Symphonikerの音楽鑑賞録

クラシック音楽を趣味とする早大生

マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」を聴く

introduction

 今回は、マーラー交響曲第1番ニ長調「巨人」を取り上げる。この曲は、マーラー交響曲のなかでは、演奏時間が比較的短いこと、声楽を伴わないこと、曲想が若々しく親しみやすいことなどから、演奏機会や録音がもっとも多い。実際に、11月28日に読響の演奏で、本曲を聴きに行く。
 実際、私もこの交響曲第1番も好んで聴くマーラーらしい爆発的な場面もいくつかあり、大編成でダイナミックな音楽を嗜好とする方には人気のある作品であろう。何と言っても、第4楽章のフィナーレの壮大な音楽は大変素晴らしく、聴衆の熱気もMAXになろう
 このマーラー交響曲第1番ニ長調「巨人」は、4楽章の構成であるが、「花の章」という隠れた楽章がある。あまりこの「花の章」を録音した演奏は少ない。有名なものといえば、スービン・メータ:イスラエルフィルハーモニー管弦楽団の演奏だろうか。

 「花の章」はトランペットの音色が非常に美しい。この「花の章」の具体的な演奏については、別の機会に述べよう。
 また、マーラー交響曲第1番ニ長調「巨人」は、1885年に完成された歌曲集『さすらう若者の歌』の作品を随所に引用されている。特に、第2曲「朝の野を歩けば」は、交響曲第1番の第1楽章第1主題に引用されている

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 さらに、第4曲「彼女の青い眼が」では、第3楽章の中間部に引用されている。引用元となった作品と対比して聴くのもまた面白いだろう。

