鵺翠の音楽の世界と読書の記録

クラシック音楽を趣味とする早大OB

ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」を聴く(その2)

ブルックナー交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」

エリアフ・インバル:フランクフルト放送交響楽団(hr交響楽団

評価:9 演奏時間:約68分


第1楽章:Bewegt, Nicht Zu Schell

 冒頭部分。雄大で美しいホルンに木管楽器が加わるのだが、有名な第2稿とは異なり、若干の複雑さが絡んでいる。これぞ、第1稿である。そして、全合奏によって奏でられるブルックナーリズムは、第2稿よりもはるかにゴージャスな響きであり、キラキラと輝くような大宇宙を表現している。多少、ここでも第1稿と第2稿とで違いがある。第2主題は、多少の違いはあるも、あまり変わっていない。テンポは多少早めで活発的な印象である。第2稿よりも第1稿の方がより一層複雑な対位法になっており、緻密さがよくわかる。壮大な第1主題とは対照的な音楽である。しかし、その後発展していき、豪快な第3主題は、第1稿とは異なるが、豪快な金管楽器が鳴り響いており、凄まじい音圧である展開部では、ホルンと木管楽器の美しい音色とともに、ヴァイオオリンの繊細で美しい音色が流れるように対位されている。その後、ブルックナー・リズムも非常に複雑な対位法となっており、改めて緻密さに感動する。全体的に第2稿よりも第1稿の方が明るく活発的な印象である。しかし、展開部の中には第2稿では取り入れられていない非常に勇ましい場面がある。その場面は、快速的なテンポでチェロ等の低弦楽器が力強く奏で、ホルンの雄大な音色が非常に勇ましい。その後の、弦楽器の流れるように上下する旋律にホルンが穏やかに第1主題を奏でるのである。それが、再現部の始まりである。第2稿とは全く異なる。その後の全合奏も壮大な音色に強烈なトランペットとホルンの音色が叫びをあげる。非常に硬質な音となっており、柔らかい音色を望む方にとってはかなりキツイものとなろう。。再現部第2主題は、軽快な音色と主に明るく美しい弦楽器の音色が非常に印象的。やはり、第2稿よりも複雑で明るいので第1稿の方が、「明るいロマンティック」なのではないか。その後の再現部第3主題は、冒頭のみ全合唱があるがすぐに弦楽器に移ってしまう。コーダは、第2稿とは大きく異なる。第2稿の面影はあるが、盛り上がるとそのまま終わってしまう。ホルンの長いパートはない。

第2楽章: Andante Quasi Allegretto

 主要主題の部分である主題は、第2原とは異なり、少し半音がある。しかし、第2稿と同様のチェロによる主題はやや哀愁漂う音色を響かせており美しい音色を響かせている。テンポも標準的。第2楽章は一部異なる部分はあるも、非常に大きな場面はない。中間部分においては、。第2稿とはやや異なり、低弦楽器が唸りクライマックスを形成するかのような盛り上がりを見せるがすぐに収まってしまう。その後、再び主要主題が奏でらる、ソナタ形式では無いが再現部に位置付けられるものといえよう。コーダに入る前に、最後の主要主題部では大きなクライマックスが形成される。第1稿のクライマックスは、金管楽器が長く主要主題を奏でられている。頂点部に達すると凄まじい音が噴水のように湧き出たかのような壮大な音楽が広まり、感動的に主要主題を金管楽器がやや断片的に奏でる。これはすごい。コーダは圧倒的音楽の後そのまま静まるように締める。

第3楽章:Scherzo & Trio

 第1稿とは大きく異なり、ホルンの断片的なファンファーレによって幕を開ける。多少第2稿と共通する部分があるが、このファンファーレは大きな違いの一つと言えよう。冒頭、ホルンとトランペットの勇ましいファンファーレが鳴り響き、冒頭のホルンの奏でたのがこの第1稿の第3楽章において主題となる。非常に勇ましくて格好良いのである。一度聴いたら虜になる恐れがあるだろう。トリオ(B)は、第1稿とは全く異なる構造になっている。弦楽器が非常に活躍し、流れるような旋律が非常に印象的であり、第2稿とは異なる「ロマンティック」さがある
 そして、再びAを繰り返す。この第3楽章は第2稿よりも格好良いと思っている

第4楽章:Finale: Bewegt, Doch Nicht Zu Schnell

 機械的なリズムを起点に、弦楽器がジグザグしたような演奏によって幕を開ける。そして、快速的テンポでオーボエとホルンが第1楽章第1主題を奏でる。提示部において凄まじい音圧で第1主題をトゥッティで演奏してるが、圧倒的な演奏である。この第1主題は非常に勇ましい。第2主題は、第2稿とは異なりかなりの快速的テンポでどんどん進んでいく。主題自体は大きな変化はないがその後のオーケストレーションは大きく異なり、小刻みなピッツィカートが非常に印象的である。その後のトゥッティによる半音階の上下は非常に強烈な音圧である(これが第3主題か?)。展開部に入ると、第2主題の快速的テンポが残ったままホルンと木管楽器が第1楽章第1主題の冒頭を回顧させる。冒頭の雰囲気に戻ってくる。そして、あのジグザグした下降音階が登場する。弦楽器の厚みをいかした第2主題の音色は非常に壮麗である。次第に盛り上がると、非常に重厚で迫力のある第1主題が断片的に演奏される。非常に荘厳で圧倒的だ。ものすごい集中力が試されよう。再現部は、提示部のほぼ繰り返し。コーダではいつからコーダに入るのか区切りがわからないが、快速的テンポで強烈な第1主題が断片的に繰り返される。勇ましいテンポが非常に格好良い。そして、第2稿とは異なり、静寂な場面はなくそのままクライマックスへ向かう。最大音量に達した時の場面は一言では言い表せないような強烈な何かが体に走る。そして、途端に締めくくる。これは第2稿に慣れている方にとっては消化不良を起こしかねないと思われる。