Introduction
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前回に続けてバイロイト音楽祭の演奏についてである。バイロイト音楽祭の演奏の問題点については、前回の記事をご覧いただきたい。
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実際の放送が入っている音源を見ると、スウェーデン放送音源が正しい本物の演奏であるといえよう。私はEMI音源とバイエルン放送音源の両方を持っていたので聴き比べることにした。
すると、どちらが本物の演奏であったかがわかったのだ。その答えが今回の記事にすることとした。
ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調
ヴィルヘルム・フルヴェングラー:バイロイト祝祭管弦楽団
評価:10 演奏時間:約74分【当方推薦盤】
第1楽章:Allegro Ma Non Troppo
冒頭、雑音が目立つがゆっくりとしたテンポによって幕を開ける。そして、ゆったりとしたテンポで大変力強い第1主題が奏でられる。フルトヴェングラー独特のテンポによって開始される第1楽章は異様な雰囲気が漂う。ただ、音質は大変素晴らしく、大迫力演奏が鮮明に聴こえる。第2主題も引き続き、遅めのテンポでゆっくりと奏でられている。スウェーデン盤にあった随所にノイズは全く気にならない程度に取り除かれている。そして、重要なのは3分14分あたりの観客の咳である。私が確認したところ、スウェーデン盤にも同じような箇所に同じような咳が入っていた。そうすると、本演奏が本物であると位置付けられる。緊張感ある提示部を鮮明な音色で楽しむことができる。
展開部に入ると、提示部第1主題の緊迫感が戻ってくる。フルトヴェングラー特有の緊張感、暗さがよくわかる。低減楽器も重厚感あふれる音色と共に、ヴァイオリンの音色が折り重なってくる。テンポはそこまで速いのだが、独特の異様な雰囲気はフルトヴェングラーならではの空気感に包まれる。高らかに鳴り響くヴァイオリンが鮮明に聴こえ、それを支えるトレモロもはっきりと聴こえる。
再現部においては、第1主題において十分な気合いが伝わり、気迫溢れる弦楽器とともに襲いかかってクレッシェンドは実に恐ろしい。なお、弦楽器を中心に拾っているようであり、ティンパニはあまり目立たないものとなってしまった。その後の第2主題はゆったりと穏やかに変わる。まるでベートーヴェン交響曲第6番第4楽章→第5楽章へと移り変わるようだ。非常にテンポを遅くして落ち着いた印象を与える。
コーダもテンポを遅して、圧倒的な音圧を持って襲い掛かる。随所ものすごくテンポを落としたりしており、約18分の第1楽章を終える。
スウェーデン盤と異なり、第2楽章までの間はカットされている。
第2楽章:Molto Vivace
冒頭の幕開けは弦楽器は迫力ある音色を響かせる。気合の入った弦楽器が主部を力強く刻んでいく。スウェーデン盤にはノイズが気になったが、ここも全くと言って良いほどノイズが取り除かれている。繰り返しあり。
トリオは、微妙に少しずつテンポが遅くなっている。フルトヴェングラーの非常にわかりにくいとされる指揮法によって生み出される音楽は、緻密で独特な音色を響かせる。木管楽器の軽やかな音色と、遅いテンポによる重厚感あふれる弦楽器の音色を響かせる。ただし、ちょっとホルンの音色が小さめ。ホルンの雄大な音色がポイントとなるのだが、ちょっと残念だ。一方、弦楽器の音色はしっかりと聴こえてくる。遅めのトリオも良いものだ。
そして、主部が戻り、力強い演奏が繰り返される。
第3楽章:Adagio Molto E Cantabile
冒頭、遅めのテンポで穏やかな木管楽器によって幕を開ける。主題部に入ると、かなり遅いテンポで美しい弦楽器が第1主題を奏でる。「爆速」とのイメージが強いフルトヴェングラーであるが、時には遅い演奏もするのである。実際に、この第3楽章は約19分かけて演奏しているのだ。遅めのテンポによる第3楽章もまた素晴らしい。フルトヴェングラー特有のクレッシェンドがよくわかる。しかし、これだけ遅いと演奏者も大変だろう…。
遅めのテンポによるアダージョは弦楽器が美しく謳っている。そして、音質が非常に良好なことも相まって、弦楽器の美しさがよくわかる。
