンバルを伴ってトランペットで演奏されるのだが、ものすごい迫力であり、ホール内は音楽の泉で溢れかえった

第4楽章:Notturno

第4楽章は夜なき鶯の模倣のような管楽器のソロもあり、表題の〈夜想曲(ノットゥルノ)〉のとおり、喧騒後の夜の静けさを表現していると思われる。途中で第3楽章の断片が現れるのは喧騒がまだ残っていることを示しているのだろうか。
フィルハーモニー10月号より)

 激しい第3楽章の次は緩徐楽章で一休み。N響の美しい弦楽器が響き渡り、非常に明瞭で繊細な響きであった。ブロムシュテットの醍醐味の一つである、シャープな美しさはここにあり!

第5楽章:Finale

最後の第5楽章は〈終曲〉とだけ題されてはいるが、夜明けを示唆するかのように、躍動的な音楽が現れる一 方で、雄大な歌も顔を出し、楽章全体をシンフォニックな響きへと誘っていく。
フィルハーモニー10月号より)

 セレナードの中でもっとも長い。第4楽章の雰囲気が継承されて第5楽章に入るのだが、徐々に盛り上がっていき、第1楽章のような明るさが登場する。
 最初からそうだったのだが、弦楽器、木管楽器金管楽器と全てが一体となり、ひとつの素晴らしい作品が出来上がっていった
 第5楽章は弾むような場面が多いため、ブロムシュテットは笑顔で指揮をしていたに違いない。僅かに見えた横顔は常に口角が上がっており、心から演奏を楽しんでいたに違いなかろう
 終わりに近づくとシンバルも追加され、非常に迫力ある演奏が繰り広げられた。とても94歳とは思えない音楽作り。その後は、弦楽器が美しい音色を奏でるも、最後は冒頭の弾むような主題が静かに奏でられ、本曲を閉じる。
 まだ、前半だというのにものすごい拍手だった。ひとつのコンサートが終わったかのような熱狂ぶりだった。聴衆も演奏者もブロムシュテットもハイテンションだったに違いなかろう
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ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調

第1楽章:Allegro Con Brio

 本日のメインディッシュ、ベートーヴェン交響曲第5番冒頭非常に厳しい運命動機を奏でたインパクト大の運命動機はやはり厳格である方が良い。提示部を繰り返し、展開部と入るのはいいも、本当に94歳の人が作る音楽なのだろうか。快速的テンポはブロムシュテットの特徴ではあるも、ものすごい推進力に圧倒され、気がついたら置いてかれてしまうほどだカラヤンとは違う、ブロムシュテットにしか生み出せない独特のパワー全開だった。
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 上記画像は再現部に入る少し前からの楽譜であるが、ここはものすごい迫力であり、トランペットが唸りを上げた。ちょうどトランペットの配置の真正面に座っていたからより一層すごかったのだろう。
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 そして、有名なオーボエのソロパート。その前の2音はグッとテンポを落として、オーボエのソロパートに入ったのは衝撃だった。強い推進力のままだと思いきや、タメたことに意表をついたのである。
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 私が第1楽章の中でもっとも好きな再現部第2主題。快速的テンポかつ強い推進力で奏でられた再現部第2主題は実に爽快であり、聴いていて圧倒された共に力が入った暗→明という構成を取る中、明るさへ若干顔を覗かせるハ長調の第2主題はたまらない。
 そして、運命動機が力強く奏でられ、第1楽章を閉じる。あっという間に第1楽章が終わってしまった。
 ちなみにマエストロは、第1楽章はマスクを付けたまま指揮をしていた。おそらく外し忘れてしまったのだろう。
 意思疎通が不完全な状態になってしまったと思うが、さすがはブロムシュテット×N響そんなことで揺らぐはずがない、極めて強い関係で結ばれている証拠であり、第1楽章から熱演だった。

第2楽章:Andante Con Moto

 途中で気がついたのだろう。マエストロは第2楽章が始まるときにマスクを外した。これで、N響との意思疎通が完全なものとなった。
 ヴィオラとチェロによって奏でられる第1主題は実に美しく荘厳であった。そして、行進曲風の堂々たる第2主題はトランペットが響き渡っており、実に華々しい第2主題であった。
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 私は2回目の第2主題(78小節目以降)の方が好きなのである。弦楽器が32部音符になっており、より一層華々しく活発的になるのである。しかし、トランペットが熱入りすぎてトランペット以外の楽器の音がかき消されてしまった(笑)。まぁ、座る位置のせいにしましょ。
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 そして、98小節以降のヴィオラとチェロの流れるような旋律がある。私はこの箇所も好きなのであるが、本当に見事な響きだった快速的テンポでありながら、重厚かつ甘美な音色(まさに「dolce」)が響き渡っており、いつまでも聴いていたい
 約10分程度の第2楽章もあっという間に終わってしまった。

