ギュンター・ヴァント(Günter Wand)
1912年2月4日にドイツ帝国 エルバーフェルトで生まれる。
2001年2月14日ドイツ連邦共和国にて亡くなる。
今回紹介する指揮者は、ギュンター・ヴァント。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーといったドイツ音楽を得意とする指揮者である。
もっとも、ヴァント=ブルックナー指揮者というイメージが強い指揮者でもある。実際に、ヴァントはブルックナーを特別なレパートリーとしており、録音数も極めて多い。そして、ヴァントの音楽は極めて正統派であって厳格な雰囲気を醸し出す。そのような音楽スタイルと、厳格な対位法で作曲されたブルックナーの作品とは相性が良いのだろう。私はバーンスタインのような弾けるような音楽よりも、ベームのような厳格な雰囲気の指揮者の方が好きなので、ヴァントの演奏ももちろん好きである。
晩年になると、ヴァントは様々な世界的オーケストラに登壇し、ブルックナーの演奏を残した。例えばベルリン・フィルやミュンヘン・フィルがある。特にヴァントとミュンヘン・フィルのブルックナーは至高の作品であると思っており、機会があればその演奏について記しておきたい。
なお、ヴァントの大きな特徴はテンポにある。多くの指揮者は晩年になるにつれ、テンポが遅くなっていく傾向にある。ヘルベルト・フォン・カラヤン、カール・ベーム、セルジュ・チェリビダッケ、オットー・クレンペラーも晩年になると遅くなる傾向にある。しかし、ヴァントは晩年になってもテンポは変わらない。ヴァントの中で正確なテンポがあるようだ。そして、金管楽器も迫力ある音量で鳴らす。カラヤンとはこれはまた違う。とにかく「厳しい」のだ。私が学部時代の哲学の先生が「ヴァントの演奏はもちろん素晴らしいが、長くは聴けない」と仰っていた。確かにヴァントのブルックナー(特に第8番)を聴き通すのはちょっと骨が折れる。
しかし、ヴァントのブルックナーは他の指揮者とは違う独特の素晴らしい世界観が広がるため、非常にお気に入りの指揮者である。
ヴァントは数回NHK交響楽団と共演をしており、現にその演奏が残されている。また、北ドイツ放送交響楽団(現:NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団)と来日しており、ブルックナー交響曲第8番を演奏している。