Introduction
今回は、レスピーギ:交響詩「ローマの松」を取り上げる。取り上げた理由として、以下のコンサートに行くことにしたからである(予定)。
www.tmso.or.jp
小泉和裕先生と東京都交響楽団によるレスピーギ:交響詩「ローマの松」であり、大変楽しみである。
さて、オットリーノ・レスピーギであるが、ベートーヴェンやブラームと比べて知名度はやや劣る作曲家になろう。しかし、本記事で取り上げる交響詩「ローマの松」の他に、「ローマの祭り」「ローマの噴水」も作曲しており、合わせて、「ローマ三部作」と呼ばれ、レスピーギを代表する作品である。
私は、ローマ三部作の中で最もの好きなのは、この交響詩「ローマの松」である。第1部〜第4部を通して、レスピーギの煌びやかなオーケストレーションが冴え渡っているからである。「ローマの祭り」も激しく、素晴らしい作品だが、やはり交響詩「ローマの松」の方が上回るだろう。
第1部は、煌びやかな音色が響き渡り、第2部は幻想的な舞台裏のトランペットと壮大な音楽、第3部は美しいクラリネットと弦楽器のハーモニー、第4部は全てを凌駕するかのような圧倒的なクライマックス。それぞれ特徴的な音楽が兼ね備えられている。
特に第3部から第4部へ移る途中に「鳥の鳴き声」が聞こえる(「天使の囀り」*1ではない)。これは、楽器等で代替されるわけではなく、実際の鳥の鳴き声を収録しているのである。実際に、NHK交響楽団の演奏では蓄音機を用いて演奏されていた。
この発想は面白い。あのラヴェル*2でさえも思い付いたであろうか…。
レスピーギ:交響詩「ローマの松」
山田一雄:東京都交響楽団
評価:9 演奏時間:約23分
第1部:ボルゲーゼ荘の松 - I pini di Villa Borghese
冒頭華々しいファンファーレが鳴り響く。その後のホルンも勇壮に奏で、木管楽器の軽やかな音色が一層華やかを醸し出す。冒頭のテンションの高さから、ヤマカズ先生のテンションの高さも窺い知ることができる。ホルンがかなり目立った音色をしているのが本演奏の特徴であろう。時折、ヤマカズ先生がジャンプしているのか、指揮台のところで足踏みをしている音も収録されている。第2部へ移る箇所は、accelerandoはそこまで強くはない。
3分もない短い第1部であるが、堂々たる幕開けである。
第2部:カタコンバ付近の松*3 - Pini presso una catacomba
静寂の中、低音楽器が第2部の主題を奏でている。そして、弦楽器が幻想的ながらも不安げな音色を響かせる。その後、フルートとファゴットの二つの楽器が幻想的に主題を奏でている。ヤマカズ先生らしく大きくテンポを揺らしながら主題を歌い上げている。
その後、舞台裏のトランペットが主題を奏でる。繊細で美しい音色が響き渡っており、天国へ召されるかのような美しい音色が響き渡っている。
幻想的な裏方のトランペットが鳴り終わった後、一変して不穏な雰囲気に変わる。低減楽器が重いテンポで主題を奏でている。コントラバス・チェロ→ヴァイオリンと少しずつ楽器が増していき、第2部のクライマックスへ導く。弦楽器が壮大に主題を奏で、トロンボーン等の金管楽器が壮大な音色を響かせている。テンポも遅く、巨大な音楽へと豹変して演奏し、強烈なテンポの操りはいかにもヤマカズ先生らしい。
その後、楽器の数も減り、静寂な雰囲気に変わるが、フルート等が消えゆくように第2部の主題を奏でている。
第3部:ジャニコロの松 - I pini del Gianicolo
流れるように美しいピアノが鳴る。その後、クラリネットが美しい第3部の主題を奏でるのである。第2部と同様の構造であるが、弦楽器の音色は清らかで美しく、幻想的な海が広がるかのような雰囲気である。その後のチェロ等が第3部の主題を奏でる箇所があるが、その点も力強さと美しさが見事に調和されており、素晴らしい音楽が展開される。
第3部にもクライマックスがある。オーボエがやや哀愁が漂う主題を奏でる箇所がある。それが聴こえ始めたらクライマックスへの道のりである。途中チェロのソロ・パートがあるがとても美しい音色であり、ヴァイオリンが総じて哀愁漂う主題を奏でていく。ヤマカズ先生らしいダイナミックな音楽作りに感動する。
弦楽器による海を再現し、まさに「満月の中に浮かぶ松と幻想的な月光が描かれる」との表現が最も相応しいであろう。
再び、冒頭の美しいピアノが登場し、クラリネットが第3部の主題を奏でる。そして、鳥の鳴き声が響き渡る。実際のホールではどのように聴こえるのだろう…。
第4部:アッピア街道の松 - I pini della Via Appia
ピアノと弦楽器が少しずれているような気がするのだが…。そして、クラリネットとホルンがやや不気味な音色を奏でる。クラリネットが特徴ある主題を奏でるが、これがアッピア街道の重要な主題となるのである。
そして、ホルンとファゴットが力強く主題を奏で、トランペットが弱音にながら華やかさを添える。楽器が増していき、いよいよクライマックスへ!
強烈なティンパニと共に、唸る弦楽器と共に圧倒的なクライマックスを築く。すべての楽器が負けないほどの強烈な音色には圧倒される。ヤマカズ先生と都響と共に築き上げるフィナーレは全てを飲み込むような凄まじいものである。途中変ロ長調の音階に入る前の強烈な煽り、そして、勇ましい変ロ長調の音階は何か勝利を悟ったかのような壮大さである。
気がついたら歯を食いしばるほどの気合の入れよう。ヤマカズ先生による「ローマの松」は期待通り、激しい演奏であった。