鵺翠の音楽の世界と読書の記録

クラシック音楽を趣味とする早大OB

【読響】第250回日曜マチネーシリーズ in 東京芸術劇場

introduction

 今回は、【読響】第250回日曜マチネーシリーズ。そして、私の誕生日でもある。運よく私の誕生日の日にコンサートが行われているのである。昨年は、東京交響楽団であり、非常に素晴らしい演奏だった。
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 そして、今年は読売日本交響楽団日本を代表する屈指のオーケストラであるから、どんな演奏になるのだろうと期待している。
 プログラムは、オール・ロシアであり名曲揃いというプログラムである。そして興味深いのが、ドイツ系の作品を得意とするセヴァスティアン・ヴァイグレによるロシア音楽はどのような音楽なのかである。店頭に販売しているロシア系の棚を見ても、かなりの数がロシア系の指揮者やオーケストラで占めている。カラヤンマゼールベルリン・フィルとの演奏の記録があるがあまり数は多くない。気になるところである。
 グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲は、明るく華やかな作品でありコンサートの幕開けとして相応しい作品である。もっとも、この作品といえば、エフゲニー・ムラヴィンスキ:レニングラードフィルハーモニー交響楽団の印象が強いので、ここまでの演奏が繰り広げられることを期待して良いものなのか…。

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 ラフマニノフパガニーニの主題による狂詩曲もこれもラフマニノフを代表する名曲である。圧倒的な美しさを奏でる第18変奏があまりにも有名であり、これももちろんのことながら個人的にはピアノが迫力ある低音が鳴り響く第10変奏、重厚な弦楽器が格好良い第13変奏が非常に好きなのである。アンコールは何かな?
 リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェヘラザード*1は、数々の楽器のソロ・パートが印象的な作品。冒頭のヴァイオリン・ソロの主題が何度も登場する。そして、2管編成といえども迫力ある作品である。
 本作品には物語となっており、あらすじは以下のようである。

 シャフリアール王(Shahryār)は彼の一番目の妻の不貞を発見した怒りから、妻と相手の奴隷の首をはねて殺害する。 女性不信となった王は、街の生娘を宮殿に呼び一夜を過ごしては、翌朝には処刑していた。側近の大臣が困り果てていたとき、大臣の娘のシェヘラザードは王の愚行をやめさせるため王との結婚を志願する。
 シェヘラザードは毎晩命がけで、王に興味深い物語を語る。そして物語が佳境に入った所で「続きはまた明日。」と話を打ち切る。
 王は新しい話を望んでシェヘラザードを生かし続け、千と一夜の物語を語り終える頃には二人の間には子どもが産まれていた。王は自分とシェヘラザードの間に子供が出来たことを喜び、シェヘラザードを正妻にする。こうしてシェヘラザードは王の悪習を終わらせた。
Wikipediaより)

 そして、バッド・エンドな物語なのである。
 ヴァイグレはどのような物語を形成するのだろうか。
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本日のプログラム

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲

 華麗なる曲で幕を開ける。ヴァイグレはややテンポ遅め(標準的と言えば標準的)で演奏されていた読響らしいゴージャスな金管楽器のファンファーレが素晴らしかった。そして、弦楽器の忙しなさもまたよし。
 なお、本曲について詳細な解説が見当たらなかったが一応ソナタ形式で説明できそうなのでソナタ形式によって綴ることにする。
 上記の通り、ヴァイグレはしっかりとしたテンポで進んでいたため、第1主題のヴァイオリンは非常に勇ましく壮大な音色を奏でていた。急がない、一つ一つが丁寧な印象を受けた。そして、チェロの滑らかな主題(第2主題)もまた素晴らしい音色であった。やや低音であるが甘美な音色が響いており、華麗なる提示部を形成した。
 展開部では、静寂な場面が多くなる。木管楽器と弦楽器のピツィカートの掛け合いがあるが、ヴァイグレのタクトは楽しそうに動いていた。木管楽器の音色も軽やかな音色を奏でていた。再現部入る前のティンパニも迫力ある音色が届いてきた。
 そして、再現部。第1主題の弦楽器がより一層に輝いた音色が聴こえてきた。そして、再現部第2主題ではチェロが1オクターブ高い音色を響かせるのだが、より甘美な音色が広がり、それがヴァイオリンに受け継がれると美しく、壮大な音楽が広がった
 そして、コーダ。金管楽器が主役となり、高らかな音色を響かせるトランペットと迫力あるトロンボーンが冴え渡った
 堂々たる音楽で締めくくった。
 大変素晴らしい幕開けである。

