朝比奈隆(Takashi Asahina)
1908年7月9日東京府東京市牛込区市谷砂土原町にて生まれる。
2001年12月29日兵庫県神戸市東灘区鴨子ケ原・甲南病院にて亡くなる。
今回紹介する指揮者は、朝比奈隆。日本を代表する名指揮者であり、現在も多くのファンがいる。
朝比奈先生は、特にベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーおよびチャイコフスキーの交響曲を数多く演奏してきた。特に、アントン・ブルックナーの巨匠として知られている。
日本のオーケストラの録音が多いが、1953年にヘルシンキ市立管弦楽団に客演し、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ハンブルク北ドイツ放送交響楽団との共演も行っている。最も有名なのは、シカゴ交響楽団の客演の際、ブルックナー交響曲第5番を振ったことだろう。アメリカ超名門のオーケストラを朝比奈先生の十八番を降ったのである。
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日本においては、東京都交響楽団、東京交響楽団、NHK交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、そして、大阪フィルハーモニー交響楽団において、多数指揮をした。ベートーヴェンや、ブルックナーなどドイツ系作曲家の演奏を多数残した。もっとも、チャイコフスキーも多数録音しているようだが、私はロシア系の作曲家は殆ど聴かないので、その辺りは疎いことをご容赦願いたい。
ベートーヴェンもブルックナーも両方ともいえるのだが、朝比奈先生の特徴は、とにかく音が重厚なのである。そして、テンポもあまり速くなく、より一層重厚さが際立つのである。その朝比奈先生スタイルによるブルックナーはまさに音楽的建造物なのだ。特にブルックナーらしい交響曲である交響曲第5番は朝比奈先生の演奏でぜひ聴きたいところでもある。朝比奈先生独特の重厚さは、ドイツ・スタイルではなく、《ブルックナー・スタイル》なのだという。主題を伴奏を当分の強さで鳴り響き、f(フォルテ)指定されてあればガックの終わりまでfで、ディミヌエンヌをかけることは一切なく、すなわちオルガン演奏をそのままオーケストラ課したブルックナー流儀であり、だからこそドイツ人以上に重厚になるのだという*1。
そして、東京交響楽団、NHK交響楽団と日本を代表するオーケストラを指揮しており、実際にその演奏は素晴らしいのだが、不思議と大阪フィルハーモニー交響楽団で、朝比奈先生の演奏を聴きたくなるのである。それもそうだろう。下記のように、戦後から最晩年に渡るまで、大阪フィルの音楽監督を務めたのだから、相思相愛の一言では済まされない程度の信頼関係が築き上げられたらに違いない。
なお、朝比奈先生のブルックナーの演奏には、宇野功芳先生が多数ライナー・ノーツを執筆されており、朝比奈先生の評価について詳細に書かれているため、その演奏については多く引用するつもりである。
「ブルックナーを聴く者にとって、朝比奈隆という名指揮者が存在することを知っていて当然である。知らなかったとは言って欲しくない」
日本には、世界も凌駕するほどのブルックナー指揮者がいたのだ。これは日本の宝物といえよう。朝比奈先生がいなかったら、日本に「ブルヲタ」という概念は存在しなかったに違いない。
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主なオーケストラの首席指揮者等の在籍
- 大阪フィルハーモニー交響楽団音楽監督(1947–2001)
*1:宇野・同CD附属ライナーノーツ2頁