Symphonikerの音楽鑑賞日記

クラシック音楽を趣味とする早大生

ブラームス:交響曲第1番ハ短調を聴く(その5)

Introduction

 作品内容については以下の記事を参照されたい。
law-symphoniker.hatenablog.com
 なお、以下の演奏には次のようなハプニングがあったという。

 1988年、最後の来日公演よりさらに5ヶ月後、カラヤンの死が9ヶ月後に迫った頃のコンサートです。前回と同じかそれ以上に、聴衆に「これが最後かも知れない」との雰囲気が蔓延したのは、誰も口にせずとも明確です。
 そんな中、このコンサートは大きなハプニングとともに始まることになります。ウィーン、パリそしてロンドンという楽旅上にあったカラヤンベルリン・フィルですが、パリからロンドンへの楽器の搬送がフランス国内でのストライキの影響で遅れに遅れてしまったのです。ドーヴァーからイギリス警察が護衛し搬送するという国家的な特別措置をもってしても、ホール・リハーサルに割く時間は確保されませんでした。事情を知らされていなかった聴衆の心中が、いかに穏やかならなかったかを想像するのは難しくありません。それは、苛立ち、といった感情より、最悪の事態(=公演の中止)をも想定したそこはかとない不安感だったに違いありません。同様に、楽器の到着を待ちわび続け、リハーサルが出来なかった不安もあった楽団員たちもまた、今までに無い緊迫感の中にありました。
(下記、HMVサイトより。下線部筆者)

 そのような状況下の中で、行われたヘルベルト・フォン・カラヤンブラームス交響曲第1番のライヴ演奏である。

ブラームス交響曲第1番

ヘルベルト・フォン・カラヤンベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

評価:10 演奏時間:約46分【当方推薦盤】

第1楽章:Un Poco Sostenuto, Allegro

 最初のティンパニの1音で既にカラヤンの充実した音楽が始まる凄まじい一発であり、オーケストラ音色が登場するコンマ1秒ほど早くティンパニが鳴らされている。そうすると、一気に緊迫感が広がるのだ。その後、美しながらも緊迫感のある弦楽器が響く。なんという序奏部だ。テンシュテットも真っ青になるだろう。
 また力強いティンパニの1音で提示部に入る。唸る弦楽器の音色と力強い金管楽器のハーモニーが印象的カラヤンらしい豪華な音色を響かせ、聴く者を圧倒する。第2主題は一旦落ち着き、美しく雄大に音色を響かせるベルリン・フィル特有の透き通るような弦楽器の音色がよくわかる。それにしても、ものすごい充実感。提示部繰り返しなし
 展開部に入っても気合入った演奏が繰り広げられる。レガートを多用しているせいか弦楽器の響きが切れず、充実感をもたらしている。途中のティンパにも力強く、カラヤンベルリン・フィルの底力が発揮されているのだろう
 再現部入ると提示部よりも迫力さを増しており、テンシュテットのように音が襲いかかってくる。ここまで気迫のこもった第1楽章はそうそうないだろう。
 コーダは第2楽章に続くように高らかに弦楽器が奏でられるのだが、第1楽章の余韻を生かしているのか、ティンパニはやや強く、テンポも速めで締めくくる

第2楽章:Andante Sostenuto

 大迫力の第1楽章から一変してベルリン・フィルの美しい弦楽器の音色が響き渡り、重厚な音色を響かせる。この音色は一度でもいいから実際に聴いてみたい。その後の木管楽器の音色も優しい音色を響かせる。それにしても、随所に見られる盛り上がる箇所は、物凄い迫力。すげー(思わず語彙力を失う)。
 後半のホルンとヴァイオリン・ソロは、ホルンの音色とヴァイオリンが聴こえるのだが、その他の楽器の音色も十分鳴っている。一部かき消されてしまっているが、ヴァイオリンの美しい音色は十分聴き取れる。

第3楽章:Un Poco Allegretto E Grazioso

 第2楽章の美しさを引き継ぐように、美しい弦楽器が鳴り響く。テンポもそこまで遅くはなく、流れるように奏でられる第3楽章は恍惚とする。
 盛り上がる中間部においては、第1楽章のような迫力さが戻ってきたかのような充実感がある。大迫力のオーケストラの美音が溢れ出て止まらない。カラヤン美学が第3楽章に大いに表れているようだ。ヴァイオリンが高く、唸っているのである。

第4楽章:Piu Andante, Allegro Non Troppo, Ma Con Brio, Piu Allegro

 第1楽章の序奏部のような迫力。第4楽章が幕を開ける。序奏部分第1部は厳格なテンポであり、慎重で緊迫感のある雰囲気が続く。第2部は雄大アルペン・ホルンが聴こえてるが、伸びがあり雄大な音色を響かせる。その後のフルートもどこまでも聴こえてきそうな音色である。
 そして第1主題。ベルリン・フィル特有の透き通るような美しさに加え、ブラームス特有の重厚感が実に素晴らしい響きであり、感動の渦に引き込まれる。テンポも多少速めであって元気さ、明るさを徐々に増していく。そして金管楽器が加わるともうカラヤンの世界。他の指揮者は近づくことが難しい。圧倒的な音楽を形成する。
 再現部第1主題も引き続いて厚みのある美しい弦楽器が鳴り響く。そして、ホルンが共に演奏されているのもわかる。しかし、金管楽器がものすごい迫力であり、弦楽器の音色を完全にかき消してしまうほどの音量であるカラヤンの漲る音楽造りには圧倒されるばかり、そしてトランペットは倍管にしているだろう。
 そして、コーダに入る。ティンパニが強く叩かれ、金管楽器が強烈な音色を響かせる「これでもか!というほどどんどん音量を増していく」「恐るべし!ベルリン・フィルカラヤン!」
 超絶な爆音を持って力強く締めくくる。

 その後のブラボーもものすごい。拍手もう少し長く収録してくれたらなぁ…。
 でも、これだけ充実感に満ち溢れた演奏を聴けばぐうの音も出ない。カラヤンブラームスの決定盤といえよう。

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