第3楽章:Allegro

 チェロとコントラバスによる低音での分散和音のあとにホルンが第1楽章の運命動機を勇壮に奏でる。前半のステンハンマルもそうだったが、ホルンがとてもよく響いていた。本当に4人しかいないの?と思ったほどだ。
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 上記画像はトリオ部分。チェロとコントラバスによって奏でられるトリオは「象のダンス」ベルリオーズが呼んだ。ブロムシュテットはトリオ箇所も快速テンポで進んでいき、コントラバス奏者方はさぞ大変だったのではないでしょうか…
 そして静まりかえって第4楽章へ…。

第4楽章:Allegro

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 「ドーミーソー」とあらゆる楽器が奏で、特にトランペットが叫んだ。圧倒的な第4楽章の始まりに思わず震えた。第4楽章に入ったらもう凄まじいものだった。N響の演奏者はよほどブロムシュテットを尊敬しているのだろう。全員が熱のこもった演奏をしており、聴いている側枯らしてもそれが伝わった。特に首席チェロ奏者の辻本先生が激しく、弓がどこかへ飛んでいってしまいそうな勢いだった。今回はもう一方の首席チェロ奏者である藤森先生は降り番だったようでちょっと残念…。提示部を繰り返し、ホルンの壮大に奏でる場面は、まさに大海原のような壮大さだったブロムシュテットも楽しかったに違いない。
 ブロムシュテットは年齢のせいか動きは小さいものの、たまに腕を大きく動かしたり広げたりしており、それに伴って音が大きく壮大になっていた。言葉を失うほどの圧倒的な音楽にただただ酔いしれる第4楽章だ
 再現部に入りコーダへ向かうとさらに熱が籠る。
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 第4楽章336〜337小節の弦楽器がトゥッティで「ソドソミーレドソー」と奏でる場面があるのだが、私が第4楽章の中でもっとも好きな箇所なのである。たったの1〜2秒しかないのに、ベートーヴェンの力強さと弦楽器の美しさ重厚さが兼ね備えられた場面なのである。朝比奈先生のように重厚に奏でるのももちろんであるが、ブロムシュテットは舐めやらかに爽やかに奏でるも、重厚さがあった
 コーダになれば、弦楽器、木管楽器(特にピッコロ)、金管楽器ティンパニと全ての楽器が熱が入って圧倒的な音量を奏でた
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 そして、1音1音丁寧にかつ力強く奏で、壮大なフェルマータで締めくくった。あまりの熱狂さに圧倒され、それに伴い気がついたら感涙を流していた。

統括

 世界現役最高齢指揮者ヘルベルト・ブロムシュテット。その中でも、得意とするベートーヴェンを親密な関係を持つNHK交響楽団で、そしてベートーヴェン交響曲第5番という超名作を聴くことができたなんで唯一無二のことだろう。
 当然ながら初めてブロムシュテットを現実に見たのだが、思ったより平均的な身長で意表をついた。スラっとした印象があったため、外国人らしい高身長というイメージが勝手に自分の中にあった。しかし、指揮台立つと大きな姿に豹変する。真の巨匠だ。
 ベートーヴェン交響曲第5番が終わった後、鳴り止まぬ拍手に一般参賀が2回も行われた。一般参賀が行われた際、観客は全員スタンディングオベーションとなった。全員それほどブロムシュテットを楽しみにしていたはずに違いなかろう。
 指揮台に上がったり、段差がある場所は恐る恐る歩いていたが、それ以外はとても94歳とは思えない足取りだった。本当に94歳なんだろうか。
 レオポルド・ストコフスキーが94歳で現役で指揮をした。日本の大指揮者である朝比奈先生ストコフスキーの記録を余裕に超えると言われていたが、93歳でなくなってしまった。
 一方、ブロムシュテットは現在94歳で指揮を行なっている。来年は95歳ストコフスキーの記録を更新し、更なる進化・音楽を奏でてほしい
 もっとも、ブロムシュテットは、オーストリアウィーン・フィルとリハーサルをし、アムステルダムブルックナー交響曲第4番を演奏し、ベルリンでベルリン・フィルに客演した。94歳という年齢で世界中を飛び交っている。
 良い意味で化け物指揮者だ。これからも世界中に日本に素晴らしい音楽を届けてほしい。
 まだまだブロムシュテットN響の演奏は続くが、私かこれで終了。素晴らしい時間を過ごした。
 クラシック音楽館で放送される際は、必見である!!



次回のコンサート

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2021年12月24日
【東響】第696回定期演奏会in サントリーホール

tokyosymphony.jp