ラフマニノフパガニーニの主題による狂詩曲

 主題を含め、25部に分かれているが、流石に全部はかけないので、上記私の好きなポイントをピックアップして記すことにする。
 なんと言っても、序奏部が肝心。読響の力強い弦楽器のサウンドともに、コレスニコフの力強い打鍵が響き渡るこれぞ、これぞラフマニノフだ!
 主部では弦楽器の音色はもちろんのこと、技巧ながらも美しく流暢な演奏は聴いていて・見ていてさすがの一言。手が大きくて有名なラフマニノフを弾きこなすのであるから相当な才能の持ち主である。
 第8変奏から雰囲気が少し異なる。第10変奏では、冒頭ピアノの強い低音がとても格好良いのであるが、コレスニコフは私の期待を裏切らずに力強い低音を鳴らしていた。どこか、ホロヴィッツのような重厚さが垣間見えたのは私だけであろうか。その後の爆発的な金管楽器とシンバルは、トランペットが冴えにさえており、鋭く力強い音色を響かせてダイナミックな演奏を繰り広げた
 第11変奏からまた雰囲気が一変する。第13変奏では低音の弦楽器のトゥティが非常に格好良く、重厚感のある音色を響かせていた。その後の木管楽器のトリルも耳が痛くなく、自然な音色を響かせていた。
 第18変奏これは素晴らしかった!第18変奏に入った途端にホール内の空気がガラッと変わったのである。コレスニコフの甘美で美しいピアノの音色が響き渡った。弦楽器が加わると非常に美しくなり、読響の演奏者も熱が入っていたことがよくわかった。頂点部に達すると泉が湧き出るような美しさと素晴らしさが溢れ出ていたこんな美しい作品をこのような演奏で本当に聴いて良いものなのか。最後の第18変奏が終わるまで、コレスニコフの素晴らしピアノが響いていた。
 そして、最後の第24変奏では、トランペットやトロンボーンの強烈な音色を響かせシンバルも打たれながら圧倒的なフィナーレを形成し、急激に静かに締めくくった。
 そして、鳴り止まぬ拍手に包まれた!本当に素晴らしいラフマニノフであった。

Encore

ルイ・クープラン: ボーアンの手書き譜からの舞曲集より「サラバンドイ短調
 てっきり、もう一度第18変奏を演奏してくれるかな…と思っていたが違った。
 私はクープランピアノ曲は全くと言って良いほど知らないので、アンコールの曲も知らなかった。しかし、コレスニコフは繊細で甘美な音色を1音1音丁寧に打ち鳴らしていたラフマニノフでは豪快な音色を響かせいていたが、アンコールでは繊細で緻密な音楽作りが感じられた
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ルイ・クープラン:ボーアンの手書き譜からの舞曲集(パヴェル・コレスニコフ)www.tokyo-m-plus.co.jp

リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェヘラザード」

第1楽章《海とシンドバッドの船》(Largo e maestoso—Allegro non troppo)

 力強いユニゾンでシャリアール王の主題を読響らしい迫力ある音色を奏でる。強烈な音色ではなく、柔らかいがどこか押し寄せるトロンボーンの音色が印象的だった。その後、一旦落ち着いてフルート等の木管楽器が奏でるのだが、繊細で美しい響きを奏でていた。
 そして、美しいハープの音色が十分に響いており、ヴァイオリン・ソロのパートであるシェヘラザードの主題を林先生が繊細で美しいヴァイオリンの音色を響かせながら奏でていた。ホールいっぱいに林先生のヴァイオリンが響き渡った。
 主部に入る。チェロ等の低弦楽器が海を再現する。重厚な音色を響かせる海は大海原を表現するがどこか不安な雰囲気もあった。ヴァイオリンが何度もシャリアール王の主題を繰り返す。そして徐々に盛り上がっていくにつれ、読響のヴァイオリンの音色も熱が入るヴァイグレは遅めのテンポで壮大に力強く演奏されており、私は遅めのテンポで演奏される方が好みであるので感動した。今日の読響サウンドは素晴らしかった。
 その後、何度か林先生のソロ・パートがあるのだが、冒頭同様に繊細で美しい音色を響かせた。その後、シャリアール王の主題が再び繰り返されるのだが金管楽器も加わって大迫力の演奏が展開されていった。トランペットが加わると一気にかき消されるかのような大迫力圧倒された壮麗なトランペットの音色とともに、重厚感あふれるトロンボーン、そして負けじと唸る弦楽器、全てが調和された何か震えるような凄まじい迫力に押された。ヴァイレと読響の相乗効果はここまで恐ろしいものを発生させるのか。

第2楽章《カランダール王子の物語》(Lento—Andantino—Allegro molto—Con moto)