第3変奏において、8分の12拍子はかなり遅いテンポで進められていく。弦楽器の清らかな音色がしっかりと響き渡っている。遅いテンポだが急がず、音楽に身を預けて聴くべきである。それにしても、かなり遅い(笑)。
終わりに近づくにつれ、途中金管楽器のファンファーレが登場する。トランペットの張りのある音色もしっかりと確認できる。このトランペットの音色はどこまでも響いていきそうである。
約19分と遅い第3楽章から第4楽章へ。
第4楽章:Presto, Allegro Assai
Presto。標準的なテンポであるが、トランペットの音色がよく目立つ。低弦のレチタティーヴォが登場するのだが、フルトヴェングラー独特のアゴーギクが冴え渡る。
Allegro assai。長い沈黙の後、非常に小さな音でコントラバスとチェロによって超有名な主題が奏でられる。やがて、ファゴットが甘美な音色を響かせる箇所に代わるが、やや弦楽器の音が大きくファゴットの音色が少し小さめになってしまった。しかし、しっかりと聴こえる。そして、金管楽器が加わるとトランペットの高らかな音色が響き渡る。迫力満点の演奏が繰り広げられる。最初の低弦楽器の時から、徐々にテンポが速くなっている。
Presto; Recitativo "O Freunde, nicht diese Töne!"; Allegro assai。バリトン歌手(オットー・エーデルマン)の登場し、いよ合唱が伴う。古い音源であるものの、しっかりと歌が聴こえる。音質も非常に良好であるから、合唱の美しいハーモニーがよくわかる。合唱も相当の気合が入っているようで、熱量がより一層伝わる。また、フルトヴェングラー特有の思い切った強弱もよくわかる。
Allegro assai vivace (alla marcia)。テノール歌手(ハンス・ホップ)のソロパートは多少速めのテンポである。ノイズは全くなく、ハンス・ホップの迫力ある歌声とピッコロの音色もはっきりと聴こえる。シンバルとバスドラムの音色は確かに大きいが、他の楽器等をかき消すというほどではない。
非常に複雑で格好良い間奏の後に超有名な箇所に入る。途中、スウェーデン放送音源では音量が一時的に小さくなる箇所があるが、この演奏では全くそのような場面はない。気をつけていないと、どこの部分かわからないほどだ。超有名な合唱箇所はフルトヴェングラーは多少速めのテンポで演奏する。大迫力の合唱とオーケストラが見事に調和され、言葉には言い表せない音楽が広がる。
Andante maestoso。トロンボーンによって始まる。かなりビブラートを効かせているようだ。1951年と昔に録音されたものとは思えないほど、音質が良く、荘厳な合唱も十分に聴こえる。ボリューム調節も全く不要といえよう。
Allegro energico e sempre ben marcato。高らかに歌い上げるソプラノ等、やや速めのテンポで颯爽とかける。個人的にこの箇所ものすごい好きなのである。引き続いて大迫力の合唱と、気合の入った金管楽器が鳴り響く。本当に素晴らしい迫力である。
Allegro ma non tanto。男声合唱と女声合唱が交互に歌う。テンポは標準的であり、軽やかに演奏される。スウェーデン放送音源では、途中トランペットがやたら目立っていたが、本演奏でも確かに目立つが一人歩きして昼ようなものではない。。特に違和感なく聴くことができる。
Presto; Prestissimo。いよいよ、最終部である。合唱は相当な声量が出ているのだろう、気迫がものすごい。そして、オーケストラの熱量もものすごい。フルトヴェングラーの熱量恐ろしき。そして、注目の一番最後の部分は相変わらずの爆速であり、シンバルがずれてしまっているが、そんなのはお構いなし、超特急で締めくくる。このシンバルがずれているのも、この演奏で確認することができる。
なお、拍手はなし。
上記の通り、バイエルン放送音源が本物の演奏と結論づけることができるだろう。スウェーデン放送音源は当時の放送をそのまま再現しており、ノイズ等が入ってしまったが、臨場感はこちらの方が上だろう。しかし、鑑賞とするには良好な音質であることが要求される。バイエルン放送音源は全くといって良いほどノイズは除去されており、各楽器もよく聴こえ、鮮明に聴こえるのである。
したがって、この演奏はクラシック音楽好きにとっては必ず持っておくべき一枚であろう。