マーラー交響曲第1番ニ長調「巨人」

クラウス・テンシュテットシカゴ交響楽団

Coming Soon


ロリン・マゼールウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

評価:8 演奏時間:約58分


第1楽章:Langsam. Schleppend - Immer sehr gemächlich
●Langsam. Schleppend
 繊細な響きが聴こえる。木管楽器が煌びやかな音色で下降音階を彩る。これが本曲の全体的な動機となる。ゆったりとした音色で柔らかく、幻想的な雰囲気を作り出している舞台裏のトランペットの音色も自然で柔らかい音色を響かせている。全体的に遅めのテンポ。
●Immer Sehr Gemachlich
 提示部に入る。マゼールは遅めのテンポでじっくりと第1主題を奏でている。もっとも、キレのあるチェロの音で奏でられる第1主題はどこか楽しげであり、その後の流れるような場面ではヴァイオリンが穏やかに滑らかに美しく奏でている歌曲集『さすらう若者の歌』を知っている方は自然と歌が聴こえてくるようだ。盛り上がりを見せると、ウィンナ・ホルンが雄大な音色を奏でており、そこそこの迫力がある繰り返しあり
 展開部に入る。冒頭の部分に戻り、繊細な弦楽器の音色とともに鳥の鳴き声のような美しい木管楽器の音色が響き渡る。この展開部はいつ聴いても息を呑む。美しさの裏面には緊張感が備わっている。ホルンの斉奏が聴こえるとチェロの甘美な音色が大変美しい。敢えて、スローテンポで指揮をしているマゼールだからこそ生み出される美しさであろう
 再現部に入り、何度か転調しながら第1主題を美しく奏でていく。ホルン・ヴァイオリン・チェロといった様々な楽器が第1主題を奏でている。そして、徐々にフィナーレへと向かい、トランペットのファンファーレが鳴り響くとコーダである。
 コーダでは、トランペットが勇ましい音色が非常に印象的である。そして、かなりのスローテンポであり、重々しい部分もある。しかし、終始スローテンポではなく、テンポを早めたりとかなり波のある演奏が繰り広げられる。後半部分では快速的テンポで駆け抜けており、勢いのあるコーダである。最後のティンパニもそこまで強烈な音色ではなく、標準的である。
第2楽章:Kräftig bewegt, doch night zu schnell (Ländler Scherzo)
●Kraftig Bewegt, Doch Nicht Zu Schnell
 第2楽章の冒頭はかなり遅いテンポであるバーンスタイン並みの遅さであろう。じっくりと進んでいくようである。力強いチェロの音色が非常に印象的であり、このような演奏も悪くはない木管楽器の音色は重々しくなく、軽快な音色で明るい。快速的で威駆け抜けるような演奏も好きだが、このように遅くどっしりとした演奏もまた良い。
●Trio: Recht Gemachlich
 遅めのテンポで滑らかに進められている。弦楽器の音色も木管が木の音色も柔らかくて非常に美しい。そして、マゼール独特のテンポがより一層作品を美しく彩る。トリオ部分も遅いテンポ。
●Tempo Primo
 再び主部に戻るのだが、遅く厳格なテンポに加えてやや強烈なホルンが非常に勇ましい。最終部の締め括りも強烈な加速をすることなく締め括る。
第3楽章:Feierlich Und Gemessen, Ohne Zu Schleppen
●Feierlich Und Gemessen, Ohne Zu Schleppen
 コントラバスのソロが静かに聴こえてくる。ファゴットの低音も響いてきて若干不安な雰囲気をもたらす。少しずつ楽器が増えて厚みが増していく。第1楽章、第2楽章ともに遅めのテンポで進められていたが、第3楽章では標準的なテンポで演奏されているが、随所にマゼール特有の思い切ったテンポの揺らしが入ってるのがまた良い。途中の小さなシンバルが加わる行進曲風の部分は弾むようであり、かつ若干勇ましさが垣間見える。
●Sehr Einfach Und Schlicht Wie Eine Volksweise
 美しい中間部。少し弦楽器の音色がくすんでいるような印象であるが、途中のヴァイオリン等のソロ・パートは弦楽器の音色がはっきりと聴こえた。この中間部は、さすらう若人の歌』第4曲「彼女の青い眼が」の引用である。
●Wieder Etwas Bewegter, Wie Im Anfang
 再び主部に戻る。不気味さをもたらす低音楽器の重厚さが良い塩梅の不気味さと響きを齎している
第4楽章:Stürmisch Bewegt
 冒頭のシンバルの音は少し小さめ、そして、シンバルの後のティンパニの間が驚くほど短い。速めのテンポではなく、一音一音しっかりと刻んでいくテンポによって奏でられる第1主題は大変勇ましい木管楽器やトランペットはもちろんのこと、ここまでトロンボーンがはっきりと聴こえるのもまた珍しい。激しい第1主題は爆発性が備わっていながらも厳格なテンポで進められていた。一方で、第2主題はマゼールらしさが全面的に出されており、絶妙なテンポの揺らし具合、まるで弦楽器が歌っているかのようだ。さすがは、ロリン・マゼール。そして、やや強烈なティンパニが鳴り響き、激動の展開部へ向かう。
 展開部も第1主題と同様に激しい。よくある演奏はかなり激しく演奏されており、一部の楽器が聴こえないということもあるが、この演奏はすべての楽器の音色がハッキリと聴こえている木管楽器の高らかな音色やホルンの音色も自然でハッキリと聴こえているのだ。遅めの厳格なテンポによって奏でられる展開部もじっくりとマーラーの作品を味わうことのできる演奏だ。途中ハ長調ニ長調となり、有名な4度動機が勇壮に奏でる場面はかなりの爆発性であったやはりこの場面はかなりの爆発性があった方が熱量も上がる、こうでなければならない
 そして、再現部。再現部は第4楽章提示部ではなく、第1楽章提示部を再現部としている。静寂な中、第1楽章同様にスローテンポで進み、再び第1楽章を彷彿させるような美しい世界観が広がる。また、チェロの重厚で甘美な音色が非常に美しく、印象的である。やがて、盛り上がってコーダへ向かう。
 堂々たるコーダの幕開けである。最終楽章の最終部ということで今までにはない爆発性があり、圧倒的なフィナーレを奏でる。ここでも、スローテンポを貫いており、急がないコーダもまた素晴らしい。コーダを支配するホルンの壮大な4度動機も素晴らしく、非常に伸びやかでハリのあるトランペットの音色が響き渡るコーダは迫力もあり、美しさも兼ねている
 テンポを揺らしながらも、急加速なくスローテンポのマーラーもまた良い。マゼールらしい独特の演奏である。

ズービン・メータ:イスラエルフィルハーモニー管弦楽団

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