 シェヘラザードの主題で始まる。何度も繰り返されるが林先生の音色は美しかった。そして、ファゴットがカレンダー王の主題を奏で、第2楽章はこの主題が主に占める。ファゴットの音色も甘美な音色をして素晴らしかった。そして、弦楽器も加わって賑やかになる。
 断片的に不穏な雰囲気へ変わる。トロンボーンのソロがあるのだが、ヴァイグレはゲルギエフのように遅く、ゆったりと演奏されていた。これには驚いた。カラヤンやプレヴィンといったヨーロッパ系指揮者はサクッと演奏する傾向にあると思っているが、ドイツ系指揮者であるヴァイグレがロシア系の指揮者のように演奏したのだ。もっとも、トロンボーンの伸びやかな音色は素晴らしく、雄大で迫力ある重厚感ある音色を響かせた
 その後、快速的なテンポで弦楽器のピツィカートに乗せて恍惚となるようなクラリネットの音色が非常に印象的だった。そして、断片的にトランペットの音色が響き渡った。
 第2楽章終盤では弦楽器と木管楽器が力強くカレンダー王の主題を奏でており、非常に格好良い演奏を繰り広げており、改めてこの曲の素晴らしさを再確認した
 最後は燃え盛るようにして締めくくった。

第3楽章《若い王子と王女》(Andantino quasi allegretto—Pochissimo più mosso—Come prima—Pochissimo più animato)

 緩徐楽章に位置付けられよう。そして、形式は三部形式であると思われる。
 主部の弦楽器は非常に滑らかで美しい音色を響かせていた。個人的に読響の印象は迫力ある金管楽器であるが、弦楽器の音色も美しいのだ。ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバス全ての音色が美しく滑らかな音色を奏でていた
 中間部では、クラリネット木管楽器が軽快な主題を奏で、スネアドラムとトライアングルが可愛らしく、華やかさを齎す。第3楽章の中間部で打楽器等のパーカッションが活躍する。少し長い中間部であるが、後半になるとトランペットが登場したりする。
 再び、主部に戻る。そして、第1楽章・第2楽章で登場したシェヘラザードの主題が登場する。ここでも林先生の繊細で美しい音色を響かせると共に、技巧が光る演奏が素晴らしく、それに沿う様にオーボエ等の木管楽器が印象的だった。そして、頂点部を形成するのがら、これは大迫力!素晴らしかった
 そして、穏やかな雰囲気で静かに第3楽章を閉じる。

第4楽章《バグダッドの祭り。海。船は青銅の騎士のある岩で難破。終曲》(Allegro molto—Vivo—Allegro non troppo maestoso)

 シャリアール王の主題がテンポ違いで示される。そして、やや変形されたシェヘラザードの主題が登場する。そして、激しく冒頭のシャリアール王の主題が奏でられる。なかなかの迫力だった。
 やがて主部となり、バグダッドの「祭り」となる。フルートが軽快な音色を響かせ、弦楽器、金管楽器が加わって徐々に熱くなっていく。シンバル等が加わって迫力が増していく。第3楽章主部の回想では穏やかで美しく演奏されるが、テンポははやく第3楽章の様な雰囲気はない。シンバルや速いテンポ、迫力ある金管楽器の音色が非常に印象的だった。その後、チェロ等によるシェヘラザードの主題が奏でられるのだが、荒々しく勇ましさが感じられた。頂点部に向かってシンバル等のパーカッションが加わって少しずつ燃え盛ってく。
 その後頂点部を形成した後に「海」に入る。トロンボーンが強烈な音色でシャリアール王の主題を勇壮に奏でるトランペットもハリのある音色を奏でており、荒れ狂う波に呑まれる船の難破の場面を十分に再現していた。この時、相当の音量が出ていたのは確かであるシンバルとタムタムが撃たれた時は全身に何か打たれた様な痺れが伝わった
 そして、再びシェヘラザードの主題が奏でられる。林先生最後のソロ・パートである。ヴァイオリンの中でも最高音に近い音色を出すのだが、度切れることのない繊細で美しい音色がホール中に響き渡った。その背景にはチェロ等の弦楽器が厳かにシャリアール王の主題を奏でている。
 そして、最後は消えゆくように本曲を閉じた。ヴァイグレの指揮棒はなかなか降りず、約5秒近く沈黙が続いていたのだが、フラ拍等は全くなかった。最後の最後まで、繊細な音楽は続いていたのだ

総括

 冒頭でも述べたように、この日は私の24歳の誕生日なのである。そのような特別な日に素晴らしい音楽が聴けたことは感無量である
 さて、久しぶりの読売日本交響楽団であったが大変素晴らしい演奏であった。強烈な金管楽器が聞けたことはこの上ない喜びである。そして、東京芸術劇場も今回で2回目。やはり、良いホールなのだろう。前回の日本フィルがあまり良い演奏ではなかったため、オケが悪いのかホールが悪いのかわからなかったのだが、今回でハッキリした。
 また東京芸術劇場で演奏を聴こう!!
 忘れられない思い出ができてよかった。その後も楽しいことがあった。とても幸せな誕生日を過ごした。
 それよりも、鼻詰まりや鼻水をなんとかしたい…(花粉症か)

前回のコンサート

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*1:ポスターでは「シェエラザード」と表記されいるが、私自身はこの作品を「シェヘラザード」と呼称しているので、そのように表記した。表記が異なっていても、作品内容は同様である。