鵺翠の音楽の世界と読書の記録

クラシック音楽を趣味とする早大OB

【都響】都響スペシャル in サントリーホール

introduction

 今回は、都響都響スペシャである。そして、私が早大生として最後のコンサートでもある。
 ご覧の通り、今回はなんといっても、マーラー交響曲第2番ハ短調『復活』であろう。ずっと楽しみにしていたのだ!!しかも、指揮が大野和士先生であり、管弦楽東京都交響楽団というこの上ない名コンビによって演奏されるのである。東京都交響楽団といえば、伝統的にグスタフ・マーラーの作品を重要なレパートリーとしており、若杉弘が一度、インバルが2度それぞれマーラー交響曲の連続全曲演奏会である「マーラー・サイクル」を行った。ベルティーニもケルン放送交響楽団との全曲録音に次いで2度目の全曲演奏を行なっている。おそらく、日本でマーラーを演奏させたら右に出るオーケストラはないといっても過言ではなかろう。久しぶりに演奏前から高揚感に満ち溢れた気分を味わっている。
 

本日のプログラム

マーラー交響曲第2番ハ短調『復活』

 繰り返すが、本日のプログラムは、マーラー交響曲第2番ハ短調『復活』である。私が初めて本曲を聴いたのは確か中学2年生の頃だったと記憶している。そして、私が初めて買ったCDもこの曲だった。その時購入したCDはこちら。
www.hmv.co.jp

 随分と渋い演奏を購入したものだ。ステレオやモノラルといったことも分からず、右も左もよく分からない頃に購入したから色々な思いが詰まっている。そして、のちに色々な演奏を聴くようになり、予習としても様々な演奏を聴いていた
代表的なものとしては以下のものを聴いていた。


 正直、これを超える演奏はあり得ないとも言える程の充実感であるが、実際に聴くとなればこの演奏の射程外のものとなろう、

第1楽章:Allegro Maestoso (Mit Durchaus Ernstem Und Feierlichem Ausdruck)

 提示部。気合の入った大野先生の一振りでヴァイオリンのトレモロが鳴り響いた。その後のチェロとコントラバスの気合の入った音色が鳴り響き、都響全体がこの曲に対して相当の想いを込めて演奏していることが開始早々伺えた。陰鬱で重々しい幕開けであるが、最後の最後に圧倒的フィナーレを迎えることになる。第1主題はオーボエのやや暗い音色が響き始め、弦楽器が加わって盛り上がるととてつもない爆発性によって力強い金管楽器が鳴り響く。最初から飛ばす都響恐るべし。その後の美しい第2主題では、大野先生はゆったりとしたテンポに遅めて、美しく優雅に奏でられていた。何か祈るような…そんな神秘的な音色が響き渡った。大野先生は笑みを浮かべながら楽しそうに指揮をしていた。激烈な第1主題とは対照的に神秘的な光が差し込むような雰囲気になった。そして、第1主題が登場し小結尾を迎えるが、この時も非常に迫力ある演奏が展開されていた。凄まじい大野先生と東京都交響楽団のコンビを改めて実感した
 展開部。第2主題から始まる。提示部と同様にテンポを遅めて神秘的に演奏されていた。弦楽器の透き通るような音色、神秘的な光が差し込むような美しいクラリネットやフルート、ホルンの柔らかい音色が非常に印象的だった。大野先生の色彩豊かなバトンテクによって生み出される音楽は明快で率直ながら核心をついてくる。そして、第1主題のような葬送が戻ってくる。やはり、第1主題の場面では激しく爆発的な演奏をするのが今回の都響!強烈なホルンの音色といい、爆発性をもたらすシンバルやバスドラムといった打楽器!体の芯まで響き渡るすごい音だった!後半の展開部では、断片的な第1主題の後静寂な場面となる。この時は大野先生や都響の演奏者はもちろんのこと、聴衆の方々も高い集中力であって張り詰めた雰囲気となっていた。徐々に勇ましくなっていき頂点部では壮大なトランペットの音色と弦楽器が鳴り響き、その後の強烈な展開は打楽器の音色が激烈だった!「格好良い!」の一言では済まされない。
 再現部。再び第1主題が演奏される。しかし、提示部ほど長くはなく爆発的な場面もない。そして、再び美しい第2主題が奏でられる。緩急を操って指揮をした大野先生の天才的な音楽的センスに圧巻
 コーダ。第1主題が主に用いられる。第2主題と比較するとテンポ早めで演奏されるのがより引き締まった印象を与えた。最後の最後の半音階的な場面はそこそこの速さであっという間に終わってしまった

第2楽章:Andante moderato, Sehr gemächlich

ABABAの形式
 Aの部分では、第1楽章第2主題を髣髴させるようなゆったりとしたテンポで美しい音色を響かせていた大野先生の巧みなテンポの揺らしよって交響曲ではなく「歌曲」を聴いているかのような弦楽器が歌い上げられていた
 Bでは小刻みな弦楽器とともに、今度は木管楽器が美しく主題を奏でており、Aと同様に木管楽器が美しく歌い上げられていた
 再びA。今度は、チェロが対旋律を奏で始めるのだが、重厚ながらも甘美な音色を響かせていた。私はこの第2楽章の中でこの場面が好き。マーラー交響曲の大家であると主に歌曲の大家であることを再認識させられた。
 再びB。楽器が増えて迫力を増していく。ホルンの雄大な音色が印象的だったが、それに応えるかのような白熱した弦楽器が素晴らしかった。
 最後のA。すべてピツィカートで演奏される。やはり、指揮者・オケメンバー・聴衆の方のレベルが高く、集中力が凄まじかった
 第2楽章を終えた後に、合唱団とソリストの方が登場。藤村実穂子先生のオーラがこの時から凄かった…

第3楽章:In ruhig fliessender Bewegung

三部形式
 A。強烈なティンパニの音色で始まった。快速的テンポで流れるように主題が奏でられていく。そこまで強い推進力ではないが、一直線にように進んでいった。
 B。爆発的な中間部。やはり、凄まじいかった!トランペットの迫力ある音色と打楽器が爆発性をもたらした
 A。再び快速的テンポが始まる。そして、中間部が登場し、大迫力な音色を響かせて第3楽章を閉じた。

第4楽章:"Urlicht". Sehr feierlich aber Schlicht

 世界を代表する藤村実穂子先生の登場。冒頭から素晴らしい歌声であり、圧倒的オーラを放った。その後の金管楽器のコラールも神秘的であり、非常に荘厳な雰囲気を構築した。
 オーケストラの音色はもちろんのこと、あまりにも藤村実穂子先生の歌声が素晴らしく、その歌声にしっかり酔いしれていた。さぞかし、ホールの最後尾列であってもその歌声はしっかり響いていたのだろう。
 中間部では高音部があるのだが藤村実穂子先生の歌声は素晴らしくどこまでも響き渡っていきそうな歌声であった。そして、矢部先生のヴァイオリン・ソロも繊細で美しい音色だった

第5楽章:Im Tempo des Scherzos, Wild herausfahrend

Im Tempo Des Scherzos, Wild Herausfahrend
 爆発的な演奏で第5楽章を幕を開けた。実に強烈な第1主題であった
 静寂な場面が多く、緊張感が高まる。また、ソロ・パートが多いがさすがは都響というべきか、ミスがなかった。第2主題のホルンも雄大な音色でありながら優しく柔らかい音色を響かせていた。
 そして、提示部の頂点部。頂点部に向かって私もつい力が入った。ホルンの雄大な音色と迫力あるトランペットが輝かしい音色を響かせていた。この時点ですでに素晴らしい!!
Maestoso. Sehr Zurückhaltend
 徐々に大きくなる強烈な打楽器!かなり粘って最高潮に達した時は相当の音量が出ていた!
 テンポは標準的かやや少し早めで勇ましい演奏であった。都響の皆さんもかなり力が入っていたようで弦楽器の音色も非常に力強く勇ましかった。その後のトランペットも輝かしく、すべてが輝き、木管楽器のベルアップは非常に格好良かった!
 その後静寂な場面となるが程なく強烈な場面へ変わる。特に展開部最後はあまりにも強烈な音量であり、バーンスタインも真っ青になるかのようなほどの爆発性を体感した
Sehr Langsam Und Gedehnt
 ホルンのファンファーレが鳴る。そして神秘的なフルートとピッコロが夜鶯を再現する。
Aufersteh'n, Ja Aufersteh'n Wirst Du
 いよいよ新国立歌劇合唱団の登場。合唱のみで構成されるのだが、非常に神秘的であり、今までの激しい音楽から一変した雰囲気へと様変わりした。その雰囲気は神秘的なものよりも緊張感が高まり、固唾を飲むほどだ。途中で、ソプラノの中村恵理先生の素晴らしい高音の歌声は絶品。その後のオーケストラも非常に穏やかであり、その美しさに感動
 そして、同じ構成を繰り返す。
O Glaube, Mein Herz, O Glaube
 藤村実穂子先生が「O Glaube」と歌い始める。いよいよ、最終部だ。
 それにしても、藤村実穂子先生の歌唱力は凄まじいものだった。歌い始めると一気に藤村先生の世界を作ってしまった。そして、迫力ある男性合唱が伴う。
 その後、藤村実穂子先生と中村恵理先生の掛け合いとなり、いよいよ大合唱へと向かう。じわじわとくる感覚…今までに味わったことのない感動のフィナーレへと向かっている。
 そして、フィナーレの大合唱。素晴らしい迫力と壮大さに思わず涙が溢れてしまった。そして、「念願の“復活”を生で聴く」ということを達成したことこれを実感しながらしっかりと聴いた。やっと、やっとこの曲を聴くことが出来た喜びを噛み締めながら最後の大合唱を聴いていた。圧倒的な大合唱とマーラーの壮大さに圧倒されながら…。大野先生の渾身のタクトは最後まで気を緩めなかった。
 大野先生の左手が下された瞬間、熱気を帯びた拍手に包まれた。本当に、本当にすごい演奏だった。ここまで一つの作品で充実感満載の演奏は本当に素晴らしい。
 

総括

 上記感想の中でも述べたが、本当に素晴らしい演奏だった!私が、ずっと生で聴きたい作品だったこともあり、コロナの関係で1回飛んでしまった。それを聴くことが出来たのだから。
 そして、久しぶりに「ブラボー」という声が飛んできた。今まで通りとまではいかないが、従前のコンサートに「復活」の兆しがあることは確かだ。
 以下、都響が本コンサートに関連する投稿をまとめておこう。




 そして、本日をもってヴィオラ奏者の堀江和生氏が退団されるとのこと。


 
 カーテンコールの際は大野先生と抱き合うなど健闘を讃えあい、花束が贈呈された。そして、大きなメダルが捧げられた。その裏には寄せ書きのようなものが書かれてあったような…笑。
 自分が好きな曲を演奏して去ることができることはこの上ない喜びなのだろうか…。


前回のコンサート

law-symphoniker.hatenablog.com